『運転士になるまでシリーズ』の続きです。
ここ三回の記事で、教習所(寮)の朝 → 講義の風景 → 昼休み……と説明してきました。今回は、昼休みが終わった後、午後の講義の風景について語ります。
- 学科講習←今ここ
- 学科試験
- 実車講習
- 実車試験
午後の難敵は「眠気」
コックリ… コックリ…
学科講習も午後になると、舟をこぐ人が出てきます。一生懸命眠気を我慢するものの、耐えきれなくなって首がカクン! と落ちる光景も、そこかしこで見られます。
これはもう、ある意味仕方ありません。午前中から講義を受けてきて疲れているところに、昼食でお腹が膨れる。そういう生理的な条件に加え、講義は聞いていて楽しいものではない。
眠くなる要素は全部揃っているわけです。午後の講義では、この眠気が最大の敵になります。
しかし、学校の授業ならいざ知らず、運転士の学科講習は居眠りを見逃してくれるほど甘くありません。講師から「こら、そこ寝るんじゃない!」「起きろ!」と叱られます。居眠りしている人にチョークが飛んでくる……ことはさすがになかったですが。
ちなみに、私の学生時代には、居眠りしている生徒にマジでチョークを飛ばす先生がいました(笑) 今のご時世なら問題になりそうですね。
眠気への耐性を身に付けるのも仕事のうち
同じ乗務員でも、車掌と運転士では、「仕事をするときに立つか座るか」が違います。立って仕事をする車掌に比べると、座って仕事をする運転士は、どうしても眠くなりやすいのです。
というわけで、運転士経験者であるクラスの担任講師いわく、
「運転中に眠くなったとき、どうやって眠気を払うか? それを考えるのも大切だぞ。たとえば俺は、眠くなったときは立って運転していた」
なるほど、いま我々は眠気に襲われているけど、それに耐えるのは運転士になったときに備えての練習みたいなものだと、そう考えろということですね。「眠気を振り払う方法」を身に付けるのも、運転士にとって業務上必要なテクニックというわけです。
まあ、正論ではあります。
しかし……眠気は生理的な現象なので、どうしようもないんですよね、実際。午後の眠気を払う「対策の決定版」が世の中に存在すれば、社会の生産性はもっと上がっているはずです。
ちなみに、私は眠くなったときにどうやって眠気を払っていたか?
気合いです。
気合いで眠気を振り払っていました。いや、冗談でもなんでもなくてマジです。気合い以外に打つ手がなかった。それが現実です。
「そもそも眠くならないこと」が大切
現実として、眠気を振り払うのは難しい。であれば、「眠くなってからどうするか?」ではなく、「そもそも眠気に襲われないためにどうするか?」を考える方が大切です。
たとえば、夜更かしをしないとか、昼休みに少しでも昼寝をしておくとか、そういう当たり前のことができるかどうかです。もっと言えば、普段からの体調管理が問われます。体調管理は鉄道マンとして重要な要素ですので、鉄道会社への就職を目指す人は、覚えておいてください。
午後からは“変化球の講義”で眠気を防ぐ
今になって振り返ると、カリキュラム面で、ある程度は午後の眠気を防ぐ工夫がされていたように思います。
たとえば、学科講習では「運転シミュレーター」を使うことがあると以前の記事で説明しました。
机に座ってテキストを開いているよりも、シミュレーターを操作している方が眠くなりにくいですから、午後からの講義にシミュレーター等の“変化球”を取り入れるのは、有効な眠気対策といえます。実際、シミュレーターをやりながら居眠りしている人はいませんでしたし。講師側にそういう意図があったかどうかは不明ですが、シミュレーターは午後からの場合が多かったです。
ちなみに、「午前中に机上で説明して、午後からはシミュレーターで実践」という流れは、学習効率の面からも理にかなっていますよね。
シミュレーター以外の変化球としては、体育という科目がありました。身体を動かしていれば、やはり眠くならずに済みます。
「運転士の学科講習で体育って、なんだそりゃ?」と思いますよね。これはいわゆる学校の体育の授業とはちょっと違って、運転士としての体調管理に役立つような体操やストレッチを教わるのがメインでした。ドッジボールやらサッカーやら、そういう類を行うものではありません。
この体育も、午後から行うことが多かったように思います。もし体育を午前中にやったら、午後からの眠気を余計に誘発するだけなんで(笑)
……こんな感じで、あの手この手で眠気を防ぎながら、午後の学科講習は進んでいくのでした。