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新幹線の乗務員がコロナウイルスに感染

2020(令和2)年5月2日、北陸新幹線の車掌(JR東日本所属)がコロナウイルスに感染していることが判明した。

遅かれ早かれ乗務員の感染が発生するとは思っていたけど、ついに出たか……という感想です。今回の記事では、この件について私の考えるところを書きます。

乗務員がお客さんと直接接触する機会は意外と少ない

まず、この乗務員の感染経路ですが、乗務中に車内の乗客からウイルスをもらった可能性は低いのではないでしょうか。

「鉄道マンはお客さんと接触する機会が多いから、感染の危険も高い」という意見が普通の感覚でしょう。ただ、私自身の経験から言えば、駅員ならともかく、乗務員がお客さんと直接接触する機会は案外少ないのです。

運転士にしても車掌にしても、乗務中は基本的に運転室に入っています。しかも、客室とは壁やガラスで仕切られていますから、飛沫感染・接触感染の危険はあまりないはず。

車掌ならば、車内巡回や検札の業務がありますが、乗客の大多数は車内では無言ですから、ウイルスの飛沫がそう飛び交っているとも思えない。ただでさえ、利用者大幅減のスカスカ状態ですし。

また、検札時に触れた切符にウイルスが付いていて、そこから感染した可能性はどうか? お客さんが切符を触るのは、券売機から取り出すときと、自動改札機に通すときぐらいなので、そう都合よくウイルスが付着する可能性は低いと思います。

ですから、プライベートで感染したか、あるいは職場の無症状感染者からもらってしまったかの、どちらかではないでしょうか。

いま乗務員はすごいストレスに晒されている

ところで、この乗務員は4月27日に体調不良を自覚した後も、乗務を続けていたとのことです。読者のみなさんは、「なんで早く会社に申告して休まないんだ」と思うかもしれません。

が、私にはこの乗務員の気持ちが痛いほどわかります。正直、自分が同じ状況に置かれたら、私も無理を押して出勤するかもしれません。

「鉄道会社の社員、特に乗務員が感染したら、列車運行のための人手が足りなくなるのでは?」

これ、メディア等でよく言われていますが、そのことは現場の乗務員が一番よくわかっています。わかっているからこそ、「自分のせいで鉄道を止めたくない」「感染者第1号にはなりたくない」という気持ちが強いのです。

別の言い方をすると、現場の乗務員には「コロナにかかっちゃいけない」という強烈なプレッシャーが掛かっています。そのプレッシャーが、「ちょっと体調が悪いけど大丈夫だろう」と無理して出勤するという行動をとらせてしまうのだと思います。

ただでさえ、乗務員には安全輸送を遂行するという大きなプレッシャーが掛かっています。さらに、利用者の激減を現場で目の当たりにして、「ウチの会社は大丈夫だろうか……」と不安になっている乗務員もいるでしょう。

早い話、乗務員は今、ものすごいストレスに晒されながら仕事をしているのです。

乗務員を守るためにも減便を考えるべきでは

こういう状況ですから、「乗務員を守る」という観点からも、列車本数の削減を考えてよいのではないでしょうか。

現在はコロナ騒動が始まってまだ3ヶ月程度なので、張り詰めた状態を保てていますが、先行きの見えない現状の中、緊張の糸がいつ切れるかわかりません。緊張の糸が切れることで、一気に乗務員の感染者が増えるかもしれません。また、乗務中に思いがけないミスをして、鉄道の安全を脅かす事態が発生する心配もあります。

そうならないよう、心身の両面から乗務員を守っていく対策を適宜考えるべきだと思います。

また、乗務員から複数の感染者が出た場合に備え、代替乗務員を確保しておくという意味でも、列車本数の削減は有効です。

すでに一部の鉄道会社では、臨時列車だけでなく、定期列車の本数も減らしています。それに伴って、乗務員を一時的に休業(一時帰休)させたり、自宅待機を命じたりしていますから、いざというときの代替乗務員は確保できるはずです。

様子見ではなく本格的に検討する時期が来たのかも

正直に言えば、私、列車本数を減らすのには気が乗りません。外出自粛中とはいえ、どうしても鉄道を利用しなければいけない人はいます。減便によって、そういうお客さんの利便性を損なったり、車内混雑を招いて感染リスクを上げたりするのはどうかと思うからです。

が、こと新幹線に限っていえば、どこも利用者9割減と壊滅状態ですから、さすがに定期列車も減便してよいのでは……。

もちろん、間引きダイヤを設定するのは簡単ではありません。列車ダイヤだけではなく、乗務員や車両の使用スケジュール(運用計画)も組み直す必要があります。場合によっては、相互直通先との調整もしなければいけません。

私はそういうのを手配する側の人間なので、作業の大変さはよくわかります。もしウチの会社で減便することになったら、「え~間引きダイヤとかめんどくせぇわぁ。もう少し通常ダイヤで様子を見れば?」と言ってしまうかもしれない(笑)

しかし、様子見を続ける段階は、そろそろ終わりに来ているのではないでしょうか。

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