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コロナの影響でJR東海は数千億円の赤字に!?

JR東海道新幹線は、コロナウイルスの影響で、4月の利用者数が85~90%減少した。


2020(令和2)年4月16日、このような衝撃ニュースが流れました。
今回の記事では、この数字がいかに甚大なものなのか、解説・検証してみたいと思います。

 

JR東海の売上高や利益額は?


東海道新幹線(東京~新大阪)を管理するのはJR東海です。
まずは、JR東海の売上高や利益額がどれくらいなのかを見てみましょう。
(以降で出てくる数字は、すべて「年間」のものです)

読者のみなさんがイメージしやすいように、数字はザックリしたものにしました。
なお、この数字は「連結」ではなく「単体」での数字です。

売上高 1兆4,500億円
営業費用  8,000億円
営業利益  6,500億円
純利益   4,000億円


売上高約1兆4,500億円に対して、営業利益は約6,500億円。
営業利益率は40%超。

決算書を勉強したことのある人でないとピンとこないかもしれませんが、この営業利益率、すさまじい数字です。
参考までにJR東日本JR西日本の営業利益率を示しておくと、10%台後半にすぎません(それでもじゅうぶん優良な数字です)。
さすが日本有数の大企業としか言いようがありません。

「定期外旅客」の利用が圧倒的な割合


JR東海の売上の大部分が東海道新幹線によってもたらされている、というのは、鉄道に詳しくない人にも知られた事実だと思います。

会社の売上約1兆4,500億円のうち、東海道新幹線の売上は約1兆3,000億円。
在来線の売上は1,000億円程度ですから、いかに新幹線に依存した収益体制であるかが容易に理解できます。

なお、新幹線の売上約1兆3,000億円のうち、約98%は「定期外旅客」がもたらした売上です。
「定期旅客」による売上は、2%未満に過ぎません。

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売上高ではなく「輸送人員」の比率でみると、「定期外旅客」は約91%、「定期旅客」は約9%という割合になります。
定期旅客は、割引率の高い定期券で乗車するので、輸送人員が多くても売上への貢献率は定期外旅客よりも低い、ということですね。

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今回の利用者85~90%減ですが、出張や旅行の需要減が原因です。
減ってしまった利用者は、そのほとんどが定期外旅客のはずで、通勤等で利用する定期旅客はそのまま残っていると思われます。

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コロナウイルス騒動で売上高がどれくらい減る?


さて、前提となる数字の解説はここまで。
仮に利用客85~90%減という状況が1年間続いた場合、いったいどれくらいの減収になってしまうのでしょうか?

ザっと計算してみたところ、1兆2,000億円前後の減収!になるのではないかと思われます。

1兆3,000億円の売上があってしかるべきところ、1兆2,000億円の減収。
つまり、最終的な新幹線の売上は、1,000億円に届くかどうか……というレベルです。

何もしなければ数千億円!の赤字


新幹線の売上が1,000億円。
仮に在来線の売上1,000億円がそのままだったとしても、トータルでの売上は2,000億円……。

先ほど数字を出しましたが、JR東海の営業費用は約8,000億円です。
もちろん、この数字が今年度もそのまま……ということはないでしょう。
臨時列車の運転を取り止めるなどの措置をしていますから、コストは下がるはずです。

しかし、鉄道の運行にかかるコストは、その大部分が「固定費」。
売上に比例して掛かるコストである「変動費」の割合は小さいです。

つまり、今回のように利用者数が90%も減ったり、列車本数を削減したとしても、費用が大きく減ることはありません。
ここが鉄道という業種の泣き所です。
ということで、仮に今年度いっぱいこの状況が続くと、2,000億円 - 8,000億円 = 数千億円の赤字(営業損失)は免れません。

赤字が数千億円……と言われてもピンとこないと思うので、JR北海道とJR四国の数字を出してみます。
JR北海道は約500億円、JR四国は約130億円の営業損失。
もちろん、会社規模が違うので同列の比較はできませんが、数千億円の赤字がいかにすさまじい額であるかが理解できると思います。

おそらく定期列車も減便するのでは


結局は、東海道新幹線一本に依存という弱点を、モロに衝かれてしまった格好です。

1年間この状況が続くという、かなり極端な仮定で赤字額を弾き出しましたが、先行きの見えない現状から考えれば、本当にありうるかもしれません。

手をこまねいて数千億円の赤字を出してしまっては、会社が揺らぎます。
売上の回復が期待できないとなれば、なんとかして費用を削減し、少しでも赤字の額を減らすしかありません。
というわけで、JR東海は今後いろいろ手を打つはずです。

すでに臨時列車の運転は取り止めていますが、今後は定期列車の減便にも踏み切ると予想します。

新幹線の本数を減らせば、必要な乗務員の数も減るので、余剰人員は一時的に休業(一時帰休)させるかもしれません。
なお、すでに一部の乗務員は在宅勤務になっているとのことです。

基本給や各種手当のカットには手を付けないでしょうが、賞与のカットはあるかもしれません。
真偽はわかりませんが、JR東海の賞与は、年間で約6ヶ月分という話を聞いたことがあります。
ああ~うらやましい
それをカットするとなると、労働組合とめちゃくちゃ揉めそう。

今回の記事は、数字の解説がメインになりました。
次回は、この数字がもたらす影響等について、もう少し考えてみたいと思います。

続きの記事はこちら コロナウイルスでリニア中央新幹線の開業は遅れる?


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