鉄道業界志望の学生にとっては、苦しい就活戦線になりそうです。
3月になり、いよいよ就活モードになってきましたが、JR各社は新卒採用(2022年4月入社)の抑制を次々に発表しています。具体的には、以下のどちらかです。
- 採用数を削減
- そもそも採用自体を行わない
JR各社の採用計画はどうなっている?
どの鉄道会社もコロナ禍で業績を落としている現状では、人件費の負担が重くのしかかっています。また、コロナが終息しても、以前のような需要は戻らないのでは。そうした予想が、新卒採用の抑制という形で現れています。
JR各社が発表している採用計画を、簡単にまとめたのが↓の表です。
(いわゆる総合職は除き、現業職のみの数字。以下同様)
JR東日本 採用数ほぼ半減
もう少し詳しく各社の数字等を見ていきます。まず、JR東日本。
以前は1,600人程度の採用だったのが、昨年度は1,270人。そして今回の採用予定数は640人。一気に半減しました。
しかもこれは中途採用も含む数字ですから、新卒枠は400人程度ではないでしょうか。JR東日本といえば、昔から新卒だけで毎年1,000人以上採用していましたから、コトの深刻さが窺えます。
JR東海 採用数の削減は約2割でとどまっている
続いてJR東海。東海道新幹線の需要がガクッと落ち込み、もっとも苦しい鉄道会社といえますが、採用減は約2割にとどまっています。
以前の中間決算発表時に、「2021年度以降は黒字を見込んでいる」と見通しを示していましたが、採用を2割減でとどめていることからも、ある程度先行きに自信があるのでしょう。
JR西日本 運輸現業職の採用なし
対して、非常に苦しいのがJR西日本。なんと今回、運輸現業職(駅員→乗務員コース)の採用なし! 現業職は、技術系のみ採用するとのことです。
JR九州 すべての新卒採用を中止
しかし、JR西日本はまだマシです。衝撃的なのがJR九州で、すべての新卒採用を中止と発表しました。
うーん、せめて総合職だけでも採れないものか? いわゆる兵隊は後でも補充が効きますが、指揮官はすぐには育てられないので、採用を控えると、将来に大きなツケを残すことになってしまいます。
まあ、そんなことは私が言わずとも、当のJR九州が一番わかっているでしょうが……。
JR貨物は元気 昨年と同程度の採用数
苦しい会社が多い中で、唯一元気なのがJR貨物。前年度と同じ数の採用を予定しています。他のJRが採用を絞るので、“あぶれた”優秀な学生をゲットできるチャンスと考えることもできます。
JR貨物も業績が落ち込んではいますが、旅客会社に比べればダメージは小さいです。モーダルシフトの推進や、宅配便を代表とする「積合せ貨物」の需要が伸びており、もしかすると将来は「最強のJR」になるかもしれません。
「JRに入りたかったのに……」と嘆いている学生さんへ
以上、JR各社の採用計画動向をザッと紹介しました。ここからは、「JRに入りたかったのに……」とガッカリしている学生さんは、具体的にどうすべきか? という話。
会社にこだわらず鉄道の仕事に就きたい場合 ⇒ 中小にも目を向ける
まず、「JRや大手じゃなくてもいい。とにかく鉄道の仕事に就きたい」と思っている学生さんへ。
JRが採用を絞っている状況ですから、中小鉄道会社にも目を向けましょう。「大手病」にかかっている学生は、あっという間に“全滅”する可能性が高い。
ただし、中小鉄道会社はもともとの採用絶対数が少ないうえに、今年は大手の採用に“あぶれた”学生が流れ込んでくるでしょうから、競争率は例年以上になるでしょうが……。
あくまでもJRにこだわる場合 ⇒ 他業種に進んで中途採用を待つ
そして、「中小はヤダ。入るならJRじゃないと」と思っている学生さん。
もしJRの採用試験に落ちたら、中小鉄道会社には入らず、ひとまず他業種へ進んでください。そして後年、中途採用でJRに入るルートを考えてください。
(もっとも、中途採用を実施してくれる保証はないですけど……)
というのは、業界の慣習(?)として、「中小鉄道→ 大手鉄道」という転職はほぼ不可能だからです。したがって、いったん中小鉄道会社に入ったら、それはJRを含め大手鉄道会社には入れなくなることを意味します。「中小鉄道会社に入っても、あとでJRに転職できるでしょ」と思っていると、泣くことになるので要注意。
ちなみに、私の知り合いにも、新卒時に希望の大手鉄道会社に入れなかったことから、後年の中途採用狙いで他業種に進んだ人がいます。ところが、その仕事がおもしろくなり、鉄道会社に転職する気がなくなってしまったという……(笑)
まあそういうこともあるので、「何が幸いするかわからないから、希望の会社に入れなくても、内定を貰った会社でとりあえず頑張ってみ?」ということは、社会人の先輩として学生さんにアドバイスしたいですね。
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