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銚子電鉄の経営難 本業の鉄道は将来的にどうするのか?

鯖威張るカレー・まずい棒・ガリッガリ君・ぬれ煎餅。

この四つのキーワード(商品名)を並べれば、鉄道ファンはもちろん、それほど鉄道に詳しくない人でも、「あの会社か」とわかるでしょう。
千葉県の銚子電鉄ですね。

メディアでもよく紹介されていますが、銚子電鉄はカネがピンチで、あの手この手で増収を図ろうとしています。
先月(2020年8月)には、ついに『電車を止めるな!』という映画まで作ってしまいました。

鉄道(本業)の赤字を関連事業(副業)で補うスタイルは、昔から多くの鉄道会社で行われてきました。
JR九州JR貨物の不動産事業は好調です。
黒字のJR東日本でも、人口減による鉄道需要減少に備えて、非鉄道事業の割合を意識的に増やしています。

しかし、銚子電鉄ほど関連事業(副業)に熱心な会社も、なかなかないでしょう。

今回の記事では、映画公開でいま注目(?)の銚子電鉄について、私なりに思うところを書きます。

 

カネがなければ安全を守るための設備が維持できない


鉄道で何より大切なのは「安全」ですが、安全に関しては、私なりに持論があります。

鉄道の安全を守るために大切なのは、利益を出すこと。
カネの切れ目が安全の切れ目。

というのも、車両・軌道・踏切・信号などの設備は、その機能を保つために更新や修繕をしなければいけません。
それには、どうしてもカネが必要です。
更新や修繕が満足にできないようでは、安全に支障をきたします。

この点、銚子電鉄は状況が深刻です。

私は銚子電鉄に乗車した経験はありませんが、いろいろなブログで紹介されている乗り鉄記事や、Youtubeでの前面展望。
そういうコンテンツで設備を見ると、とにかく古く、そしてとことん使い倒している感が……。
もちろん、経費を徹底的に削減するためには仕方ないのですが、「これで大丈夫なん?」と心配になるのも事実です。

車両や変電所を更新するためのカネがない


車両の老朽化
などは、特に顕著です。

先日、銚子電鉄に関する記事を読んだのですが、それによると、最も新しい車両でも1963(昭和38)年製なのだとか。
1963年といえば、東京オリンピック(1964年)よりも前です。
東海道新幹線でいえば、初代の0系車両を現在でも使い続けているようなもの。

ジブリ映画でいえば、『コクリコ坂から』の舞台がまさに1963年。
高校生だったメルちゃんや風間さんが青春をしていた、まさにその当時に製造された車両。
その車両が、メルちゃんや風間さんが後期高齢者になろうとしている2020年でも走り続けているのです。

更新問題に直面しているのは、車両だけではありません。
電車に送電するための「変電所」という設備も、資金不足で更新が滞っているそうです。

カネがなければ優秀な人材も確保できない


資金不足は、設備というハード面だけではなく、人材というソフト面にも悪影響を及ぼします。

会社を維持・発展させていくためには、優秀な人材が絶対に必要です。
しかし、ある程度の給料を支払わなければ、優秀な人材を確保するのは難しい。

現在在籍する社員の方々は、優秀なのでしょう。
カネが無いながらも何とか会社を回し、これだけ世間を賑わせるユニークな増収策を次々に実行しています。

また、先ほど設備の老朽化について触れましたが、なんやかんやで大事故はほとんど起きていません。
(ここ20年で起きた大事故といえば、2014年の脱線事故くらい)
銚子電鉄より設備が優れているにも関わらず、事故やインシデントを連発させている会社もあります。
これは、銚子電鉄の現場が必死に努力しているからでしょう。

しかし、現在の状況で、次代を担う人材がはたして育つのか?
これほど「カネがなくてヤバい」を世間に知られてしまうと、優秀な人材が、銚子電鉄に憧れて入社しようという気になるでしょうか?

もちろん、働くにあたってはカネがすべてではありませんが、「貧すれば鈍する」という言葉もあります。
仮に優秀な人材が入社しても、あまり給与も出ず、目の前の運転資金確保に汲々としている状況が続けば、最初のヤル気が削がれてしまうかもしれません。

新企画や新商品の投入だけでは限界がある


現在の銚子電鉄は、資金がピンチになると「ヤバいので助けてほしい」とメディアでアピールし、新企画や新商品を投入する。
その売上でなんとか凌いでいる、というのが私の印象です。

もちろん、運転資金が尽きたら会社が潰れてしまいますから、新企画や新商品を投入して目先のカネを確保することは大切です。
しかし、これの繰り返しで10~20年後に銚子電鉄が生き残れるのか? というと、大変失礼ながら私にはイメージが湧きません。

新しいお菓子にしても映画にしても、フタを開けるまで売上がどうなるか、わからないところがあります(良くも悪くも)。
映画が大ヒットして、今後10年くらいの設備更新費用が賄える状況になれば万歳ですが、逆に大コケしたらそれまでです。

鉄道という業態は、定期的な設備更新が必要であり、数年という単位で資金計画を立てたり見直したりします。
売上予測が難しいものを主軸に据えて計画を動かしていくのには、やはり限界があります。

それに、メディアでアピールする手法は、世間が反応しなくなったら(飽きられたら)終わりです。
世間に注目される話題を、10年や20年も常に振りまき続けることが、はたして可能でしょうか?

地域の発展に貢献するためのビジョンが必要


であれば結局のところ、「本業である鉄道を根本的にどうするか?」を考えなければいけません。
そもそも銚子電鉄の役割は、

・「地域の足」として銚子市民の役に立つこと
・観光路線として銚子市の発展に貢献すること


この二つのはずです。
そのためには、「本業である鉄道はどういう施策で維持を図っていくのか?」という将来的なビジョンが、やはり必要です。

いや、現在のギリギリの状況で、将来の展望うんぬんを言うのが難しいのはわかります。
しかし、ビジョンもなしに「カネに困っているんで……」と単に窮状を訴えるだけでは、いずれ行き詰まるでしょう。

「今後はこういう方向で路線の維持を図り、銚子の発展に貢献したい。そのための資金が足りないので、全国のみなさんにぬれ煎餅やまずい棒を買ってほしい」

このようにビジョンを提示してこそ、市民・行政・鉄道ファンの理解と協力が得られ、また、社員もついていく気になるはずです。

あくまで私の(勝手な)感覚ですが、今のところ、そのへんが見えてこないような気がするなあ……と。
メディアも、銚子電鉄の増収策をおもしろおかしく取り上げるばかりですが、それだけではなく、路線維持の意義将来的な展望にも触れてほしいと思います。

……と精神論的な話で終始してしまいました。
次回は、別の角度から記事を書いてみます。

続きの記事はこちら 銚子電鉄のコスト削減策 気動車に転換するのはどうか?


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