現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

鉄道関係の記事が約460。鉄道好きや、鉄道業界に就職したい人は必見! ヒマ潰しにも最適

急停車で転倒してケガ! 鉄道会社に過失がある場合は?

以前の記事で、「列車の急停車が原因で転倒してケガをした場合、鉄道会社に対して法的責任は問える?」という考察をしました。

乗務員が異常事態を認めた場合、急停車するのは「規定に基づく正当な行為」である。正当な行為に対して法的責任を問うことは難しい。

↑の記事では、こう説明しました。今回は、この記事に対する補足を書きます。

運転士のミスなどの過失があれば責任を問えるはず

急停車でコケてケガをしても、鉄道会社の責任は問えないと説明しましたが、これはあくまで「原則」です。場合によっては、治療費等を請求できる場合もあります。

早い話が鉄道会社に過失がある場合です。鉄道会社に過失があるとは、たとえば、

  • 駅停車時、停止位置を過走(いわゆるオーバーラン)したため、運転士が非常ブレーキを掛けた
  • 制限速度をうっかりオーバーしたため、ATSが動作して非常ブレーキが掛かった

ようするに、運転士の操作ミスが原因で急停車したような場合です。これは急停車に関して鉄道会社側に過失があるので、キチンと交渉すれば、治療費等を払ってもらえる可能性が高いはずです。

嘘はバレるかも 状況は正直に申告

ただ、その場合も、手すりや吊り革に摑まってなかったとしたら、「アンタも悪いんじゃないの?」で治療費支払いなし、もしくは減額されてしまうと思われます。ですので、やるべきこと(=走行中は手すりや吊り革に摑まる)はしっかりやっておくのが大切です。

あ、転倒した際の状況は正直に申告してくださいね(^^) たとえば、手すりや吊り革に摑まってなかったのに、「ちゃんと摑まってた」と嘘はつかない方がいいです。

というのも、近年の車両には、車内に監視カメラがあったりするので、嘘がバレるかもしれません。鉄道会社の担当者も人間ですから、嘘をつかれたとわかれば心証が悪化して、「コイツには払いたくない」となります。
(というか、「相手を騙して金銭などの経済的利益を得る」のは刑法の詐欺罪です)

そんなウソで鉄道会社側の態度を硬化させたら、バカバカしいです。

「吊り革に摑まっていなかった私も悪うございました」と下手に出ておけば、鉄道会社もそれ以上強くは言えないはずです。運転士のミスで急停車させてしまった負い目がありますから。

その場ですぐ乗務員に申告するのがポイント

さて、鉄道会社から治療費等をスムーズに支払ってもらうためには、一つポイントがあります。

もし急停車で転倒してケガをした場合、その場ですぐ乗務員に申告することです。

降車後に駅員に申告するとか、後日お問い合わせ窓口にメールを送るとかではなく、その場ですぐに申告するのが大切。「As soon as possible」というやつです。車内の非常通報装置を使ってもかまいません。

というのも、列車を降りてから申告されると、状況調査が難しくなるのはもちろん、「そのケガって本当に車内で転倒したのが原因なの?」という話になってきます。そうした事実は、原則として治療費を請求する側(=乗客側)が証明しなければいけませんが、それは難しいですよね。

そこで話がこじれると、お客さんの側だけでなく、鉄道会社側としても手間がかかるので、お互いに損をします。

車内でケガをしたときに、すぐ乗務員に申告すれば事実認定が容易なのです。周囲に目撃者もいますし。

原因に関係なくケガをしたら申告すべし

さて、ここからはみなさんが疑問に感じそうなことを二つほど。

疑問その1。
「鉄道会社側に過失があれば」と言ってるけど、急停車の過失の有無なんて、その場ですぐにわかるの?

一口に急停車と言っても、いろいろ原因があります。安全上やむを得ない急停車なのか、運転士の過失による急停車なのか、お客さんの側からすれば、その場ですぐわからないこともあるでしょう。

てゆーか、運転士のミスで非常ブレーキが掛かったのに、お客さんに知識がないのをいいことに、「安全確認のための急停車です」と誤魔化されることもないとは言い切れない。

ですから、転倒でケガをした場合は、その原因に関係なく、とにかくすぐ乗務員に申告するのが間違いないわけです。安全上やむを得ない急停車の場合は、最終的に「お気の毒でした」で済まされますが。

ちなみに、列車内でケガ人が出た場合、鉄道会社は社内で記録を残しておくのはもちろん、場合によっては国交省に報告する義務があります。これは鉄道会社の過失や治療費うんぬんとはまったく別の話なので、そういう意味でも、ケガをした場合は申告をお願いします。

時間が経ってから痛み出してきたら?

疑問その2。
打撲とか捻挫って、直後は大丈夫でも、時間が経ってから痛みが出てくることがありますよね。転倒したその場では痛みはなかったが、後で痛くなってきたらどうするか?

しかしこれ、先ほども述べたように、時間が経つと事実認定が難しくなります。ですから、強打したような場合、その場では痛みがなくても申告しておいた方がいいかもしれません。

そもそも論:転倒しないようしっかり摑まるのが一番大切

……とまあ、いろいろ書きましたが、そもそもケガなんてしないのが一番です。手すりや吊り革にしっかり摑まっていれば、急停車してもそうそうコケることはないはずです。安全のために、ご協力をお願いします<(_ _)>

関連記事

コロナ騒動 吊り革にはちゃんと摑まろう


→ 鉄道の豆知識や雑学 記事一覧のページへ


⇒ トップページへ