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コロナウイルス対策Q&A 鉄道会社は○○をやらないの?

新型コロナウイルス騒動、まだまだ収まりそうにありませんね。ウチの会社でも、非現業職の社員(本社勤務者とか)については、時差出勤の検討がされています。

さて、みなさんの中には、「新型コロナ対策として、鉄道会社はこういう措置を行わないのか?」という疑問がある人もいるでしょう。ということで、私なりに、みなさんが疑問に感じそうなことを想定し、それに対する考察を書いてみました。

今回の目次は↓の通りです。

※注意
ここに書いたのは鉄道会社としての公式見解ではなく、私の個人的な意見ですので、その点はご注意ください。

Q1 こまめに車両を消毒できないか?

消毒はウイルス対策の基本です。そのため、「鉄道会社は、せめて車両の吊り革くらい消毒してほしい」という意見があると思います。たとえば、終着駅で折り返しをする際、消毒できないものか?

しかし、これは現実的には難しいです。

一般的な20m級の在来線車両って、1両にいくつ吊り革があるかご存知ですか? もちろん車両によって数は違いますが、100個は下らないと思ってください。仮に10両編成なら、優に1,000個以上です。

これだけの規模になると、“掛け算効果”がバカになりません。

まず、時間がかかります。
消毒を一人でやるとしたら、吊り革1,000個以上を消毒するのに5分やそこらでは終わらないでしょう。折り返し時間が過ぎて列車は発車してしまいます。

ということで数人体制での消毒が必須ですが、あちこちの場所で消毒が実施されるでしょうから、そうなると会社全体ではたして何人が必要になるのか? 臨時アルバイトを雇うにしても、採用業務や消毒作業の教育なども必要ですから、今日明日すぐに実行できるわけでもない。

また、消毒液が品薄のいま、作業に必要な分を確保できるのか? 10両分も消毒をしたら、一回の作業でリットル単位の消毒液を消費します。それだけバンバン使ったら、あっという間に在庫がなくなります。

で、それだけ頑張って消毒しても、またすぐに営業運転で車内には人が溢れます。

営業運転中にすべての車両を消毒なんてのは、絶対ムリとまでは言いませんが、現実的ではないということです。

せめて車庫に入って清掃するタイミングで消毒できればと思いますが、車両によっては、車庫に入らずに一日中走り続ける場合もあります。営業運転中に消毒するとしたら、そうした一日中車庫に入らない車両に絞るのが現実的なラインでしょう。

Q2 換気のために窓を開けて走行できないか?

感染防止のために、換気が重要なのはご存知でしょう。というわけで、車両の窓を開けて走行することはできないか? という意見もあります。

しかし、20年前ならいざ知らず、現在はそもそも窓が開かない車両も少なくありません。

また、窓が開く構造の車両でも、窓を開けて走行することは、トータルで考えるとプラスになるかどうかはわかりません。車内が寒くなったせいで風邪をひき、免疫力が低下でもしたら、ウイルスに感染・発症する危険も高まります。そうなったら本末転倒な感があります。

プラスマイナスがよくわからない以上、実行されるかどうかは疑問です。

後日追記
……と思っていたら、鉄道会社によっては普通に実行され始めましたね(^^;)

Q3 時差出勤対策として臨時列車増発はアリか?

現在、鉄道会社では国土交通省および厚生労働省の要請により、時差出勤やテレワークの推奨の呼び掛けをしています。すでにみなさんも、駅や車内放送で耳にしているはずです。

さて、鉄道会社としては、時差出勤する人が増えると、ダイヤを見直す必要が出てくるかもしれません。

というのも、一般的に通勤ラッシュ時間帯とされているのは7時~9時ですが、7時以前または9時以降は、ラッシュ時間帯よりも列車本数が少ないです。その列車本数が少ない時間帯に時差出勤の人が流れてくると、結局は車内が混雑してしまいます。それでは時差出勤の意味がない。

というわけで、7時以前または9時以降に、混雑緩和を目的とした臨時列車を増発することはアリだと思います。仮に実行するとしたら、旅客動向を調査しながらということになるので、今すぐどうこうの話ではないのですが。

Q4 感染拡大防止のために運休にしないのか?

鉄道の通勤ラッシュは、ウイルス感染の温床です。たくさんの人がすし詰めになり、列車を降りて広範囲に散らばっていく。

本気でウイルス感染拡大を防止しようと思えば、鉄道は止めたほうがいいのは間違いないです。そのため、「鉄道は計画運休も視野に入れるべきではないか?」という意見もあるでしょう。

しかし、前回の記事でも書きましたが、運休措置は一事業者だけがやっても意味がありません。一つの鉄道だけを止めたら、他の鉄道やバスに乗客が集中するだけです。

そのため、地域単位でまとまって運休にしなければならず、それには事業者間の連携が必要です。また、当然ながら鉄道が止まれば経済活動は混乱するので、事業者が自ら運休の決定を下すことはありえません。政府レベルの決定・指示で行われるべきものです。

今回の新型コロナのように、致死率がそれほど高くない感染症で、鉄道を止めるまでの措置はやらないでしょう。

仮に、致死率50%とかの強毒性ウイルスが出現したら、話は別でしょうが。ちなみにその場合、真っ先に止めるのは新幹線のはずです。「ウイルスは人の移動について回る」ですから、高速かつ広範囲に人を運ぶ新幹線を動かしていたら、あっという間に日本全国に感染が広がるので。

ウイルス感染は魔法ではない 正しい知識で予防を

結局、鉄道が運休にならず、運行を続ける限りは、有効な拡大防止策を講ずるのは難しいのが現実です。

最終的には、国民一人ひとりが正しい知識を持ってウイルスに対応していくしかありません。

私自身は医学のシロウトですが(鉄道マンですから)、身内に医療関係者がいるので、昔からウイルス感染についていろいろ教えてもらっています。そのおかげかどうかはわかりませんが、生まれてから一度もインフルエンザになったことはありません。予防接種も受験生のときに一度やったのみです。

ウイルス感染について教わったことを、私なりの言葉で整理し直すと、次のようになります。

ウイルス感染は魔法じゃない。そのへんから突然ウイルスが湧いてきて身体に入ってくるわけではない。必ず感染源があって、直接なり間接なり接触して感染する。
正しい知識と行動で感染ルートを断ち切れば、必要以上に恐れることはない。

飛沫感染・接触感染を防ぐために、具体的に行うべきことは、

・人混みに行かない
・手洗いとうがいの徹底
・マスクの着用
・目や鼻をうかつに手で触らない
・睡眠と食事をしっかりとる

テレビやネットでさんざん情報が流れていますから、みなさんもご存知だと思います。教科書でいえば、1ページ目に書いてあるような内容です。

しかし、この“基本のキ”を忠実に守り通すことがいかに難しいか……。

帰宅してからの手洗い・うがいを、ついついサボってしまう。
つい無意識のうちに目をこすったり、鼻をほじったりしてしまう。
スマホをいじって夜更かししてしまい、寝不足で仕事に行く。

みなさんにも心当たりがないでしょうか? そうやって隙を見せるとウイルスに捕まります。

結局、感染ルートを断ち切るためには、基本を忠実に守るしかないわけです。そのあたりは、鉄道の安全を守るために鉄道マンは基本動作を怠ってはいけない、というのと似ている気がしますね。

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