現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

コロナウイルスによる売上激減 鉄道会社が潰れることはある?

ウチの鉄道会社もコロナウイルス騒動のせいで業績急降下中……。

こんにちは、現役鉄道マンのKYSです。
コロナウイルス騒動、まだまだ長引きそうですね。
各鉄道会社で利用客が激減していますが、ウチの会社も例外ではありません。

現場の駅員や乗務員に話を聞いても、社内で公表される数字を見ても、前年比で30~40%くらいは客足が落ちている(=前年比で60~70%くらいしか利用客がいない)感じです。

これだけの業績低迷は今後もしばらく続きそうですが、ぶっちゃけ、鉄道会社は潰れたりしないのでしょうか?
大手の鉄道会社ならともかく、中小は大丈夫なのか?

「そりゃー常識的に考えて、鉄道会社が潰れることはないでしょ」というのがみなさんの感覚だと思います。
ただし、「ではなぜ潰れないかを説明しろ」と言われたら、なかなか難しいでしょう。
そこのところを理論的に解説するのが、今回の記事の趣旨です。

鉄道とは関係ない、会計や簿記みたいな話が混じってきますが、なるべく噛み砕いて書くよう努めます。

 

会社が潰れるか否かは「資金繰り」で決まる


まずは一般論から。
会社の潰れる・潰れないは、いったい何で決まるのでしょうか?

実は、赤字・黒字はあまり関係ありません。
会社の命運を分けるのは、「資金繰りがうまくいくかどうか」です。

赤字でも、資金繰りがうまくいって資金が回っている限りは、会社は潰れません。
黒字でも、資金繰りを誤って資金がショートした瞬間、会社は潰れます。
黒字倒産というやつです。

会社は「手持ちの現金」が尽きた時点で潰れる


そもそも、資金繰りとは何でしょうか?

会社は、業務を継続するうえで、いろいろな支払いが発生します。

・取引先への仕入れ代金
・従業員への給料
・銀行への返済や利子の支払い
・税金や社会保険料の納付

これらを支払うためには、「現金・預金」が必要です。

みなさんは財布に現金を入れていたり、銀行預金を持っていますよね。
それと同じように、会社にも手持ちの現金・預金があります。

もし会社の現金・預金が底をついて、これらの支払いができなかった場合、「残高が足りなくて決済できねえよ」という「不渡り」になります。
不渡りを出してしまった場合、会社は業務を続けることができず潰れてしまいます。

たとえ黒字決算でも、手持ちの現金・預金が少ないタイミングで、いろいろな支払い期限が一気にきてしまうと、現金・預金が枯渇してアウト、なんて事態になったりします。

したがって、会社を続けるためには、支払い原資である会社の手持ち現金・預金を枯渇させないこと。
現金・預金を枯渇させないために、支払いや入金のタイミングをコントロールすること。
これが資金繰りです。

「日銭商売」の鉄道業は資金繰りに強い


さて、ここからが本題。

実は鉄道業、資金繰りには強い業種なのです。
というのも、鉄道会社の場合、基本的に「売上が即現金化」するからです。

みなさんは列車に乗るとき、券売機に現金を入れて切符を買いますよね。
ICカードを利用するときも、事前に現金を支払ってチャージするはずです。

つまり、鉄道会社は毎日コツコツ現金収入があるため、手持ち現金が枯渇しにくいのです。
そのため、「いま手持ち現金がなくて〇〇の支払いができない!」という非常事態が発生しにくいわけです。

したがって、コロナウイルス騒動で業績が低迷しても、すぐに日々の支払いに窮することはありません。
支払いがキチンとできているのであれば、不渡りを出すこともないので、会社は潰れないという理屈です。

鉄道会社が不景気に強いのは、そういう構造的な強みがあるからです。

「入金待ち」のある・なしで資金繰りは大違い


これが、製品を作って出荷する工場とかだと、話が違ってきます。
こういう業種って、「月末締めの翌月払い」みたいに、売り上げたタイミングと、実際に現金が入ってくるタイミングがズレるのが一般的ですよね。
つまり「入金待ち」という状態があるわけで、その入金待ちの期間に大きな支払いが発生すると、資金繰りに窮することがあります。

鉄道業は売上が即現金化するため、「入金待ち」の状態がありません。
そこが鉄道業の長所です。

会計や簿記を勉強したことがある人は、「流動比率」という単語を聞いたことがあると思います。
流動比率とは「会社の短期的な安全性」、すなわち直近1年くらいで会社が潰れるか否かを判断するために使われたりする指標です。

実は鉄道会社、流動比率の数値が一般的に安全といわれるラインを下回っていても、問題ないケースが多いです。
「売上が即現金化」「入金待ちがない」という特徴が、会社の安全性を高めているのですね。

バス会社の経営が苦しいのはなぜ?


今回のコロナウイルス騒動で、バス会社が会社存続の危機に陥っている話をよく聞きます。
鉄道とバス、いってみれば“お隣”の業種ですから、鉄道会社が潰れにくいのであれば、バス会社も潰れにくいはず。
しかし実際には、危機に瀕しているバス会社が多いのはなぜでしょうか?

私はバス業界のことはよく知らないので、推測になりますが……

まず、単純に資金力の差があるのだと思います。

バス会社は鉄道会社に比べると数が多く、零細の会社も少なくありません。
そのため、鉄道会社よりも手持ち資金が乏しく、資金繰りが厳しいわけです。

そして、鉄道と違って売上が即現金化しない事情もあるかと思われます。

路線バスを経営するバス会社ならば、鉄道と同じように売上が即現金化するので、資金繰りにはまあまあ強いはずです。
問題は、路線バスではなく、バスツアーが売上の中心になっている会社。

バスツアーって、ツアーに参加したその場で、参加客がバス会社に代金を支払うわけではないですよね。
旅行会社がツアーを企画・販売し、参加客は旅行会社に代金を支払う。
そして、旅行会社とバス会社の間で精算を行い、ようやくバス会社は現金を得る。

いってみれば、バス会社は旅行会社の下請け的な位置付け。
たぶん、そういうケースが多いはずです。

バス会社と旅行会社の精算は、会社間でのやり取りですから、「月末締めの翌月払い」みたいな条件になっているのではないでしょうか。
つまり、ツアーバス会社は「売上が即現金化」しないわけで、資金繰りがラクな業種ではないのだと思います。
(あくまで私の推測です。間違っていたら申し訳ありません。ご存知の方がいらっしゃったら、教えてください)

もちろんこの他にも、バス会社同士の価格競争が激しいとか、旅行会社からの値下げ要求が厳しいとか、そういう事情で利益が圧迫されて経営が苦しい面もあるのでしょう。
鉄道会社には、そうした要素はありません。

こうして見ると、結局、鉄道とバスは似て非なる業種だと思います。