現役鉄道マンによる鉄道雑学のブログ

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

鉄道会社に「物言う株主」

「JR九州に出資している米ファンドが、赤字路線を多く抱えるJR九州の鉄道事業について問われ、『口出しはしない』と答えた」

こんばんは。インターネットをふらふらしていたら、こんなニュースを見つけた現役鉄道マンのKYSです。
ちょっと気になるニュースだったので、個人的に考えるところを記事にしてみました。

 

JR九州は本業が赤字で上場した


JR九州は2016(平成28)年に株式を上場しましたよね。
このことは、みなさんご存知でしょう。

しかし、以下の事実は知っていますか?

実は、JR九州は上場した際、「本業」である鉄道事業は赤字でした。
副業の黒字で会社全体としては黒字だったのですが、本業は赤字の状態で上場したんですね。

JR九州は、福岡都市圏という「ドル箱」を持っています。
しかし、地方のローカル線も多く抱えており、そこでの赤字が都市圏の黒字を食い潰しています。
そのせいで、鉄道事業全体としては赤字が続いていました。

あ、ちなみに現在のJR九州は、鉄道事業も黒字です。
が、これは減損処理という会計処理を行ったためであって、売上がグーンとアップして黒字になったわけではありません。

上場直前の2015(平成27)年度会計では、なんと4700億円! の赤字が出ていますが、これは減損処理を行った特別損失によるものです。
(減損処理とか特別損失とかの用語がわからない方、申し訳ない。ここで解説するスペースはないので、興味があれば調べてください)

今は「口出ししない」でも……


JR九州は株式を上場していますから、株主に投資ファンドがいても変ではありません。

そうした投資ファンドからすれば、JR九州が多数抱える赤字路線はどう映っているのでしょうか。

「なんらかの処置が必要だ」と考えるのが自然ではないでしょうか。

今回は「赤字路線を抱える鉄道事業について口出ししない」とコメントしたようですが、今後もその姿勢が続くかどうか、すごく疑問です。
今後ますます持ち株の比率を高めていったときに、「この赤字路線は廃止にすべきでは」という主張をしてくる可能性は低くないと思います。

西武鉄道vs投資ファンド


実は、2013(平成25)年に、投資ファンドによる鉄道会社への「口出し」があったことはご存知でしょうか?

このとき舞台になったのは、関東大手の西武鉄道。
西武鉄道に出資していた米投資ファンドが、「一部路線を廃止してはどうか」と提案したと報道されました。

西武鉄道は都心だけではなく、埼玉県の郊外にも路線を抱えており、そこの採算性を疑問視したファンドが口出ししたのでしょう。

結局、このときは路線の廃止は行われなかったのですが、日本における今後の鉄道事業のあり方を考える上では、大きな事件だったと思います。

鉄道は儲からない


そもそも論になりますが、鉄道というものは「儲からない事業」です。

あれだけ広大な設備を維持しているわけですから、当然ながら出費は大きい。
それでいて、運賃は国土交通省による認可が必要であり、出費が増えたからといって、好き放題値段を上げられるわけではありません。

「商品の値段」を自由に変えられないのが、他の産業との大きな違いといえます。

ようするに、出費が多いのに収入は制限されているわけですから、構造上儲けるのが難しい事業です。
乱暴な言い方をしてしまえば、赤字になって当然なのですね。
(東海道新幹線や首都圏の「ドル箱路線」は別ですが、それは例外です)

赤字路線の拡大と「物言う株主」の増加


このブログでもたびたび書いていることですが、少子高齢化が進めば、鉄道会社は苦しくなっていきます。
赤字路線・不採算路線がどんどん増えてくるのは確実です。

そして、投資会社が株主の座に収まり、いろいろと「モノを言う」事例も、今後ますます多くなるでしょう。

この二つの流れ――「赤字路線の増加」と「物言う株主の増加」――により、自らの利益を考えた株主の主張がきっかけで、路線が廃止される事態が本当に起きるかもしれません。

鉄道とは、公共性・公益性が大きい事業です。
いったん廃止すれば、復活させることは実質的に不可能でしょう。

そういった事業を「採算性が悪いから」「株主の利益を損ねるから」という理由だけで廃止してよいものでしょうか。
激しい論争になるのは必至でしょう。

将来、こうした事態が起こったとき、鉄道会社はどうやって株主を納得させる(あるいは対決していく)のか、非常に興味深いところです。
赤字路線の黒字化は難しいとしても、会社全体としての黒字を最大限確保し、株主の利益確保に努めることが、これまで以上に求められるようになっていくのでしょうね。