鉄道の線路には、いろいろな設備が存在しています。信号機のように、一般の方でもなんとなく用途がわかるものもあれば、「コレなんだ?」と使い道がまったく想像できないものもあるでしょう。
今回の記事では後者、つまり一般にはその用途があまり知られていない線路設備を紹介します。
線路終端に設置されている安全側線緊急防護装置・EM
本記事で紹介するのは、安全側線緊急防護装置(読み方:あんぜんそくせんきんきゅうぼうごそうち)という設備です。写真をご覧いただきましょう。デジタル数字の「8」みたいな形をしている、黄色と黒のやつです。
なお、安全側線緊急防護装置と長ったらしい名称で呼ぶのは面倒なので、現場ではアルファベットで略してEMと呼びます。EはEmergencyだとわかるのですが、Mは……。すみません、実は私も知りません(^^;)
本記事内でも、以降はEMと表記します。
このEMですが、安全側線という線路の終端に設けられるのが一般的です。ただし、安全側線とは何ぞや? を話し始めると長くなるので、そこは省略します。「EMは線路終端に設置する」と簡潔に覚えればOKです。
EMが倒れると周辺の信号機がすべて赤になる
このEMという装置の効果ですが──EMが倒れると、周辺の信号機すべてが赤になります。
「線路終端に設置してあるEMが倒れる」とは、どういう事態を想定しているのか?
たとえば、ブレーキが効かなくて列車が線路終端に突っ込んだ。これは超ヤバい事態ですよね。線路終端に突っ込む → 線路がないところにハミ出す → 隣の線路を支障 → そこに他の列車が走ってきて衝突。いわゆる二次災害ですが、これを防止するのがEMです。
列車が突っ込んできたらEMは倒れます。それによって周辺の信号機(関係信号機)が全部赤になるので、付近の列車が止まり、二次災害を防止するという理屈です。
このように、事故が起きたときのセーフティ装置なので、普段から何かに使っているわけではないですね。
線路作業員が無意識に手を掛けてEMが作動した事件
ここで気になるのが、EMが実際に作動することはあるのか? ということですが、
ウチの会社でも昔あった
いや、列車が突っ込んだというヤバい事態ではなくて……。線路作業員が、あー疲れた、よっこらしょっと無意識にEMに手を掛け、それで傾いて作動してしまったという、しょーもない事件だったそうです。ずいぶん昔の話なので、私自身が遭遇したわけではないですが。
なお、EMこと安全側線緊急防護装置、ネットで検索すると、通称は「ねずみとり」だそうです。が、少なくとも私の職場では略称のEMで通っており、ねずみとりとは呼んでないですね。