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清宮幸太郎 阪神電鉄のダイヤを“破壊”した男

みなさんは、高校野球・甲子園は好きですか?

私も昔は野球少年でしたので、高校野球を見るのが大好きです。独身時代、仕事が休みの日には、近くの球場で行われる地方大会をよく観戦しに行ったものです。30度を超えるクソ暑い中、3試合も観戦したりとか、よくやってたわ……。

8月になって甲子園が開幕すれば、それこそ一日中テレビに張り付いていることも。

というのはともかく、今回の記事では、「甲子園のイベント輸送」について、おもしろいエピソードがあるので紹介します。

スーパースター・清宮幸太郎選手が甲子園に登場!

物語の舞台は、2015(平成27)年の夏の甲子園。

高校野球の聖地・阪神甲子園球場

このときの目玉選手は、なんといっても早稲田実業の清宮幸太郎選手(当時1年生)。

野球にあまり興味がない人でも、清宮選手の名前くらいは知っているでしょう。いまさら私がここで説明するまでもないですね、清宮フィーバーとでもいえる現象を巻き起こした選手です。

公共交通機関で阪神甲子園球場に行く場合、阪神電鉄を利用するのが一般的です。甲子園で試合が行われる日は、阪神電鉄は臨時列車を増発して多客対応を行います。

甲子園駅に入線する5700系・ジェットシルバー

ところがこの2015年、清宮フィーバーによって、阪神電鉄は過去に経験したことのない混乱に陥るのです。

阪神電鉄真っ青! 多客でダイヤが“破壊”された

清宮選手が所属する早稲田実業の初戦、2015年8月8日──

この日、早稲田実業は第一試合の予定。第一試合が始まるのは8時過ぎですから、7時くらいには球場の開門です。そのため、この日の阪神電鉄では早朝から多客が見込まれていました。

もちろん阪神電鉄も多客は予想しており、例年通り「甲子園ダイヤ」とでもいえる臨時列車増発を行います。

ところが……清宮フィーバーは、阪神電鉄の予想をはるかに超えていました。始発列車から、清宮選手目当ての客で車内はムッチムチのパンパン状態に。

そのため、途中駅で旅客の乗降やドアの閉扉作業に時間がかかってしまい、各列車に遅れが発生。ダイヤが乱れます。2~3分の遅れではありません。ひどい列車では、10分前後遅れた列車もあったそうです。

田舎のローカル線ならいざ知らず、都市圏の鉄道でそれだけの遅れが発生するのは、じゅうぶんに致命的な事態です。この日、清宮選手によって、阪神電鉄のダイヤは“破壊”されたといってよいでしょう。

(ついでに言っておくと、あまりの待ち客の多さに、甲子園球場も開門時間を早めたそうです)

臨時列車の増発は口で言うほど簡単ではない

一回戦で早稲田実業が負ければそれで終わりでしたが、そこは強豪の早稲田実業、完勝で一回戦を突破します。

続く二回戦は、8月13日の第一試合。前回と同じシチュエーションです。

一回戦で清宮フィーバーの恐ろしさを身をもって体験した阪神電鉄、今度は「甲子園ダイヤ」ならぬ「清宮ダイヤ」を組みます。従来の臨時列車に加え、さらに臨時列車を増発。その策がなんとか功を奏し、今度は前回のような混乱は生じませんでした。

「臨時列車を増発」と口で言うのは簡単ですが、ものすごく大変なんですよ。

もともと臨時列車が走っているところに、さらに臨時列車を走らせるダイヤ的な余裕はあるのか?
使うことのできる予備車両はあるのか?
車庫での作業は?
乗務員の手配は?
駅への情報展開、利用客への周知、広報対策は?

一回戦の8月8日から、二回戦の8月13日までわずか5日。これだけの日数で「穴」のないように準備するのは、相当しんどかったはず。同業者としては同情します。

ちなみに早稲田実業、このときは最終的に準決勝まで勝ち進みます。が、8月15日の三回戦、8月17日の準々決勝でも、早稲田実業はその日組まれている四試合のうちの第一試合。同じ「清宮ダイヤ」を使い回すことができたはずで、その点は不幸中の幸いだったと思います。

鉄道会社のダイヤを変えた男

阪神電鉄は、長きにわたって甲子園輸送をしてきましたが、こんなことは初めてだったそうです。一選手が鉄道会社のダイヤを変えてしまったわけで……もはや、「清宮ってすげぇな」という言葉しか出てきません。

清宮選手、同学年の村上宗隆選手と差がついたこともあって、最近はニュースで話題になりませんが、将来は日本を代表するプロ野球選手になるでしょう。今回の話、一般にはあまり知られていないエピソードですが、将来、清宮選手がトップ選手になったときには、マスコミなどでも紹介される話かもしれませんね。

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