現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

鉄道志望の就活生が「コロナでの利用客減」から学んでほしいこと

今回は就職活動の話。
鉄道業界への就職を志望する学生さんは、ぜひ読んでください。

コロナウイルスによる緊急事態宣言も終わり、就職活動も本格的に再開されるでしょう。
就活生にとっては、災難としか言いようがなかったコロナ騒動。

しかし、鉄道を志望する就活生が、今回の事態から学べることは少なくなかったと思います。
鉄道会社の将来を占うという意味で、です。

 

赤字で苦しむのは30~40年後の鉄道会社の姿


今回のコロナ騒動で、鉄道会社(というか鉄道業界)は甚大な被害を受けました。
お客様の数が前年比で80~90%も減り、月次決算が大赤字に転落。

これは確かに「一過性の特殊な現象」ではあります。
しかし、考えようによっては、ちょっと違う見方をすることも可能です。

利用者減により売上が落ちて赤字に苦しむ。
これ、30~40年後くらいの鉄道会社の姿なのではないでしょうか。

私はこのブログで、以下のようなことを何度も書いてきました。

「将来、日本の人口減少で鉄道利用者が大幅に減り、鉄道会社は苦しくなる」

鉄道会社を追い詰める「人口減少×テレワーク」のコンボ


鉄道会社を志望する動機に、「安定しているから」というものがあります。
まあ、私くらいの世代なら、そういう認識でよかったかもしれません。
しかし、これから就職する人は、それでは絶対にダメです。

将来、日本の人口は、現在より20%以上減少すると予想されています。
それだけ「基礎需要が減る」のです。

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内閣府のホームページのデータから


地方ローカル線はもちろん、現在はバリバリ黒字の都市部でも、赤字になる路線が出てくるでしょう。
それでいて、「鉄道は潰れることのない安定した業種だ」などと考えるのは能天気すぎます。

さらに、今回のコロナ騒動ではテレワークが推奨され、多くの企業で在宅勤務やテレビ会議が導入されました。
「仕事のために、わざわざ現地に移動する必然性がない」と国民全体が気付いたのです。
言うまでもなく、これは鉄道の利用者減につながります。

「人口減少による基礎需要減」×「テレワークの普及による移動需要減」

今後は、このコンボが鉄道業界を襲ってきます。
都市部の鉄道も、30~40年後には、利用客が現在の半分になっていても不思議ではありません。

コロナ騒動で利用客が80~90%減少したのは、確かに極端ではあります。
しかし、程度の差こそあれ、長期的に見れば、全国的にそういう現象が起きていくのです。

ようするに私が言いたいのは、「今回のコロナ騒動で起きた利用客減少は、将来の仮想シミュレーションみたいなもの」ということです。

経費削減で「人減らし」が起こるのは間違いない


売上減少で赤字に苦しむようになった鉄道会社は、いったいどういう方向で打開するのか?
手をこまねいて赤字垂れ流しではダメですから、まずは経費削減に手をつけるでしょう。

経費削減といっても、「固定装置産業」である鉄道は、設備投資額を減らすのは難しい。
となると、「人減らし」で人件費削減を行うはずです。
あくまで一例ですが、具体的には以下のような方法が考えられます。

1.駅員や車掌を削減 運転士の仕事はしばらく残る


真っ先に削られるのは、駅員や車掌です。
(現在、すでに削られまくっていますが)

車掌に関していえば、ワンマン化の流れは止まりません。
JR九州などは、特急列車のワンマン化まで始めました。

今後、ホームドアの普及が進めば、ますますワンマン化は進むでしょう。
また、中長期的に利用者が減少すれば、列車を短編成化させたりするでしょうから、やはりワンマン化を促進します。

駅員削減も同様です。

インターホンやタッチパネルを備えた「遠隔案内システム」を導入し、駅員を置いた“拠点駅”が複数の“無人駅”を管理する。
現在でもこういう仕組みがどんどん導入されて、無人駅が増えていますから、今後どうなるかは推して知るべしです。

ちなみに……「自動運転の技術が発達していくから、運転士の仕事もなくなるのでは?」と考える人もいるでしょう。

ただ、私の個人的な意見ですが、30~40年では運転士の仕事はなくならないと思っています。
全国津々浦々、どの鉄道・どの列車でもドライバーレスが実現するのは、100年単位の話ではないでしょうか。
ここでは理由は省略しますが、そのあたりについても、いずれ記事を書くつもりです。

2.ドローンやレーザーの活用で保守社員を削減


現在、線路設備の保守点検は、人手に頼る部分が大きいです。
たとえば、橋梁を点検しようと思ったら、足場を組み上げ、列車の通らない夜間時間帯に作業員が点検する。

しかし現在、ドローンを使っての検査技術が進歩しています。
レーザーなどの非接触技術を使っての検査も同様です。

ドローンやレーザーを使えれば、作業員をたくさん動員して現場に近づけなくても、点検ができてしまうわけです。
これで人件費を削減できますね。
また、列車が走っている昼間でも検査ができるので、作業員に「深夜手当」を出さなくて済みます。
さらにさらに、足場を組む必要がないとなれば、やはりコスト削減になります。

保守担当者は、ドローンやレーザーの操作を身に付ける必要が出てきます。
取得した検査データは、AIが自動判定して、修繕の必要がある箇所を教えてくれる。
保守担当者は、それに基づいて保守計画を立てる、というのが将来の姿でしょう。

3.AIの活用で指令員が不要に


私はいま、列車の運行管理を行う「指令員」という仕事をしています。
たとえば、人身事故や自然災害でダイヤが乱れた場合、正常ダイヤに戻す(=これを運転整理といいます)のが仕事の一つです。
追い越しや行き違い駅の変更、発車順序の変更、運休、行先変更、番線変更など、いろいろなテクニックを駆使してダイヤを正常に戻します。

しかし、この運転整理という作業、将来的にはAIが代替するようになるはず。
指令員がやることは、AIが提案してきた内容を承認するだけで済むようになるでしょう。
そうなると、指令員の数を減らしても大丈夫なわけです。

いまの感覚で経営している会社は必ず行き詰まる


こんな感じで、生き残るために省力化・無人化を進めていくのが、これからの鉄道会社です。

こういう変革について来られず、いまの感覚で経営を続ける鉄道会社は、いずれ潰れるでしょう。
コロナ騒動による利用客減少で赤字にあえいだのと、同じような目に遭うわけです。
それは、JRであっても大手私鉄であってもです。

学生さんは今後、鉄道に関する技術的なニュースを見た際は、「省力化・無人化」というキーワードと結び付けて考えるようにしてみてください。
それがきっと、鉄道会社の将来像を予測するのに役立ちます。
いや、給与や人員の削減という、働く側にとってはイヤな面ばかりが見えてくるかもしれませんが……。

とにかく、現状のやり方を続けるだけの鉄道会社が行き詰まるのは、コロナ騒動で得た「利用客減少のシミュレーション」からも明白です。

特に、総合職の立場で入社する人は、新しいビジョンで会社を引っ張ってください。
また、私のような現場の一社員も、上層部のビジョンを共有するための勉強や柔軟性が必要です。
淡々と仕事をこなしていれば、安定を得られる時代は終わっています。

どうしても安定志向なら「都市特化型の鉄道」を狙う


……と厳しい話をしましたが、「イノベーション的なのはヤダ」とか「それでも俺は鉄道に安定性を求めているんじゃあ」と駄々をこねる学生さん向けに、一つだけアドバイス。

そういう人は、「都市特化型の鉄道」を狙ってください。

具体的には、五大都市圏(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)の都市部のみに路線を持つ鉄道。
こういう会社は、人口減少の影響が相対的に小さいので、それなりの安定性はあるはずです。

「五大都市圏のみに路線を持つ」という基準でいうと、JR旅客会社は、すべて当てはまりません。
どの会社もローカル線を持っているので。

「五大都市圏の、それも都市部しか走ってないって、そんな都合のいい鉄道があるか」と思うかもしれませんが、地下鉄や都市型第三セクター鉄道など、該当する鉄道は案外あります。
もっとも、この手の鉄道は、借金の金利や設備投資の負担が重くて財政難のケースも多く、「人口減少による利用客減」とは違うベクトルで経営の心配はありますが……。


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