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趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

時間帯別運賃の課題① ダイヤが乱れたときはどうする?

JR東日本JR西日本が導入を検討している「時間帯別運賃」。
前回の記事では、「なぜ鉄道会社は時間帯別運賃を導入したいのか?」を説明しました。

鉄道会社が「時間帯別運賃」を導入したい理由とは?

コロナでの鉄道利用減や、少子高齢化・人口減少に伴い、鉄道会社の売上は継続的に下がっていく。
それを補うためには値上げが必要。
採算性の低いラッシュ時に時間帯別運賃を導入して、売上アップを図りたい。

前回の記事は、だいたいこのような内容でした。

さて、どんな仕組みでも新しく導入する際には、何らかの問題・課題が発生することが普通です。
時間帯別運賃の導入にあたっては、どのような問題が考えられるか?

私がパッと思いつくのは、「ダイヤが乱れたときに、時間帯別運賃をどう適用するのか?」という問題です。
今回の記事では、これを検証します。

 

本題に入る前に 用語や設定の説明


問題を検証する前に、記事内で使用する用語や設定を定義しておきます。

① ラッシュ時間帯・閑散時間帯の設定


本記事では、ラッシュ時間帯閑散時間帯の区切りを↓のようにします。

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記事内での例え話などは、すべてこの時間帯区分によって進めます。
ご了承ください。

②「ラッシュ時間帯に値上げ」の方針で


さて、一口に時間帯別運賃といっても、考え方は二つあります。
「ラッシュ時間帯に値上げする」か「閑散時間帯に値下げするか」です。

時間帯別運賃の目的は、値上げして鉄道会社の売上をアップさせることです。
そのため本記事では、「ラッシュ時間帯に値上げ」の方向で話を進めますね。

同じ時間帯別運賃でも、「閑散時間帯に値下げ」は売上ダウンになるので、ここでは検証しません。
また、「閑散時間帯に利用したらポイント付与」というのも、実質的な値下げですので、取り上げません。

③ 割増運賃と通常運賃


ラッシュ時間帯に通常よりも多くとられる運賃を「割増運賃」、閑散時間帯の運賃を「通常運賃」と呼ぶことにします。

用語や設定の定義は以上です。

ダイヤが乱れて列車が遅れた場合はどうする?


時間帯別運賃の制度を運用していくには、ICカードの活用が必須です。
ICカードを自動改札機にタッチした際、「改札に入った時刻」または「改札から出た時刻」を読み取り、ラッシュ時間帯の利用だったら、割増運賃を引き落とす。

おそらく、こういう仕組みになるでしょう。

このような仕組みでは、次のようなケースで問題になると予想されます。

乗車中に列車が遅延し改札を出るのが遅れたケース


たとえば、みなさんは16時に改札に入って列車に乗りました。
目的地までは10分ほど。
割増が始まる17時までには改札を出られますよね。

ところが……

「この先の駅で人身事故が発生したため、列車の運転を見合わせます」

しばらくして運転が再開されましたが、列車が遅れたせいで、改札を出たときには17時を過ぎていました。
そのため、ICカードを改札機にタッチしたら、割増運賃が引き落とされた。

これ、納得できます?

「人身事故じゃあ仕方ないなぁ」と思った人、運転見合わせの原因が信号機故障や車両故障だったら?
絶対納得できないですよね。

駅に行ったら運転見合わせ中だったケース


出場時刻(17時過ぎ)を割増運賃適用の判定基準にするからいけない。
だったら、入場時刻の16時を判定基準にすればよいのでは?

しかし、それでもダメなケースが出てきます。

みなさんは16時の列車に乗るため、駅に行きました。
本来なら、割増運賃を払わなくてもよい時間帯ですよね。
ところが……

「車両故障により、列車の運転を見合わせています」

運転再開がいつになるか分からないので、改札内に入るのは躊躇われました。
結局、運転が再開されたのは17時過ぎ。
そこから改札内に入ったため、割増運賃を取られました。

「本当だったら通常運賃で乗れたのに……これって絶対おかしい」と思いますよね。

解決策の案① 精算窓口で駅員が処理する


結局、改札の入場時刻・出場時刻、どちらを割増運賃の判定基準にしても、ダイヤが乱れれば問題になります。

で、「このような問題が予想されるので検討が必要。以上」で終わっては、無責任記事ですよね(笑)
当ブログでは、私なりに解決策も考えます。

まず思いつくのが、ダイヤが乱れた場合、自動改札機にタッチして出入りするのではなく、駅員に申し出て、精算窓口でICカードを処理してもらう方法。
駅員は精算窓口にて、ICカードから割増運賃ではなく通常運賃を引き落とす、というわけ。

しかし、この方法では窓口にお客様が殺到するでしょうから、駅員の負担が大きすぎます。
また、近年は無人駅が増加していますから、そもそも駅員がいないケースも多い。

というわけで、この解決策はあまり現実的ではないです。

解決策の案② ダイヤが乱れたら改札機の設定を変える


他の解決策を考えましょう。

ダイヤが乱れたときには、時間帯別運賃をやめてしまうという方法があります。

具体的には、ダイヤが乱れたら指令員が各駅に「割増運賃はやめ」と指示を出す。
指示を受けた駅員は、自動改札機の設定を変更して、7~9時・17~19時を「割増運賃の時間帯」ではなく「通常運賃の時間帯」にする。
そうすれば、自動改札機で出入りする場合に通常運賃で処理される、という具合です。

ただ……この解決策も100%ではありません。
「ダイヤが乱れた」をどう定義するかが難しいです。

たとえば、3~4分の遅れはダイヤの乱れと扱ってよいのか?
3~4分の遅れでも、割増の時間帯になる・ならないが違ってくるケースがあるでしょう。
これはもう、どこかで「遅延とは〇分以上」と線を引くしかないでしょうね。

時間帯別運賃には、こういう問題があります。
これを解決していくことが必要です。

今回の記事はここまでです。
次回は別の問題を検証してみます。
テーマは、「ICカードではなく紙のキップで乗車する場合は?」です。

続きの記事はこちら 時間帯別運賃の課題② 紙のきっぷはどうする?


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