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コロナの売上減でJR東日本は資金繰りのピンチ!?

JR東日本、2019年度の第4四半期(2020年1~3月)は連結で530億円の赤字。

2020(令和2)年4月28日、JR東日本の2019年度決算が発表されました。

もちろん通年では黒字決算なのですが、第4四半期(2020年1~3月)では赤字。1~2月はコロナの影響は少なかったので黒字だったはずですが、3月のマイナス分だけで、1~2月の“貯金”が吹っ飛んだわけです。

今回の記事では、コロナによる売上減が、JR東日本に与える影響について考察します。

すでに毎月数百億円の減収が起きている

コロナの影響で、JR東日本の鉄道収入は大幅に減少してしまいました。報道によると、2月は110億円、3月は730億円の減収。

この減収額と、JR東日本の決算書を踏まえてザックリ計算すると、2020年1~3月で、鉄道事業単独では100億円程度の赤字(経常損失)が出たのではないでしょうか。そこに関連事業や連結子会社が出した赤字が加わって、連結で530億円の赤字(経常損失)になったと思われます。

減収が続くと年間で数千億円の赤字に!?

もし、この調子で大幅な減収が1年間続いたとしたら、JR東日本の今期(2020年度)の業績は、いったいどうなってしまうのか?

それを考察するために、まずは最新発表された2019年度の数字を見てみましょう。みなさんがイメージしやすいよう、数字はザックリしたものにしています。

2019年度の鉄道事業の成績
売上  1兆9,700億円
費用  1兆7,150億円

営業利益  2,550億円

おそらくですが、2019年度の売上は、2兆400億円くらいを“着地点”として予測していたはずです。ところが、2~3月の減収の影響で、2兆円に届かなかったと。

つまり、通常ならば年間で2兆円は鉄道事業の売上があるわけです。では、コロナの影響で、年間の売上はどこまで減ってしまうのか?

JR東日本の鉄道収入は、3月に730億円の減収になったと先ほど書きました。4月以降はさらに落ち込みが激しいはず。かなり甘めですが、仮にひと月当たりの減収額を800億円として計算します。

また、いろいろ経費削減をするはずですから、費用の額を1,500億円程度減らしてみます。そういう条件で計算してみると……

売上  1兆0,400億円
費用  1兆5,500億円

営業利益 -5,100億円

約5,000億円の赤字!
しかもこれは、減収額をかなり甘めに見積もっての計算です。

以前に「コロナによる売上減が1年間続いたら、JR東海は数千億円の赤字になるのでは?」という記事を書きました。JR東日本も、それと同様になる可能性が極めて高いです。

JR東日本は「手持ちのカネ」が心許ない

ただし、JR東日本とJR東海、決算書的にみると、この二社には決定的な差があります。「手持ちのカネ」です。

JR東海は、手持ちのカネが豊富です。単体の決算書(貸借対照表)では、「現金・預金」が約3,900億円。連結の決算書(キャッシュフロー計算書)まで範囲を広げれば、現金および現金同等物が約7,600億円。コロナの減収で大打撃をこうむっても、資金繰りに詰まってヤバくなることは考えにくい。

JR東海に比べると、JR東日本の手持ちのカネは少ないです。単体の決算書を見ると、「現金・預金」は約1,240億円。

ここに数千億円の減収が直撃すると、資金繰りが心許ないのではないでしょうか。

もちろん、決算書(貸借対照表)を見ると、「換金できる資産」はいろいろあります。未収運賃が約3,000億円。未収金が約970億円。ただし、これらの資産は今日明日すぐに換金できるわけではないので、その点を割り引いて考えないといけません。

(以上の数字はいずれも2020年3月末現在)

資金ショート寸前!? 資金調達は綱渡りだった!?

今年(2020年)3月、JR東日本はコマーシャルペーパーを1,500億円分発行しました。

コマーシャルペーパーとは、社債と同じようなもので、市中の投資家(といっても個人投資家ではなく、銀行や保険会社などの機関投資家)などからカネを調達するために発行するもの。借用証書みたいなもので、早い話が借金ですね。

通常の社債との違いは、償還期間つまり借金の「満期」が短いこと。一般的に、社債とは満期が1年以上のものを指しますが、コマーシャルペーパーの満期は数ヶ月程度であることが多いです。

JR東日本の決算書(連結のキャッシュフロー計算書)にも、「コマーシャルペーパー」というお題目で、しっかりと1,500億円が加算されています。

さて、ここで決算書(連結のキャッシュフロー計算書)を改めて眺めてみると、ヤバいことに気が付きます。2020年3月末で、キャッシュ(=現金・預金・容易に換金できる資産。ようするに手持ちのカネ)の残高が、なんと1,538億円しかない!

ということは、もしコマーシャルペーパーで1,500億円を調達していなかったら、JR東日本グループのキャッシュはほとんど底を尽いていた(残り38億円)わけ。キャッシュがなくなるとは、資金がショートすること、もっと言ってしまえば「会社の倒産」です。かなり危ない状況だったわけで、JR東日本はキモを冷やしたのではないでしょうか。

この事例からも、JR東日本の資金繰りが容易ではないことがわかります。社債やコマーシャルペーパーの発行、銀行からの借入などで、今後も資金調達をバンバン行なっていくはずです。というか、すでに実際、4月に新たなコマーシャルペーパーを900億円、社債を1,250億円発行しています。

一時凌ぎに近いかもしれませんが、そうやって手持ちのカネを増やす“輸血”を行い、コロナウイルスによる売上激減という“出血”が終わるのを待つしかありません。

(2020/4/29)

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