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新幹線貨物の弱点 荷主側の需要にマッチしにくい部分も

前回の記事は、「リニアが開業したら東海道に新幹線貨物を走らせてほしい」という内容でした。
新幹線を利用した物流は、最近ようやく注目を集め始めています。
JR東日本でも近年、新幹線を使った海産物などの輸送実験を行なっています。

が、あくまで私個人の印象ですが、「旅客輸送のついで」「空きスペースの有効活用」という副業的な雰囲気が強い。
「貨物新幹線」ではなく「荷物新幹線」の域を出ないと思います。

こういう形では、本格的な貨物輸送は実現しないでしょう。
そうではなく、将来的には在来線貨物列車のように、貨物だけを運べる専用車両を開発・導入すべきと考えます。

 

新幹線貨物は利点が多いが課題・弱点も多い


もちろん、新幹線貨物の実現には、いろいろ障壁があります。
まあ新しい取り組みですから、問題が出てくるのは当たり前ですが……。
というか、問題がなければ、すでに実現されているはず(笑)

新幹線貨物には、どのような課題や弱点があるでしょうか?
本記事では、ひとまず二つ挙げてみます。

弱点① 東京~大阪間の直通輸送に限られ小回りが利かない


まず考えられる新幹線貨物の弱点は、小回りが利かないこと。

東海道に新幹線貨物を走らせる場合、中間に貨物駅を設けることは難しいはずなので、東京~大阪という区間に限定した輸送手段になります。
つまり、対応できるのは「東京~大阪の直通需要」に限定され、やや大味な面は否めません。
小回りが利かないとは、そういう意味です。

この点、在来線貨物だと、いろいろと小回りを利かせられる手段があります。

たとえば、東京~大阪を走る列車だと、途中の静岡貨物岐阜貨物で停車して積み下ろしをする列車もあります。
途中の需要を細かく拾えるわけです。
(あまり細かく拾うと所要時間が増加して、逆に荷主離れを招きますが)

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東海道筋の主な貨物取扱駅


それから、東海道筋でいえば、途中の名古屋も便利なポイントです。
一例ですが、名古屋から大阪に荷物を運びたい場合、直通列車以外にも、

  1. まず、名古屋貨物 → 岐阜貨物の区間列車に荷物を載せる
  2. 岐阜貨物で荷物を下ろし、東京 → 大阪を走る列車に載せ替える


こういうワザが使えます。
ようするに在来線貨物は、「さまざまな行き先の列車」と「点在する貨物ターミナル」を組み合わせることで、輸送ネットワークに小回りが利かせられるわけ。

新幹線貨物は、「東京~大阪間の直通列車」と「貨物ターミナルは東京・大阪のみ」という組み合わせですから、在来線貨物に比べて小回りが利きにくいはず。
小回りが利かないとなると、需要にじゅうぶんマッチできるか微妙かもしれません。

まあ、これは新幹線貨物という手段の欠点というより、東京~大阪の直通体系に限定される点がいけないわけですが……。
将来的に新幹線貨物が山陽・九州方面にも拡大してくれれば、多少の不利は帳消しにできると思います。

弱点② 夜間の輸送需要にマッチしにくい


新幹線貨物の弱点その2は、夜間の輸送需要にマッチしにくいこと。

順に説明しましょう。
まず、貨物輸送は「夜に出発 → 朝に到着」が理想です。
これは、工場などをイメージすると理解しやすいです。

  1. 日中に生産活動を行う 
  2. 生産したモノは、夕方くらいに貨物ターミナルへ送る
  3. モノを積んだ貨物列車が夜に出発
  4. 朝に目的地へ到着
  5. 午前中に配達


ようするに、「夜に出発 → 朝に到着」の形だと、企業の活動時間にマッチしやすいので都合がいいわけ。
在来線貨物が夜中に多く走っているのは、もちろん旅客列車がいなくてダイヤが組みやすいこともありますが、こうした企業側の需要もあるためです。

ところが、新幹線は24~6時までは保守時間帯のため、列車が走れません。
したがって、新幹線貨物は「夜に出発 → 朝に到着」という夜間需要に対応しにくいです。

仮に24~6時の時間帯に新幹線貨物を走らせるのが可能としても、これはこれで問題があります。

たとえば、東京23時発の新幹線貨物が、2時に大阪へ到着したとします。
しかし、荷物を受け取る側からすれば、そんな夜中に持ってこられても……というケースもあるでしょう。
仮に配達を朝まで待つとしたら、新幹線で高速輸送した意味がありません。
在来線貨物やトラックで十分、という話になってしまいます。

ヘンな話ですが、「速すぎるがゆえにメリットを発揮できない」のです。
うーむ、切ない。

このように、荷物を送る・受け取る側の都合、また、貨物列車の前後の輸送を行うトラックと連携する都合もあり、「貨物列車は速いほど便利」とは言い切れないケースもあります。

「速すぎてメリットが発揮できない」のは距離が短いから


もっとも、「速すぎてうんぬん」の話は、東京~大阪の距離が短いから。
これがもっと長距離、たとえば東京~福岡なら話は違います。

東京~福岡間は、在来線貨物だと所要時間が20時間前後。
新幹線貨物なら6~7時間で着くはずです。
深夜時間帯の走行が可能なら、「夜に出発 → 朝に到着」の形が作れます。
ですから、新幹線貨物が長距離を走るなら、強みを発揮できる場面が多くなるはずです。

朝穫れ野菜や海産物を輸送するなら新幹線は有効


それから、JR東日本が実験的に行なっている新幹線物流ですが、これも「速すぎて逆に困る」というケースは発生しにくそうです。

JR東日本の取り組みは、「朝穫れの野菜や海産物を、日中のうちに店舗に届ける」というもの。
これは「朝に出発 → 昼・夕方に到着」でも問題ない形で、なおかつ「速ければ速いほどよい」ケースなので、新幹線輸送は絶大な効果を発揮すると思われます。

前向きに課題を解決していく姿勢が必要


新幹線貨物の弱点の一例として、「小回り」「夜間需要とのマッチ」を挙げてみました。
ようするに、荷主側の需要に対応しにくい部分があるのですね。

もちろん、これ以外にも弱点・課題は多々あります。
ただ、先ほども書きましたが、新しい取り組みに課題があるのは当たり前。
できない理由を探して「無理」と言うのは簡単です。
しかし、それでは何も前に進みませんから、前向きに課題を解決していく姿勢が必要です。

次回の記事では、「新幹線貨物が実現するなら、どんな形になるか?」について考えてみます。

続きの記事はこちら 新幹線貨物は「宅配便輸送」から取り組むのが現実的

(2020/11/24)

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