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節電のためにも駆け込み乗車はやめるべし! 電車の消費電力量はどれくらい?

 節電

近年の重要キーワードです。「節電要請 協力しない企業は罰則も」「電力不足解消のために原発再稼働」なんてニュースを目にした人も多いでしょう。そういうニュースを見ると、具体的な内容はわからなくても、なんとなく「節電しなきゃな~」という気になるのではないでしょうか。

さて、そういう人へ、鉄道マンの私からお願い。

駆け込み乗車はやめましょう
節電にご協力を

発車が遅れれば速度を上げて電気を余分に喰う

節電のために駆け込み乗車はやめろ??? 意味が分からないと思いますが、簡単に言うと、次のようになります。

駆け込み乗車によって発車が遅れる
→遅れを取り戻すために、運転速度が高めになる
→余分に電気を消費する

こう説明すれば、納得していただけるのではないでしょうか。

ここで気になるのが、「駆け込み乗車で発車を遅らせると、どれだけ余分に電気を喰うか」という点。もっと言うと、電車というマシーンは、どれだけ多くの電気を消費しているのか?

先に結論を言ってしまうと、電車は一駅運転するだけで、家庭で使う一日分ほどの電気を喰うモンスターです。そのあたりを、理科の知識も交えて説明するのが今回の記事です。

【基本知識1】電気をどれだけ使ったかを表す「消費電力量」

まずは理科の基礎知識から。苦手な人にも理解できるよう、できるだけ噛み砕いて書くので安心してください。

今回のテーマは「電気をどれだけ使ったか?」ですが、それは消費電力量(ワットアワー・Wh)という単位で表します。たとえば、我が家の毎月の消費電力量は、約30万Whです。

ちょっと数字がデカすぎるので単位を変換して表示すると、30万Wh = 300kWh。1000倍を意味するk(キロ)を使いました。そして……

  • 一月の消費電力量 → 300kWh
  • 一日の消費電力量 → 10kWh

こうなりますね。調べたところ、これは日本の平均的な数値みたいです。

消費電力量の計算式は↓の通り。

消費電力 × 使った時間 = 消費電力量

たとえば、消費電力500W(ワット)の電子レンジ。これを1時間使い続けたら、消費電力量は 500W × 1時間(h) = 500Wh(ワットアワー) になります。

「消費電力と消費電力量? 何が違うの?」と思った人、お風呂に水を溜めるシーンを想像してください。

蛇口から水が出て、どんどん浴槽に溜まっていきます。このとき、「蛇口からどれくらいの勢いで水が出ているか?」と「浴槽にどれだけ水が溜まったか?」は別ですよね。

「蛇口からどれくらいの勢いで水が出ているか?」に相当するのが消費電力。対して、「浴槽にどれだけ水が溜まったか?」が消費電力量です。

消費電力 × 使った時間 = 消費電力量

電気料金は、消費電力量すなわち「どれだけの量の電気を使ったか?」によって決まります。お風呂の例でいえば、「浴槽にどれだけ水を溜めたか?」で決まるわけ。

今度、電力会社から電気料金のお知らせが来たら、きちんと眺めてみてください。電気の使用量にはWh(正確には1000倍変換するkWh)という文字がついているはずです。

【基礎知識2】エネルギーの単位・ジュール

家庭での消費電力量の数字を出しましたが、それでは、電車はどれだけの電気を消費するのかっ? ……と勢い込んだところで、みなさんにお詫びを。

計算できません

電車の消費電力量。これは計算が複雑すぎて、とても私の手には負えないです(^^;) 申し訳ない。

ただ、「計算できない = まったくわからない」というわけではなく、ある程度は推測できます。ちょっと違うアプローチで考えてみましょう。

電車が線路上をガタンガタンと走っている。このとき電車は動いているわけですから、運動エネルギーを持っていることになります。

では、この運動エネルギーはどこから来たのか? エネルギーが突然湧いて電車に与えられたのではなく、供給元があるはずですよね。

それが架線から受け取った電気エネルギーです。架線から受け取った電気エネルギーを運動エネルギーに変換することで、電車は走っているのです。
(電気エネルギーを運動エネルギーに変換する装置がモーター)

エネルギーには、さまざまな種類があります。運動エネルギー、電気エネルギー、熱エネルギー、音エネルギー……。しかし、これらは形は違えど、本質的にはすべて同じものです。

同じものなので、同じ単位で表すことができます。それがジュール(J)です。ジュールというエネルギーの単位、久しぶりに聞いたわ~という方も多いでしょう(笑)

運動エネルギーから消費電力量を推測する

さあ、ここからが本題です。

先ほど、「電車は電気エネルギーを運動エネルギーに変換して走っている」と書きました。電気エネルギーと運動エネルギーは本質的に同じですから、電車が持つ運動エネルギーの値がわかれば、それを電気エネルギーに換算 → どれだけ電気を使ったか推測できる、というアプローチです。

10両編成の電車(1両30トン×10両=300トン)が72㎞/hで走っているとします。このとき、編成全体が持つ運動エネルギーは6,000万ジュールです。

運動エネルギーを求める式は↓の通り。

1/2 × 重さ㎏ × 秒速(m/s)の2乗

電車10両・300トンを㎏に直すと30万㎏、72㎞/hは秒速に直すと20m/sです。これを式に当てはめると……

1/2 × 30万 × (20×20) = 6,000万ジュール

この6,000万ジュールの「出資元」は架線からの電気エネルギーですね。6,000万ジュールとは、消費電力量(ワットアワー・Wh)に変換すると16.7kWhです。

ジュールと消費電力量の換算式は↓の通り。

1kWh = 360万ジュール

360万ジュール = 1kWh ということは、6,000万ジュール = 16.7kWh ですね。このサイトがわかりやすいので、興味がある人はどうぞ。

つまり、16.7kWhの電気を変換して、6,000万ジュールの運動エネルギーを生み出し、10両編成の電車を72㎞/hで走らせることができるのです。もちろん、駅に停まればまた動かすためにエネルギーが必要で、ようは停車・発車を繰り返すたびに十数kWhの電気を喰います。

これはかなり大雑把に考えているので、正確な数字ではありません。ただ、大筋としては間違っていないはずで、いわゆる「ケタ間違い」は生じていないと思います。

なお、ここでは「10両編成が72km/hで走っている」という条件で計算しましたが、両数が少ないとか、もっとスピードが遅いとかなら、エネルギーが少なくて済むのはおわかりですね。

駆け込み乗車でどれだけの電気がムダになるのか?

ここまでの話をまとめますと、

  • 電車が一駅運転して喰う電力量 → 十数kWh
  • 家庭での一日の消費電力量 → 10kWh

家庭での消費量と比べることで、電車がどれくらい電気を喰うのか、イメージが湧いたと思います。

ここで話を戻しましょう。そもそも「駆け込み乗車は節電の妨げになる」というテーマでした。駆け込み乗車により発車が遅れ、それを取り戻すために、少し高めの速度──通常72㎞/hのところ、80㎞/hで電車を運転したとします。

  • 72㎞/h → 6000万ジュール → 16.7kWh
  • 80㎞/h → 7400万ジュール → 20.5kWh

4kWhほど余分に電気を使うハメになりました。これは、500Wの電子レンジを8時間連続で動かすのに相当します。家庭目線だと、ありえないムダ使いです。駆け込み乗車でちょっと発車を遅らせるだけで、こうなります。

とまあ、いろいろ数字を出して難しく書きましたが、細かい話はどうでもいいです。知ってほしいのは、「電車はバカみたいに電気を喰う」という一点だけです。

あれだけ大きな物体を動かしていますから、電気を喰うのは当然。そこから少し想像を働かせて、「駆け込みをしたら遅れる → 回復運転で余計な電気を使う」との考えに至ってほしいですね。

こまめに電灯を消すとか、エアコンの設定温度を少し上げるとか、そういう節電も必要でしょう。しかし、頑張って細かい節電をしても、駆け込み乗車一発で全部帳消しになることは知っておいてください。

「駆け込み乗車はおやめください」に効果を持たせるには?

あとは余談。読み疲れていない人だけどうぞ。

「駆け込み乗車はおやめください」とは定番のセリフですが、大多数の人にとっては、もはや右から左でしょう。この言葉に実効性を持たせるには、どうすればいいか?

日本人は、周りに迷惑をかけることを極端に恐れる民族です。そこに着目すると、「駆け込み乗車は危険なのでおやめください」よりも、「駆け込み乗車は発車が遅れ、他のお客様への迷惑になります」といったアプローチの方が有効だと思います。

「駆け込み乗車は危険です」だと、「自分が危険な目に遭うだけで、他人を巻き込んでないから別にいーじゃん」という理屈になり、効果が薄そうですね。

なお、「駆け込み乗車は発車が遅れてうんぬん」のアナウンスは実際に存在するので、聞いたことのある人も少なくないでしょう。

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