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コロナウイルス騒動 緊急事態宣言で鉄道の減便はある?

この時季の“風物詩”が今年は見られない……。

新年度になると、異動や入社・入学に伴い、通勤・通学に不慣れなお客様が増えます。
その影響で、列車の混雑や遅延が発生するのが“風物詩”なのですが、今年(2020年)はそれが見られない。

原因はおわかりですね?

そうです、コロナウイルス騒動による利用客大幅減少の影響です。

 

減便は混雑を誘発して感染リスクを増やす


2020(令和2)年4月7日、東京都などに「緊急事態宣言」が出されました。
緊急事態宣言が出され、市民の外出を抑制するという観点から、鉄道が減便されることはないのか?
これがみなさんの一番興味があるところでしょう。

あ、本記事内でいうところの「鉄道の減便」とは、「定期列車の運休」と定義します。
ゴールデンウィーク季などに臨時列車の増発を取りやめることは、減便とは解しませんのでご了承ください。

すでにメディアでも報じられている通り、鉄道各社は「現時点では減便の予定はない」としています。

ネット上でも大多数の人が同様の意見を述べていますが、下手に減便すると、かえって混雑が増すので感染のリスクが高まります。
時差通勤が奨励されていますが、これは満員電車が感染のリスクを高めることから、車内の混雑率を下げるのが目的です。
ですから、本数減により混雑が増してしまっては本末転倒です。

鉄道が動いていると分かれば、ほとんどの人が駅に向かうでしょう。
したがって、もし市民の外出を抑制したいのであれば、完全に列車を止めるしかありません。
台風のときの計画運休のように、です。

しかし、緊急事態宣言は「最低限の外出まで禁止するものではない」ということですので、列車をすべて止めるのはさすがに過剰対応です。

鉄道減便は交通事故での死者増を招くかも


また、鉄道が減便されると、「車で通勤しようか」と考える人が出てくるはずです。
しかし、現時点での数字から考えれば、「コロナウイルスで死亡する確率」よりも「交通事故で死亡する確率」の方が高いでしょう。

交通事故での死者数は年間3,000~4,000人。
鉄道が正常に動いていてこの数字ですから、鉄道が減便されて車通勤者が増えれば、死者数も増えるはずです。

人にはいろいろ事情があるので、単純に割り切れないところもあります。
が、あくまで確率論から考えれば、コロナウイルスで死ぬことを恐れて車通勤に切り替えることは、死ぬ確率を上げてしまうわけですね。
これも本末転倒です。

ということで、各社が「現時点では減便の予定はない」としているのは、妥当な判断です。

減便するとなったら手配が大変


さて、以上のような、どこでも読める一般論や建前論だけで終わってしまっては、当ブログの存在意義がありません。
ここからは本音の話をさせてもらいます(笑)

現場の最前線で働く鉄道マンとしては、「減便はメンドクサイから勘弁して」が正直な感想です。

仮に減便を行うことになったら、列車ダイヤをいじるのはもちろんですが、それに付随して、乗務員の乗務スケジュールである「乗務員運用」、車両の使用スケジュールである「車両運用」もいじらなければなりません。
そのためには、列車ダイヤを管理する指令、乗務員を管理する区所、車両を管理する車両区、こうした複数の部署で協議して計画を組み直す必要があります。
(実際に、台風の計画運休のときなんかでも、そういう作業をします)

鉄道というものは、ダイヤ・乗務員・車両が“三位一体”となって初めて動きます。
どれかをいじれば、他の要素にも影響が及びます。

「本数を減らすだけだから手配は簡単でしょ?」などと考えているとしたら、とんでもない話。
減便だろうが増便だろうが、列車ダイヤをいじるということは計画変更にほかならず、手配はクッソ大変です。

必要なのは、社内調整だけではありません。

緊急事態宣言が出された都道府県では、相互直通運転が当たり前のように行われています。
相互直通運転は、自社と他社の間で車両が相互に行き来します。
そのため、列車ダイヤや車両運用計画をちょっといじるだけでも、他社との調整が必要です。

そうしたメンドクサイ作業が、鉄道の安全に貢献したり、社会の役に立つというのなら、喜んで仕事をします。
それが仕事のやりがいですから。
しかし実際には、先にも述べたように、車内混雑を誘発したり交通事故の増加を招いたりといったデメリットばかりですから、まったくヤル気が出ませんね。

乗務員が感染したときの減便ダイヤを検討中


ただし、そのメンドクサイ作業をやらざるをえなくなる場面は、そのうちやってきます。

乗務員が感染した場合です。

乗務員が感染した場合、他の乗務員も“道連れ”で自宅待機になりますから、乗務員の頭数が足りなくなる。
そうなると、どうしても列車本数を減らさざるをえません。

いや、実際、各鉄道会社では、乗務員が感染した場合に備えての「間引きダイヤ」を検討中です。
あくまで水面下の動きなので、報道などはされていませんが、間違いありません。
ですから、メンドクサイ作業を「そのうちやらざるをえなくなる」ではなく、「すでに着手している」が正しいです。

現在のところ、駅員の感染例はありますが(JR東日本)、乗務員の感染例は1件もありません。
もしあれば、国交省(地方運輸局)から速攻で各社に通達が出されるはずですから。

人口 ÷ 感染者数という単純計算でいけば、感染者は約3万人に1人という割合です。
(日本の人口=約1億2,500万人 4月8日現在の感染者数=約4,000人)
ピンポイントで鉄道会社の乗務員が感染する確率は、そう高くありません。

しかし、それもいつまで持つか分かりません。
たぶん、そのうち穴が空きます。
というわけで、次回の記事では、鉄道会社の社員が感染した場合について、もう少し考えていきます。

続きの記事はこちら コロナウイルス騒動 感染者が出たら列車の運行が止まる「意外な部署」とは?


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