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乗務員は「本日の行動プラン」に従って乗務する ダイヤが乱れたときは?

列車の乗務員は、乗務列車を好き勝手選んでいるわけではなく、「本日の行動プラン」に従って動いています。

○○運転士の今日の仕事。最初はこの列車に乗り、どの駅で交代して何分休憩、次はこの列車を担当、宿泊場所はどの駅……という具合に、乗務員ごとの行動プランがあらかじめ存在するわけです。

しかし、何かの原因でダイヤが乱れると、このプラン通りには動けなくなります。今回の記事は、そんな事態が発生したときのお話です。

【用語説明】乗務員の所属基地「区所」

本題に入る前に、用語説明をさせてください。

乗務区・運転区・運輸区・列車区・運転所etc

会社によって呼び方は違いますが、これらの用語は、車掌・運転士の所属部署のことです。乗務員の所属基地といってもよいでしょう。列車の運転という業務を直接担当する、現場の最前線です。飲食チェーンならば、店舗の厨房やホールといったところでしょうか。

以下は区所と表記します。

大きな鉄道会社だと、この区所が複数存在します。A線を担当するA区所、B線を担当するB区所、という具合です。C線はA区所・B区所の共同で担当、ということもあります。

ようするに、乗務員は自社の全路線を担当するのではなく、自分の区所が受け持つ線区しか乗務しません。野球でポジションが決められているように、乗務員にも自分が担当する“守備範囲”があるわけです。

ダイヤが乱れると乗務員の「本日の行動プラン」が狂う

さて、ここからがダイヤ乱れの話です。

列車は、ダイヤ(運転時刻)を決めただけでは動けません。ダイヤに車両・乗務員を「割り当てる」ことで初めて走行が可能になります。ダイヤ・車両・乗務員は三位一体なのです。

この、列車ダイヤに車両・乗務員を割り当てることを運用と呼びます。冒頭で書いた、乗務員の「本日の行動プラン」も運用の一環です。

しかし、ダイヤが乱れると乗務員運用が狂います。人身事故で列車が駅に止まったまま動かなくて困った、なんて経験が一度はあるでしょう。ああいうときは乗務員も足止めを喰って、乗務員交代するはずの駅まで行けなくなったり、予定していた休憩時間が取れなくなったり、ということが起きます。

つまり、乗務員の「本日の行動プラン」が狂います。

乗務員運用が狂うと運用指令が修正作業を行う

このように運用が狂った場合、放置はできないので、元々の計画を現在の運行状況に応じて修正することが必要です。

……と書くと難しいな(^^;) シフト制の勤務で働いている人、誰かが急病で休んだら、穴埋めのためにシフト表が変更されますよね。ああいうイメージです。

ダイヤ乱れ時に一番避けなければいけないのが、「車両はあるけど乗務員がいなくて列車を動かせない」という事態です。これやっちゃうと最悪。運転士から、「俺は準備できたけど車掌がいねーよ!」とか連絡が入った暁にはアウトです。

ダイヤが乱れていても、全列車に乗務員がキチンと割り当てられている状態をキープしないといけません。この割当作業の中心になるのが運用指令です。
(→運用指令とは何ぞや? についてはこちらの記事

ダイヤが乱れた場合、列車を運休させる、終点まで行かず途中駅で折り返させる、などの手配を行います。これは列車担当指令が決めますが、その決定内容に基づき、運用指令はどの列車にどの乗務員を割り当てる(乗務させる)かを決めていくのです。

細かい「肉付け」作業は現場の区所が行う

ただし、この作業を運用指令だけで行うのは苦しすぎます。この列車には犬塚さん、こっちの列車は猿原さんにしようか。この列車には雉野さんを乗せて……。ああっと、本人たちにも伝達しなきゃ……なんて具合でやっていたらパンクします。

ここで先ほど説明した「区所」という用語の再登場。実際には運用指令は、乗務員基地たる区所と連絡を取りながら捌いていきます。

「A区所さーん、この列車はあなたの所の乗務員を乗せてね。B区所さーん、この列車はあなたの所が受け持って。細かい手配は任せるわ。穴が開かないようにヨロシク」

運用指令は状況に基づき「骨組み」だけを決め、具体的な「肉付け」は現場の区所にブン投げる。木と森の関係でいえば、運用指令が森全体を見て、個々の木は現場の区所が管理。そういうイメージです。

骨組みプランを受領した現場の区所は、担当列車に誰を割り当てるかを決め、本人に伝達するなど具体的な手配を行います。

運用指令と区所の作業バランスは鉄道会社によりけり

というわけで、運用指令と区所の連携プレーで、ダイヤ乱れに対応することを紹介しました。

ただし、今回の話が全部の鉄道会社に当てはまるわけではありません。運用指令と区所の作業バランス(?)と言いますか、お互いがどこまでの作業を担当するかは、会社ごとに異なります。運用指令がかなりの部分まで踏み込んで決定・手配することもあれば、区所が中心となって作業を行う会社もあります。

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