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JR東海 2020年4~6月は数百億円の赤字 今後の業績予測は?

JR東海、2020年4~6月の第一四半期決算を発表。コロナによる利用客大幅減の影響で、昨年同時期に比べて運輸収入は5分の1以下に落ち込む。営業損益(単体)は734億円の赤字、経常損益(単体)では918億円の赤字。

2020(令和2)年7月31日、JR東海が今年度の第一四半期決算を発表しました。予想はしていましたが、これはキツい。屋台骨の東海道新幹線が、コロナの影響をモロに受けたのが痛すぎました。

今回の記事では、この数字を検証します。また、併せて今後の予想もしてみます。

4~6月の新幹線売上はたったの550億円! 目標値の17%

まず、売上の大部分を生み出す東海道新幹線に絞って数字を見ていきます。在来線や関連事業の数字は含みませんので、ご注意ください。

資料によると、4~6月の東海道新幹線の売上合計は、約550億円です。

この数字がいかにヤバいか、おわかりでしょうか?

東海道新幹線の売上は、年間約1兆3,000億円です(2018年度実績)。単純に12ヶ月で割ると、一月あたり約1,083億円。

もちろん、時季によって利用者の多い少ないがあります。GWやお盆、年末年始の多客期は、月1,100億円以上の売上があるのでしょう。

単純計算では、3ヶ月で3,200億円くらいの売上がなければいけません。それが550億円しかなかった……。比率でいえば、目標値に対して約17%。コロナでいかに大ダメージを受けたか、理解していただけると思います。

4~6月の月ごとの売上は?

この調子でいくと、今年(2020年)度の業績はどうなってしまうのか? あくまで個人的な予想ですが、検証してみます。

4~6月の数字を今後の予想材料にするわけですが、4~6月の一括りで考えず、一ヶ月ごとに分解して考える必要があります。緊急事態宣言が出ていた4・5月と、宣言が解除された6月では、旅客動向が違うからです。

報道によると、東海道新幹線の利用者の減少は、昨年比で↓の通り。

利用者減少率4月 85~90%減
5月 91%減
6月 72%減

4・5月は同じような数字で、ともにガタガタ。6月はやや回復の兆しが見えます。

さて、先ほど書いたように、4~6月の東海道新幹線の売上は約550億円。諸々の数字から推測すると、売上の「内訳」は、だいたい↓のような感じではないでしょうか。

売上予想4月 80億円
5月 70億円
6月 400億円

私、4月に投稿した記事で、「4月の新幹線の売上は50億円くらいでは?」と書きましたが、どうやら大きく外れたみたいです(^^;)「定期外旅客」の減少幅を大きく見積もりすぎました。今回も違ったら恥ずかしいですが、↑で出した「80億+70億+400億」という予想は、発表された諸々の数字から考えれば、それほど大きく外していないはずです。

今年度の東海道新幹線の売上着地点は?

で、考察の基準にしたいのが、6月の400億円という数字。

今後、コロナによる旅客動向がどのようになっていくか、予想は難しいです。予想できるのは、昨年と同程度の月間売上に戻る「劇的な回復」はないだろう、ということくらいです。

毎月40億円くらい売上がジワジワ回復していけば、最終的な売上は、6,000億円くらいまでいきそうです。

6月と変わらない数字が年度末まで続けば、4,000億円くらいが着地点でしょうか。

再び緊急事態宣言が出され、4・5月と同じような落ち込みがあれば、3,000億円に届かないかもしれません。

私の勝手な予想としては、緊急事態宣言の再発令がなければ、5,500億円くらいが着地点と考えます。どうだろう、甘い予測かなあ……。

これ以上傷が大きくなる可能性は低いと予想

仮に、東海道新幹線の売上が5,500億円でフィニッシュしたとします。これに在来線や関連事業の売上を加えると、トータルの売上(単体)は6,500億円くらいになるのではないでしょうか。

あとは、どれくらい費用がかかるか。

費用(営業費用)は、昨年度が約8,000億円、その前が約7,800億円。経費削減に努めるでしょうから、仮に7,500億円という数字で計算すると、

6,500億円 - 7,500億円 = 1,000億円の赤字(営業赤字)

冒頭で、「第一四半期だけで734億円の営業赤字」と書きましたが、東海道新幹線の売上が回復してくれれば、さらに傷口が大きく開くことはなさそうです。

ただし、ここからさらに「営業外費用」として借金の金利など数百億円を支払う必要があるので、最終的には2,000億円近い赤字(経常赤字)になるのではないでしょうか。

仮に決算がこの数字だとして、どう解釈するかは人によって異なるでしょう。「コロナの影響のわりに頑張った」と見るか、「いやいや、もっと経営努力をして赤字を圧縮するべきだった」と見るか。

JR東日本は人件費削減で夏ボーナスを減額した

たとえば株主目線だと、JR東日本などに比べて、JR東海はまだ危機感が足りないと思われても仕方のない部分があります。

JR東日本の第一四半期決算の資料を見たところ、人件費のところに賞与減の記載がありました。第一四半期の人件費、昨年は1133億円、今年は980億円。約14%!も減っています。

JR東日本も列車本数を削減したため、休日労働や残業、深夜割増、はたまた乗務手当などの支払い額が減ったのでしょう。ただ、それだけで人件費14%減という数字は出ないはず。もしかすると、JR東日本の社員は、夏のボーナスが10万円以上減ったのかもしれません。

対して、JR東海の決算書には、こういった動きがないです。

JR東海の第一四半期の人件費ですが、昨年は450億円、今年は444億円。6億円(=1.4%)ほど減っていますが、先ほど述べたような、列車本数削減に伴う休日労働・残業・深夜割増・乗務手当の減少だと思われます。

「もしかすると夏のボーナス支給は7月以降で、まだ支払われていないだけ?」と思って調べましたが、「賞与引当金」という項目の数字を見ると、ちゃんと減っています。数字の処理も、昨年と同じような感じです。

総合的に推測すると、JR東海では、夏のボーナスが満額出た可能性が高いかと……。

また、JR東海は、もともと社員の給料が高いです。「人件費 ÷ 社員数」という単純計算をしても、JR東海の数字は、他のJRグループの数字を大幅に上回っています。

このあたりの事情は、株主からすれば、「コロナで大赤字なのに大丈夫か?」という話になるかもしれません。

個人的には夏ボーナスの満額支給を支持

ただ、これは株主目線での話。
当然、他の見方もあるでしょう。

給与が削減されれば、「ウチの会社は大丈夫か?」と社員は動揺します。仕事へのモチベーションが低下したり、離職を招いたりする可能性も。長い目で見れば、そういうマイナスの方が大きいかもしれません。

また、夏ボーナスの減額は、労働組合と交渉する時間も少なかったはず。夏以降、コロナが終息して業績が回復する可能性もゼロではありません。

ですから、ボーナスを減額するにしても、夏はそのままにし、冬の方で調整する考え方はあります。個人的には、夏ボーナスの満額支給はアリだと思います。

今後、コロナでの売上減が収まらなかったときに、冬ボーナスまで満額だったら、さすがに「おい」と思いますが。

コスト削減と給与の維持をどうバランスさせるかは、経営的な判断。鉄道業に限りませんが、経営者は日々難しい判断を迫られているはず。その苦悩がいかほどのものか、計り知れません。早くコロナ騒動が終息することを祈るばかりです。

続きの記事はこちら JR東海 2020年度上半期は1,000億円以上の赤字

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