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スーパーレールカーゴに「コンテナの歯抜け」がない理由とは?

Q.列車番号50・51といえば?
A.スーパーレールカーゴ

ちょっと貨物列車に詳しい人なら即答でしょう。今日は、みんな大好きスーパーレールカーゴの雑学をお届けします。

【基本知識】スーパーレールカーゴとは?

このブログを訪れる人のほとんどは、スーパーレールカーゴを知っているでしょうが、いちおう基本説明をしておきます。

スーパーレールカーゴとは、佐川急便の宅配便輸送用に、東京~大阪間で走っている貨物列車です。

ポイントは、佐川急便の専用列車という点。一般の貨物列車は、さまざまな荷主の荷物が混在していますが、スーパーレールカーゴは「佐川急便の荷物」に特化しているのが特徴です。

また、通常の貨物列車は「機関車+貨車」という組み合わせで仕立てますが、スーパーレールカーゴは専用車両(M250系電車)を使用します。

スーパーレールカーゴは安全のために「歯抜け」を作らない

さて、ここからが本題。

貨物列車を眺めていると、コンテナ積載率が100%ということはなく、ところどころ欠けて(空席になって)いることがありますよね。

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コンテナ5個を積めるところ、3個しか積んでいない

これ、歯が抜けた形に似ているので歯抜けと呼んだりするのですが、スーパーレールカーゴには、この歯抜けが存在しません。つまり、コンテナを載せるスペースが空席ということはなく、コンテナ積載率100%なのです。

これは、安全のための措置です。

通常の貨物列車は最高速度110㎞/hですが、スーパーレールカーゴは130㎞/hで走ります。高速走行するため、編成の一部が歯抜けで凹んでいると、そこに変な気流ができて、線路脇に強烈な風(マネキンくらいなら倒れるらしい)を起こすそうです。それは危険なので、全スペースにコンテナを積んで歯抜けを消すわけ。

「全スペースにコンテナを載せるっていうけど、運ぶ荷物がなかったらどうするの?」と思うでしょうが、荷物が少ない場合は、ダミーコンテナ(死重)を積んでスペースを潰します。もっとも、常に荷物が多いため、ダミーコンテナの出番はほとんどないと聞いたことがありますが。

コンテナを積んでいない珍しい姿 試運転でゆっくり走っているので

JR貨物は宅配便輸送を強化

宅配便の取扱個数は年々増えています。それに伴い、JR貨物が取り扱う「積合せ貨物」(=宅配便を中心としたジャンル)も輸送量が増えています。

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ウチに来る宅配業者さんは「最近通販ばっか」と言っていた

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取扱い量を年々増やし、コロナでも勢いが衰えない

2021年3月ダイヤ改正では、宅配便輸送を強化するために、福山通運の専用列車・福山レールエクスプレスの4号や、カンガルーの西濃運輸に編成の一部を貸し切る列車が新登場しました。

福山レールエクスプレス。「福山通運」と書かれた緑コンテナのみを搭載

スーパーレールカーゴも登場から20年近くが経ちましたが、ますます重要度が増している列車といえそうです。

【余談】ヤマトや佐川の荷物を載せた列車が遅れると……

余談ですが、佐川急便といえば、JR貨物の人から聞いた話が忘れられない。

昔聞いた話なので、今はどうだか知りませんが……。佐川の荷物を載せた貨物列車が遅れると、JR貨物の営業担当者のところに、「どうなっとんじゃコラァァァ! ウチの荷物を遅らせてんじゃねえェェェ!」と、893顔負けの勢いでクレームが入ったそうです。ちなみにこれは、ヤマト運輸も同じだったとのこと。

スーパーレールカーゴって、夜中(23時~5時)に走る列車なので、明るい時間帯に撮影するのが難しいですよね。ダイヤ乱れで数時間遅れになると、明るい時間帯に走ってくれるので撮り鉄さんは大喜びしますが、その裏で関係者は鬱になっているわけです。

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本記事の写真提供 シリウスさん

本記事内のスーパーレールカーゴの写真は、はてなブロガー・シリウスさんが運営する『新・シリウスの線路際のロマンを求めて 』から拝借しました。写真使用の許可をいただき、ありがとうございました(^^)

『新・シリウスの線路際のロマンを求めて』は、いわゆる鉄道写真の撮影系ブログですが、その特徴は質と量。撮影系ブログは数あれど、これだけの質と量を保っているブログは少ないのでは、と思います。また、ブログのもう一本の柱として「男の料理」記事もあります。量や盛り付け方が、ザ・男の料理という感じです(笑)