長野県の郷土料理・山賊焼きをご存じでしょうか?
まるまる一枚の鶏モモ肉をタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げたものです。竜田揚げみたいなもん……と書いたら長野県民に怒られるかもしれませんが、まあそういう食べ物です。
郷土色が強い料理ということもあって、駅弁にも山賊焼きをメインに据えたものがいくつか存在します。松本駅で販売されている駅弁「山賊焼」も、その一つです。
山賊焼きはオーソドックスな味付けだが美味い
この駅弁、私は松本駅の売店で購入しました。他にもいろいろ駅弁がありましたが、「山賊焼」はプッシュされてたし、竜田揚げ好きだし。製造は、地元の老舗業者・イイダヤ軒(→公式ホームページ)。
それではオープン。
ごはんの上に山賊焼きがドン☆ 豪快ですな。山賊焼きというネーミングにふさわしい盛り付け。
ごはんと山賊焼きの間には、紙が挟んであります。これによって揚げ物の油が吸収され、ごはんが油で汚れない仕組み。こういう細かい心配りが嬉しい。
唐揚げ弁当等と違い、山賊焼きをごはんに載せているため、おかずスペースが確保できているのがイイですね。ではいただきます。
おっ美味い
間違いない味だ
山賊焼き、竜田揚げ系としてはオーソドックスな味。何か変わった特徴がある……という感じではなく、ありきたりと言ってしまえばそれまで。ですが、裏を返せば王道の味です。
奇をてらっていないからこそ、万人に受け入れられ、地元で人気のグルメなのでしょう。
もちろん冷めていますが、弁当の基本・冷めても美味しく食べられる味付けが忠実に守られています。
フタを閉じていたせいで、ごはんからの水蒸気で衣がベタベタフニャフニャ、なんてこともありません。冷めた揚げ物特有の、油の嫌な臭いもしない。変な表現かもですが、作り立てではない弁当の揚げ物としては、良い状態だと思います。
それなりに大きく、食べ応えもあります。量が少なくて物足りない、ということはないでしょう。
おかずが見事に機能し山賊焼きを飽きずに食べられる
そしてこの駅弁、おかずが非常にいい。山賊焼きとの相性がマルという意味です。
揚げ物が大きいと、途中で食べ飽きる危険があります。そこで大事なのが、箸休め・味変・リフレッシュといった要素でしょう。この駅弁は、そのあたりの塩梅が絶妙。おかずが見事に機能して、最後まで山賊焼きを美味しく食べられます。
写真では隠れてしまっていますが(^^;) 長芋を海苔で巻いて揚げたやつは、サクッとした歯切れが変化をもたらしてくれます。
味噌ごぼう(?)は、味噌味とコリコリ感が良い刺激に。
ワサビ漬け。ワサビの風味で味覚がリフレッシュ。そこまで強烈な辛みではなく、わりと食べやすい。
舞茸の煮物。こいつが「優しさ担当」ですね。優しい味で“引いて”くれるので、山賊焼きの“押し”が強調されます。
デザートはゼリー。変に甘ったるくないので、スッキリと〆られます。
味のベクトルや強弱が程よく分散していて、バランスが良い。適当におかずを放り込んだのではなく、キチンと検証したうえで、必要なものだけを揃えた印象です。
ごちそうさまでした。主役の山賊焼き、脇役のおかず達。彼らの組み合わせが、「メインの肉が美味しい」に留まらず、「弁当として美味しい」を作り上げていると思います。
地元の名物を打ち出した駅弁は、見た目が豪華なだけで味はそこまで……ということもありますが、この「山賊焼」は地に足がついています。個人的にはオススメです。正直、特に期待せず購入したのですが、良い意味で期待を裏切られました。
最後になりますが、山賊焼きの「山賊」ってなに? なぜ揚げ物なのに山賊「焼き」なの? そういった疑問は、NHKさんが調査したようなので↓どうぞ。