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川越線での正面衝突未遂(?) TwitterやYouTube上での考察には疑問がある

2023(令和5)年3月2日、川越線・指扇駅~南古谷駅の単線区間で、上下列車が接近する事象が発生。両駅の信号が青になったため、単線区間に上下列車が同時進入した。片方の列車が元の駅までバックした。

単線区間に上下列車が同時進入し、「お見合い状態」になってしまったわけですね。解決するには、基本的にはどちらかが下がるしかありません。

上下列車のお見合い状態

単線の信号システムは上下列車の同時進入を許していない

単線区間で上下列車がお見合い。一歩間違えれば、正面衝突していた可能性も。

単線で一番怖いのは正面衝突ですが、それを防ぐために、信号システムは「上下列車どちらかしか当該区間に進入できない」という仕様になっています。具体的には、下り列車が単線区間に入るときは、上り列車側の信号はすべて赤になります。上下逆の場合も同様。

(単線の信号システムは、こちらの記事で詳しく解説しています)

それなのに、なぜ今回のような事象──指扇・南古谷両駅の信号が青になり、単線区間に上下列車が同時進入してしまった──が起きたのか?

まず、当該区間の配線図から確認しましょう。川越線の指扇~南古谷間は、↓のようになっています。

単純な単線ではなく、途中に車両基地(川越車両センター)へ入るルートがあるのが特徴です。今回はどうやら、↓の形でお見合いになってしまった模様。

お見合いの原因は? TwitterやYouTube上での解説

今回の正面衝突未遂(と呼んでいいかは微妙ですが)、TwitterやYouTube上で、原因の考察が行われています。たとえば、本職の運転士の方も考察もあります。

【JR川越線】*単線区間で正面衝突寸前だった?*何があったのか考察* - YouTube

それらの解説によると、事件の流れは以下の通り。

① 下り列車が指扇駅を発車。このとき、川越車両センターへ入る方へ信号が引かれていた。

② しかしこの列車、実は南古谷に行きたかった。つまり、川越車両センターに入る方へ信号が引かれていたのは誤り(指令のミス?)。そこで、下り列車の信号を南古谷側へ引き直そうとしたが……

このようにルート修正しようとしたが

③ 下り列車が川越車両センターに入ることを見越し、すでに上り列車が南古谷を発車していた。そのため、下り列車が南古谷へ入るルートは塞がれ、お見合い状態になってしまった。

上り列車が邪魔なので、下り列車の南古谷駅進入ルートが取れない

TwitterやYouTubeでは、「今回の原因はコレで決まり!」みたいな雰囲気になっています。

「指扇発」かつ「南古谷発」が可能な仕様になっていたとは考えにくい

ただ、個人的には疑問を感じます。ようするに、

下り列車が川越車両センターに入るのであれば、同時に上り列車が南古谷駅を発車することが可能

という仕様を前提として話が進められていますが、私に言わせると、こういう仕様は危険なんですよ。その前提は本当に正しいのか? という疑問が拭えなくて……。

早い話、車両センターへの分岐地点では行き違いできないのに、そこに向かって上下列車を同時に出せるという仕様が、私の感覚だと「???」なんですね。

南古谷に行かせたい下り列車に対して、川越車両センターに入る誤ルートを引いてしまう「信号操作ミス」が起きることは、可能性として普通に想定できます。そういうミスが起きたときのために、「下り列車のルートを南古谷方面へ修正する余地」を残しておいた方がいい。

しかし、南古谷駅から上り列車が発車できる仕様になっていると、その上り列車に進路を塞がれ、「下り列車のルートを南古谷方面へ修正する余地」がなくなってしまいます。

下り列車が川越車両センターに入るのであれば、同時に上り列車が南古谷駅を発車することが可能──。こういう仕様なのであれば、信号操作ミス一つで今回のようなお見合いが発生する危険性が、システム内に存在していた(許容されていた)ことになります。信号システムの作りが、そんな風になってる? というのが私の疑問です。

信号システムの論理を組むときに、そういうリスクは排除して作ると思いますが……。両駅からの同時出発は成立しない仕様の方が望ましいと、私は考えます。

すみません、話が難しいです(^^;) 専門的な感覚を交えて書いているので、一般の方には全然ピンとこないと思います。

原因は単なる信号システムの不具合?

私としては今回の件、信号システムに何らかの不都合が起きて、両駅から上下列車が出発できてしまった(両駅の信号が青になった)と推測します。もしそうなら、インシデントに該当する可能性もあります。

いや、TwitterやYouTubeでの解説通り、信号システムが「下り列車が川越車両センターに入るのであれば、同時に上り列車が南古谷駅を発車することが可能」な仕様になっていた可能性も、なくはないですが……。

しかし、そういう仕様だったのであれば、片方の列車をバックさせて対処する必要はない気がします。今回、上下列車が立ち往生したわけですが、まず下り列車を川越車両センターに入れてしまい──

上り列車が空いた線路を通過する。

これでいいんですよ。あとは川越車両センターに入れた列車をどうするかですが、基地内で折り返して指扇まで行く(帰る)。これで、信号システムを正当に使った形で処理ができ、安全上はまったく問題ない対応となります。

下り列車の乗客からすれば、南古谷に行けなくなるので迷惑極まりない話です。しかし、下手にバックという作業で対応して安全面でヒヤヒヤするよりは、こちらの方がいいはずです。それをやらなかったということは、「そういう仕様」にはなっていないと考える方が自然です。

(2023/3/4)

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