牛肉を使った駅弁は全国いたるところにありますが、調理内容はおおむね似通っています。すなわち、白ご飯に対して、すき焼き or 焼肉系統の牛肉を添えている(または載せている)というものです。
ところが、東北新幹線の停車駅でもある福島県の郡山駅には、少し変わった牛肉駅弁があります。それが本記事で食レポする「海苔のり牛めし」です。
2023年現在、お値段は税込1,300円です。製造は、地元の弁当・仕出し業者福豆屋(→公式ホームページ)。
ご飯ゾーンは「海のもの」と「山のもの」を組み合わせてある
海苔と牛がどのように同居しているのかが気になる本品。開けてみましょう。
牛肉を煮たものが真ん中に鎮座。その下には海苔、そして牛そぼろが敷かれています。
それだけ? いやいや、さにあらず。写真ではわかりませんが、ご飯の中には、おかかと海苔が入っているのです。構造図は↓の通り。
つまり、牛肉・おかか・海苔の組み合わせでメシを食べさせる。これが「海苔のり牛めし」の特徴です。
牛肉・おかか・海苔の組み合わせ。唐突でアレですが、昔読んだ『窓際のトットちゃん』(著:黒柳徹子)を思い出しました。黒柳さんがトモエ学園という学校に通っていた、子ども時代を振り返って書いた本ですね。
トモエ学園の生徒は、昼食は弁当を持参するのですが、学校からは、弁当に「海のもの」と「山のもの」を入れるよう言われていたそうです。「海のもの」とは、海で獲れる食材 = 魚や、それを原料にしたチクワやでんぶ、おかかなど。「山のもの」とは、陸上で手に入る食材 = 肉・野菜・卵など。
タイプの違うおかずを入れることで、栄養バランスが偏らないようにする意図ですね。
「海苔のり牛めし」で言えば、おかか・海苔が海で、牛肉が山に該当します。ご飯の上に何かを載せている駅弁は少なくないですが、海と山の両方が揃っている弁当は、そこまで多くありません。
牛肉・おかか・海苔がケンカを起こさず「一味違う」を演出
それではいただきしょう。上から箸を入れて、牛肉・おかか・海苔の「断層」をまるごと持ち上げ、一緒に食します。
やはり一味違う牛肉弁当だ
いやぁ~優しい味。牛肉は醤油系統のスタンダードな味付けですが、それだけに変なクセもないので、これをハズレと感じる人は少ないでしょう。良い意味での中庸だと思います。逆に言うと、牛肉駅弁に豪快さやインパクトを求める人にとっては物足りないかと。
牛肉は牛肉だけで味わいたいんじゃあ。おかかや海苔とミックスし、一緒に頬張るなんて邪道じゃあ。
──と思う人もいるでしょうが、実際に食べてみると、案外悪くないのです。これは意外だ。海と山が相乗効果を発揮している、味が膨らむ……とまで言えるかどうかは、人によって意見が分かれるかも。
しかし、少なくともケンカは起きていないと断言できます。
おかかと海苔のコンビネーションは疑う余地がありませんが、そこに牛肉を加えても反発が起きないのは不思議だ。いや、「そういうふうに作ってある」からケンカが起きないわけですが。たとえば、ステーキや焼肉系の牛肉を、おかか・海苔と合わせたら、おそらくミスマッチになるでしょう。
そのあたり、上手にまとめているのが製造業者のウデですね。
おかずもいただきましょう。彩りが良い。ご飯ゾーンが黒・茶色なので、対照的な色合いの人参や玉子焼きが映えます。味は……普通だ。良く言えば、ご飯ゾーンとの調和を乱さず出しゃばらない。悪く言えば、特に印象に残らない(^^;)
ごちそうさまでした。ご飯・おかず共に優しい味にまとまっており、そういう系統の味を求める人にとっては、良い駅弁だと思います。全体としてあまり起伏がないですが、弁当としてのバランス感は決して悪くないかと。また、「たまには違った牛肉駅弁を食べてみたい」と思ったときに、選択肢に入れる一品としてもアリでしょう。
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