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駅員の「わからない」には二つのケースがある 雨規制の裏側

ここのところ、大雨による運転見合わせ(雨規制)について説明した記事を書いています。今回も、大雨に関する内容です。

「運転再開はいつ?」→「わかりません」

大雨で運転見合わせになった場合、お客さんが一番気になるのは「いつ運転再開するか?」ですね。窓口などに行って、駅員に「運転再開はいつ頃ですか?」と直接尋ねることもあるでしょう。

その際、駅員が「わかりません」と回答することがあると思います。

この「わかりません」という回答、実は二つのケースがあることをご存知でしょうか? どういうこっちゃ? と思うでしょうが、こういうことです。

  1. 駅員は「運転再開がいつになるかわからない」という情報を得ており、それに基づいて「わからない」と案内しているケース
  2. そもそも指令所から駅に情報が伝わっていないため、「わからない」としか案内しようがないケース

運転再開情報の「伝言ゲーム」

大雨の後には、保線係員が線路点検をしないと、運転再開できません。したがって、保線係員による線路点検の予定や進捗状況が「いつ運転再開するか?」を左右します。

線路点検の予定や進捗状況については、保線係員から指令所へ伝えられます。その情報をもらった指令所は、運転再開の予測を立てて、駅などの関係部署に情報をバラまきます。

ようするに、運転再開のための情報は、現地の保線係員→指令所→駅という伝言ゲームで伝わっていくわけです。

ケース1 「わからない」という情報がある

たとえば、まだ強い雨が降り続いているとか、必要な人員が揃わないとかの事情で、そもそも線路点検が始められない場合があります。線路点検の目途が立たなければ、運転再開の予測もできません。

「線路点検の目途が立たないので、いつ運転再開できるかは不明」という情報が、伝言ゲームで駅まで届く。それに基づいて、駅員はお客さんに「運転再開のタイミングはわかりません」と案内をする。

これが一つ目の「わかりません」のケースです。

ケース2 そもそも情報がないのでわからない

対して、二つ目の「わかりません」のケースは、そもそも駅員が情報を把握できていない場合。情報自体がないわけですから、駅員としては「わかりません」としかお客さんに案内しようがないのです。

なぜ駅員が情報を知らないなんて事態が生じるかというと、「現地の保線係員→指令所→駅」という伝言ゲームが途中で途切れているからです。「現地の保線係員→指令所→(×)→駅」という状態になってしまっている。

「そんなことあるの?」と思うかもしれませんが、あります。

というのは、異常時の指令所は戦場です。あちこちからひっきりなしに連絡が入り、また、指令員は必要な手配をするための業務に忙殺されています。そういう状況ですから、情報伝達の漏れの一つや二つはどうしても発生してしまうのです。

指令にとって優先すべきは、運転再開後の計画を立てること。どこにどれだけの列車を走らせるかを決め、それに伴う車両や乗務員の手配をしなければなりません。ぶっちゃけて言えば、異常時の指令所において、お客さんへの情報提供は優先順位が低いんですね。

ですので、駅への情報伝達漏れという事態も発生しうるわけです。

最近のトレンドは「情報配信の強化」

ただし、近年は状況が変わってきました。2010年くらいからでしょうか、「利用客への情報配信を強化するべきだ」という認識が鉄道会社にも生まれます。時代の流れですね。

そして、大手鉄道会社の指令所内には、情報配信業務を専門に担当する指令員が誕生するようになりました。

運転見合わせや列車遅延の際、みなさんは何を見て情報を入手しますか? 駅や車内の液晶ディスプレイ(LCD)表示器、ホームページや鉄道会社の公式ツイッター、こんなところではないでしょうか。

この手の媒体、内容の更新は情報配信担当の指令員が行っているケースが多いです。

つまり、「保線係員→指令所→駅員→お客さん」というルートではなく、「保線係員→指令所→お客さん」という情報提供ルートが実現しているのです。より現場に近いところの情報を、お客さんが直接見ることができるようになったわけですね。

「近年の鉄道会社で大きく変わったところはどこか?」と問われれば、「情報配信の強化」は間違いなく上位にランクインします。就職活動をする学生さんも覚えておくといいでしょう。

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