貨物列車はさまざまなコンテナを積んでいますが、その中に「冷凍コンテナ」というものがあります。今回の記事では、その冷凍コンテナにまつわる雑学を紹介しましょう。
冷凍コンテナはエンジン音がうるさい
まず、冷凍コンテナについて簡単に説明しましょう。貨物列車はコンテナをたくさん積んで走っていますが、↓の写真のようなコンテナ、見たことありませんか?
このコンテナは冷凍・冷蔵品を運ぶためのもので、早い話、「動く冷凍・冷蔵庫」です。搭載されたディーゼルエンジンで発電機を回して、その電力で冷凍設備を動かしています。
そして当たり前ですが、このディーゼルエンジン、動かすと音が出ます。ディーゼルカー(気動車)って、走行する際にけっこうな音が出ますよね。最近のものはともかく、昔のディーゼルエンジンは非常にうるさかった。
そのため、冷凍コンテナに積んだディーゼルエンジンが、騒音の原因になることがありました。
民家の近くに冷凍コンテナが止まると騒音問題が大変!
たとえば、人身事故や天候の影響で、運転見合わせになることがあります。そうしたトラブルに遭遇すると、しばらくは先に進めないので、関係列車を手前の駅で停車させておきます。(専門用語では、これを「列車の抑止」といいます)
冷凍コンテナを積んだ貨物列車も抑止になることが当然あるわけですが、停車した駅のそばに民家がある場合、ディーゼルエンジンがまき散らす騒音で「うるさい!」と苦情がくることがあったそうです。昼間なら大目に見てもらえるのでしょうが、夜だと眠れないくらいうるさいそうで。
しかし、コンテナ内には冷凍品を積んでいますから、ディーゼルエンジンは止められません。もしディーゼルエンジンを止めたら発電機もストップし、電力供給が断たれて冷凍コンテナが停止 → 中の品物が溶けてしまうからです。
冷凍コンテナと民家の「位置情報」を照合して対処する
さて、こういう騒音問題にはどう対処するか?
以下は、ずいぶん前に聞いた話です。ディーゼルエンジンが昔より静かになった今でもそうしているのかはわかりません。それを踏まえて読んでください。
苦情がきた場合、単純ですが、周りに民家がない別の駅に移動させるのがいい方法です。もっといえば、最初からそういう駅で抑止するのがベスト。
ただ、そう都合よくばかりいかないのは想像がつきますよね。
というわけで次善策。
対策としては、ようするに騒音の発生源である冷凍コンテナが、民家から離れた場所に止まればいいわけです。離れていればうるさくないですから。
貨物列車の長さは数百メートルに及びます。つまり、列車のどこに冷凍コンテナを積んでいるかによって、騒音の発生位置がずいぶん異なります。
貨物列車を管理するJR貨物は、「○○列車なら、どの位置に冷凍コンテナが積まれているか」を把握しています。それは当然なのですが、さらに、「○○駅だと、このあたりに民家がある」という情報まである程度調べているそうです(!)
そして、「○○列車の冷凍コンテナの位置」と「○○駅における周辺の民家の位置」を照合します。
仮にA駅で貨物列車を止めたときに、冷凍コンテナと民家が近づいてしまうなら、A駅はパス。冷凍コンテナと民家が離れるB駅を選んで、列車を止めるわけです。
はぁ~、なんとも芸が細かい……。
もちろん、100%うまくはいかないはず。やむをえず、冷凍コンテナと民家が近づいてしまう駅に列車を止めることもあるでしょう。しかし、そういう細かいところにまで気を配っていることがすごい。
燃料補給のために職員が車で駆けつける
ちなみに、ディーゼルエンジンの燃料は軽油ですが、抑止が長時間に及んだ場合、燃料切れの心配があります。燃料が切れたら発電機も止まってしまうので、冷凍コンテナの機能がストップし、中の冷凍品が溶けてしまいます。
そこで、JR貨物の関係者がポリタンクに軽油を詰めて、貨物列車が抑止されている駅に車で駆けつけて燃料補給します。
貨物列車の裏側には、こうしたさまざまな困難と、それを解決するための関係者の努力や気配りがあります。地味な印象の強い貨物列車ですが、少しは見る目が変わったでしょうか?