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北陸新幹線の暫定ダイヤ 必要な車両は何本?

台風の影響で一部区間で運転を見合わせていた北陸新幹線が、本日(2019年10月25日)より全線で運転を再開しました。

ただし、北陸新幹線で使われているE7系・W7系の30編成のうち、10編成が河川氾濫で水没して車両が足りないため、間引き運転(暫定ダイヤ)となっています。

車両の3分の1が使えないのに9割近い本数!

この間引き運転(暫定ダイヤ)ですが、一時は、「通常ダイヤの5~6割の本数になるのではないか」という予測も出ていました。全編成のうち、3分の1が水没したわけですから、そういう予測になるのも無理はありません。

しかし、いざフタを開けてみると、通常ダイヤの9割近い本数での運転となりました。これには驚いた人も多いのではないでしょうか。かくいう私も、「車両の3分の1が使えないのに、9割近い本数を確保できるもんなの?」と驚きました。

車両には、「運用計画」という使用スケジュールが存在します。たとえば、車両Aは今日は東京からスタートして金沢まで行き、また東京まで戻ってくる。そのあとは東京から長野間を往復して、夜になったら○○車庫に入る。

こういう「運用計画」がいくつもあり、その計画に各車両を割り当てていくことで、列車ダイヤが成り立っています。

今回の暫定ダイヤを作るにあたっては、この運用計画が組み直されています。言ってみれば、パズルみたいなものですね。

運用計画というパズルをいろいろと“切り貼り”して、いままで2編成で回していた部分を1編成だけで回せるように組み替える。“切り貼り”で必要となる編成数を削っていき、少ない頭数でもダイヤが回るようにするわけです。車両の本数が足りないので、どうしても無理な部分が出てきますが、そこは運休にすると。

たった20編成で本当にダイヤを回せるのか?

しかし、今回発表された暫定ダイヤ、たったの20編成で本当に回せるものなのか?

いままでは30編成(E7系・W7系の一部は上越新幹線に回っていますが)で回していたダイヤですぞ。一部運休とはいえ、9割近い本数を確保するとは。うーむ、いったい運用計画をどう組み直したんだ。同業者としては非常に気になる……。

ならば検証だ!

「発表された暫定ダイヤ」と「ネット上で公開されている車両の運用計画表」を参考にして、自分なりに考えてみました。方眼紙を使って簡単な列車ダイヤを作り、そこに運用計画を乗せていく。統合できそうな部分や、うまく組み替えできそうな部分を探し出し、必要な頭数を削っていきます。

まあ、私の勝手な考え方で進めましたが。

私の(勝手な)予測・17編成あれば回りそう

その結果、私の勝手な予測ではありますが、17編成あれば暫定ダイヤを回せるのではないかという結論に至りました。→詳しい考察はこちらをクリック

残りの3編成は、車両センターで検査をします。そして検査が終了すれば、17編成のどれかとバトンタッチするわけです。

また、始発の時点で

  • 東京周辺に5編成
  • 長野周辺(本線上)に5編成
  • 金沢・富山周辺で7編成

こういう配置にしておけば、うまく回せそうな感じです。

20編成のうち、17編成を使って3編成は検査行き。あくまで私の勝手な予測に過ぎませんが、バランス的にも妥当な数字である気はします。

車両の検査担当者は激務必至

うーむ、たった17編成で9割近くの本数を確保できてしまうとは……。意外といえば意外です。

ただ、検査などのことを考慮すると、これは相当にギリギリの状態ですね。

鉄道車両には「○日以内に一回」または「○㎞走行する前に一回」というように検査基準があります。これは規定で決まっている検査なので、省くことはできません。

今回の暫定ダイヤでは、少ない編成数で9割近い本数を確保しているので、車両は「こき使われている」状態です。いつもより走る距離が多いので、「○㎞走行する前に一回」という検査基準が早く来てしまいます。つまり、検査周期が短くなってしまうので、その分だけ検査の回数が増えてしまうはずです。

さらに今回は、長野新幹線車両センターが水没したという事情もあります。長野新幹線車両センターは、車両の検査も行える場所なのですが、水没によって検査機器が壊れてしまったそうです。そのため、長野で行えるはずの検査を、他の検査場に振り分けないといけません。

こうした諸々の事情から考えると、他の車両検査場(たとえば金沢の近くにある白山総合車両所)は大忙しになることが予想されます。

いや、大忙しなんて言葉では生ぬるいでしょうね。こんな言い方はアレですが、たぶん激務続きで地獄になるのでは……。土休日にもフル稼働するのはもちろん、もしかしたら、昼間だけではなく、夜間にも仕事をする必要が出てくるかもしれません。

JR東日本・西日本の鉄道マンに敬礼!

車両の3分の1が使えないのに、9割近い本数で運転。お客さんにとっては朗報ですが、これはJR東日本・西日本のギリギリの努力によって成り立っています。少しでも手違いがあれば、戦線が崩壊すると思われます。

一刻も早く、使用できる車両を増やすことが求められます。

こうしたギリギリの戦線を支えているのは、現場を支える鉄道マンの意地と矜持です。JR東日本・西日本の鉄道マンに敬礼(`・ω・´)ゞ

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