みなさんは、車で踏切を通過する際、ちゃんと一旦停止して安全確認をしていますか? 一旦停止はするけど、「踏切は鳴っていないから列車は来ていないだろう」という意識で、つまり、踏切進入前の安全確認が「形だけ」になっていませんか?
そういう人に、怖い情報をひとつ。「列車が接近しても警報機が鳴らず、遮断機も下りない」というトラブルがあることをご存知でしょうか。
「えっ、そんなヤバい事態が起きるの!?」と驚くかもしれませんが、実際、こういうトラブルは全国で毎年何件も起きています。
踏切の無警報・無遮断 ニュースになっていないだけ
列車が接近しても警報機が鳴らず、遮断機も下りない無警報・無遮断。相当ヤバい事象ですが、列車と車(または歩行者)が衝突する事故が実際に起きていないため、巷でニュースになっていないだけです。
まあ現実的には、そういう事故が起きる確率は相当低いでしょう。
- 踏切が正常動作しないときに
- 列車が接近してきて
- 車が踏切に進入
この3要素がタイミング悪く重なると事故になりますが、それはかなり稀なはずだからです。
ただし、それは事故が起きないという意味ではありません。大きな事故を分析すると、不運にも「たまたま」が何個も重なって発生したケースが少なくない。「たまたま」が何個も重なることは、実際にあるのです。
ですから、読者のみなさんが万が一のときに被害者にならないよう、注意喚起をするのが本記事の趣旨です。
踏切の無警報・無遮断はなぜ起きる? 3つの原因を解説
なぜ、無警報・無遮断のトラブルが発生するのか? 原因はいろいろあるのですが、典型的なパターンは以下の3つです。
- レールの錆
- 工事のミス
- 部品の劣化
① レールが錆びると踏切が正常動作しなくなる
まずは①レールの錆。
鉄道のレールは鉄でできていますから、列車が走らないまま長時間経つと、表面が錆びます。すると、錆のせいで踏切が正常動作しなくなることがあるのです。
どういうことか?
踏切とは、列車が近づいたら動作を開始し、通過したら動作を終了するようになっています。それはつまり、「列車がどこにいるか?」の位置情報が必要ということ。
その位置情報を検出するために使われるのが、軌道回路という仕組みです。話が難しくなるので端折りますが、レールが錆びていると、通電不良によって軌道回路がうまく働かず、したがって位置情報が検出されません。位置情報が検出されなければ、踏切が正常に動作しない。
こういう理屈です。
近年、台風時には計画運休が一般的になってきました。24時間以上、列車を止めてしまうことも珍しくありませんが、これくらい列車が通らないだけでも、案外簡単にレールは錆びます。そして、運転再開後に踏切の無警報・無遮断のトラブルが起きる……。
ですので、読者のみなさんにお伝えしたいのは、「台風後の踏切には注意」ということです。
② 夜間工事の終了後にスイッチを入れ忘れる
無警報・無遮断の原因、続いては②工事のミス。
鉄道では、さまざまな夜間工事が行われていますが、作業内容によっては、踏切を動作させてしまうものもあります。しかし、踏切がカンカン鳴りっぱなしのまま夜間工事を行うのはよくありません。うるさくて作業に差し支えますし、近所迷惑にもなります。
そこで、「踏切の警報を停止させる措置」をします。具体的には踏切のスイッチを切るのですが、工事終了後にスイッチを入れ忘れ(戻し忘れ)てしまい、始発列車が無警報・無遮断で通過する。これが典型的パターンです。
読者のみなさん、早朝に踏切を渡るときは注意しましょう。
③ 更新費用が確保できずに経年劣化で壊れる
最後に③部品の劣化を説明します。
踏切設備の部品が経年劣化し、正常動作しなくなることがあります。特に、地方の鉄道会社は財政的に苦しく、更新費用が確保できないので、長い間更新されないままというケースが少なくないようです。
「利益を出さなければ鉄道の安全は守れない」「カネの切れ目が安全の切れ目」が私の持論ですが、これなどまさしくその典型だと思います。
具体的な会社名は出しませんが、「踏切動作不良の常習犯」のような鉄道会社もあるんですよ。無警報・無遮断のトラブルは国土交通省から発表されるのですが、「この会社、またやらかしてる^^;」みたいな感じで。
①台風後 ②工事後と違って、③部品の劣化による無警報・無遮断は、いつ発生するかわかりません。ですので、踏切通過時は常に油断するべからず、と申し上げておきます。
踏切が無警報・無遮断でも運転士は気付かないかも
以上、踏切の無警報・無遮断が起きる原因を3つ説明しました。
(もちろん、他の原因もありますが)
そして実際に、無警報・無遮断で列車が通過してしまうこともあるのですが、その運転士に後から事情聴取しても、「踏切が動作していないことに気付かなかった」というケースが多いです。
もちろん、運転士の責務として、踏切がちゃんと動作しているかも注視しながら運転するべきではあります。しかし、運転中に通過する踏切の数は膨大ですし、「踏切はちゃんと動作しているのが前提」みたいな考えがあるので、どうしても意識的な確認が抜けがちになります。私も運転士経験者ですが、このへんの感覚は理解できます。
また、仮に踏切の無警報・無遮断に気付いて非常ブレーキを掛けても、踏切までに止まれるかはわかりません。
ですので、踏切が無警報・無遮断の場合に、列車がちゃんと止まってくれることは期待しない方がいいでしょう。「踏切を通過するドライバー頼み」のようになって申し訳ないのですが、踏切事故を防ぐためには、鉄道会社側だけではなく、車のドライバー側の注意力にも頼る部分が大きいのが現実です。