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第三セクター鉄道が受け取る「貨物調整金」の金額はいかほど?

JR貨物と第三セクター鉄道を巡る「線路使用料」の問題。
これを解決するための「貨物調整金」という制度について、↓の記事で詳しく説明しました。


貨物調整金の制度を簡単に解説すると……

・経営が苦しい第三セクター鉄道は、JR貨物の貨物列車が走ることによって受け取る「線路使用料」の額をできるだけ多くしたい

→しかし、JR貨物も三セク鉄道に高額の線路使用料は支払えない

→というわけで、整備新幹線の収入の一部を、「貨物調整金」という補助金として三セク鉄道に支給する


こうすることで、三セク鉄道とJR貨物、いずれにも多大な負担がかからないようにしているのでしたね。

では、この貨物調整金、いったいどのくらいの金額が支払われるのでしょうか?

 

貨物調整金が支払われている会社とは?


確認ですが、貨物調整金とは

「整備新幹線の開業により、並行在来線をJRから三セク化した会社」で、なおかつ「JR貨物の貨物列車が走る」

こういう会社に支給されるものでした。
2019年7月現在、これに該当する会社は以下の8社です。

道南いさりび鉄道(北海道)
・青い森鉄道(東北)
・いわて銀河鉄道(東北)
えちごトキめき鉄道(北信越)
・あいの風とやま鉄道(北信越)
・IRいしかわ鉄道(北信越)
・しなの鉄道(北信越)
・肥薩おれんじ鉄道(九州)

これら8社に対して、貨物調整金が支払われています。
なお、北陸新幹線が敦賀まで延伸した際には、福井県にも三セク鉄道が誕生しますが、その会社にも貨物調整金が支払われるはずです。

2016年の貨物調整金の総額は138億円


では、支払われた貨物調整金の金額は?

ちょっと古いデータですが、2016(平成28)年度に支払われた貨物調整金は「総額」138億円だそうです。
この138億円が、8社にどのように分配されたかまでは、ちょっとわかりませんが。

2016(平成28)年度の各社の決算書を見てみましょう。

貨物調整金とは、線路使用料の不足分を補填する性格のカネです。
ですから、決算書の中では、線路使用料収入という“お題目”で売上の中に混ぜられています。

ただし、「本来の線路使用料」と「線路使用料の上乗せ分である貨物調整金」がそれぞれいくらなのかは、決算書からは読み取れません。
「線路使用料収入」という項目で、一括りにされてしまっているからです。

そのため、下記で示す数字は、貨物調整金の金額そのものではないことにご注意ください。
「この中に貨物調整金も含まれていますよ」という数字です。

決算報告から、受け取った線路使用料の金額が読み取れる会社は、以下の通り。

・いわて銀河鉄道 27.3億円
・あいの風とやま鉄道 18.5億円
・IRいしかわ鉄道 5.5億円

うーん、8社すべての線路使用料収入がわかれば、その合計と貨物調整金138億円との差額が「本来の線路使用料」だとわかるのですが……。
ホームページで公開されている決算書には、線路使用料の金額を載せていない会社も多いものでして。

なお、各社で数字がだいぶ違いますが、貨物列車の走行距離や通過本数は、会社によってずいぶん違います。
そのため、こうしたバラけた数字になるわけです。

貨物調整金はそれなりに高額と思われる


どうでしょうか?
貨物調整金138億円という数字を見て、みなさんは多いと思うでしょうか、それとも少ないと感じるでしょうか。

「そんなこと聞かれても、なんとも答えようがない……」

そうですよね。では比較材料を。

2016(平成28)年度に、JR貨物がJR旅客会社や三セク鉄道に支払った線路使用料の総額は、176億円。
北海道から九州まで、全国あちこちに貨物列車を走らせて、その代償として支払っているのが176億円です。

常識的に考えれば、176億円の大部分はJR旅客会社への支払いで、三セク鉄道への支払い額は少ないはずです。

対して、三セク鉄道は、全国の鉄道ネットワークの中ではごく一部を占めるに過ぎません。
しかし、それに対して138億円もの貨物調整金が支給されているわけです。

・全国あちこちに貨物列車を走らせたJR貨物が支払った線路使用料=176億円
・全国ネットワークでは一部に過ぎない三セク鉄道が受け取った貨物調整金=138億円


こういう図式から考えると、貨物調整金の138億円という数字は、なかなか太っ腹な印象を受けます。

貨物調整金がナシだと線路使用料は雀の涙


もうひとつ、おもしろい数字があるので紹介しましょう。

愛知県に名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)という三セク鉄道があるのですが、ここにもJR貨物の貨物列車が乗り入れます。
決算書を見ると、「線路使用料収入」という項目があるので、JR貨物から線路使用料を受け取っているものと思われます。

しかし、この会社は整備新幹線の開業で三セク化された会社ではないので、貨物調整金の対象になっていません。

貨物調整金が支払われない場合、つまり純粋な線路使用料だけの場合、どれくらいの収入になるのか?

名古屋臨海高速鉄道の最新の決算書によると、0.38億円(3800万円)です。

す、少ない……。
さきほど紹介したIRいしかわ鉄道の5.5億円や、いわて銀河鉄道の27.3億円と比べると、ほとんどタダ同然の数字です。

いや、もちろん貨物列車の走行距離や通過本数によって、線路使用料は大きく変わります。
名古屋臨海高速鉄道は、路線が短いので、貨物列車の走行距離が短いという事情はあるのでしょう。
しかし、それを考慮しても少ない印象を受けます。

JR貨物の将来を大きく左右する貨物調整金


こうした諸々の数字から推測すると、上で挙げた8社の線路使用料収入は、その大部分が貨物調整金なのではないかと考えられます。
つまり、本来貰っている線路使用料は雀の涙で、上乗せ分の貨物調整金がほとんどだと。

もし貨物調整金がなかったら、とんでもない赤字になって経営が成り立たないはずです。

現在、貨物調整金に相当する金額は、JR貨物は負担を免れています。
しかし、貨物調整金は将来的に財源の見直しが検討されており、いずれは「JR貨物が自分で出せ」という話になるかもしれません。

三セク鉄道に対して、100億円以上の線路使用料を追加で支払っていたら、JR貨物に利益なんぞ残りません。
もしそうなったら、上場どころの話ではないはずです。

JR貨物が上場できるかどうかは、自社だけの状況ではなくて、三セク鉄道との関係にも左右されるわけですね。

私個人の考えでは、JR貨物の上場は難しいと読んでいますが、こうした背景があるからです。


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