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花形の特急列車でミスを犯してしまった運転士の話

特急列車といえば、鉄道ファンのみならず、運転士にとっても憧れの対象です。ネットを回遊していたら、そんな特急列車にまつわる記事を発見しました。

特急列車は、会社を代表する「フラッグシップトレイン」である。だから、どの運転士でも乗務していいわけではなく、特別に“選抜”された運転士しか担当できない。こういう鉄道会社も存在します。普通列車の運転士を何年か経験してから、ステップアップとして特急列車運転士の選抜試験を受ける、というわけです。

↑の記事は小田急電鉄のケースですが、同様に選抜制にしている私鉄は、他にもあります。

JRでは、特急列車と普通列車を特に区別せず乗務させているケースが多い……のですが、例外もあって、特急列車の乗務がメインとなる区所(=乗務員の所属基地)も存在します。たとえば、JR西日本のみやこ列車区なんかですね。

花形の特急列車でオーバーランは「会社の恥」

ここでは、特急列車の運転士を「選抜制」にしている某私鉄でのエピソードを紹介します。ずいぶん昔に聞いた話ですが。

──「彼」は普通列車の運転士を数年間務めたあと、特急列車運転士の選抜試験に受かりました。花形中の花形ですね。

ところがある日、彼は運転していた特急列車をオーバーラン──駅での停止位置を誤るというミスを犯してしまいました。

会社を代表するフラッグシップトレインが駅でオーバーラン。これは超カッコ悪いです。有り体に言えば「会社の恥」です。

たとえば、小田急の急行や各停がオーバーランしているのを目撃しても、たぶんみなさんは「あちゃー」くらいにしか思わないでしょう。が、特急ロマンスカーがオーバーランしているのを見たら……「うわっ何だこりゃ!」と感じるのではないでしょうか。

一度のオーバーランで下された過酷な処分

オーバーランをしてしまった彼には、当然ですが処分が下されました。

厳重注意?
いやいや、さすがにそれだけでは済まない。

しばらく乗務から外されて日勤教育?
まあウチの会社だったら、そうなりますね。

ところが、彼への処分はそんなものでは済みませんでした。

運転士の職を降ろされて異動

たかが、という言い方はアレですが、駅で列車を停める位置を誤った(しかもたった一度)だけです。赤信号を見落として突っ込んだとか、制限速度を超えて走ったとか、そういう安全を脅かす事象じゃないですよ。

しかし、会社は一見やりすぎとも思える処分を下しました。「選抜制」を採用している以上、それに受かった運転士には、非常に厳しい技術水準が要求されます。フラッグシップトレインを任されるとは、それだけ責任重大であって、オーバーランなどは論外というわけです。
(私の感覚では、さすがに過酷すぎるな~と思いますけどね……)

そして駅への異動 針の筵だったはず

そうして彼が“左遷”されたのは、駅でした。何かやらかした乗務員が降ろされて、駅に飛ばされる。まあ業界ではよくある話です。

残念ながら鉄道会社には、「乗務員の方が駅員より格上」と考える社員が少なくありません。私などは、「乗務員には乗務員の仕事が、駅員には駅員の仕事がある」──つまり役割の違いとしか感じませんが……。

ていうか「駅に左遷」って失礼な表現だと思うんですよ。駅員だって重要な仕事ですから、それをバカにしているようで。

と言いつつ、ここでは“左遷”という表現を使って記事を書き進めます。

さて、駅に左遷された後に辞めてしまう人は少なくありません。たとえば、車掌や運転士への登用の際、試験をクリアできないと駅員に戻されてしまいます。そうして周りから、「あの人不合格で戻ってきたんだって」という目で見られ、いたたまれなくなって辞めてしまう、という具合です。ようするに針の筵と。

ましてや彼の場合は「超花形の特急列車運転士 → 駅員」という異動ですから、相当に注目(悪い意味で)されたはずです。駅での居心地は非常に悪かったでしょう。

「ねー、あの人この前まで特急の運転士だったらしいよ」
「えー、よっぽどすごいミスしたんだろうね」

みたいな感じで( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )噂されたに違いありません。

耐え忍んだ末に運転士復帰 チャンスを捉えられる人間とは?

繰り返しますが、駅に飛ばされて辞めてしまう人は少なくありません。辞めるまでは行かずとも、「あー俺はもうダメだわ」とヤケっぱちになるケースも多い。彼もそうなって少しも不思議ではなかったと思いますが、腐らず卑屈になることもなく、真面目に駅での仕事を続けました。

1年経っても2年経っても、駅員のままです。自分は駅から一生動けないのか。きっと何度もそう思ったに違いありません。

しかし3年後、不遇な状況にもかかわらず……と書いたら駅に失礼ですが、腐らず真面目に仕事を続けた態度が評価され、運転士に戻ることができたそうです。

「仕事ぶりが良ければ、必ず誰かの目に留まる」とは言いません。きちんと仕事をしていても、誰にも見てもらえず埋もれてしまうことなんて、いくらでもあるでしょうから。

しかし、一つ確実に言えるのは、「仕事ぶりが良くなければ、誰かの目に留まることは絶対にない」です。

キャリアという意味では、確かに駅への異動は遠回りだったでしょう。が、彼にとって、本当にこの経験は遠回りだったのかどうか……。本人はどう感じているのか、聞いてみたいところです。

人生は、バイオリズムのように上がったり下がったりするのが常でしょう。「いいことばかりは続かない」わけですが、同時に「今は下降線だとしても、いつかは上向きになる」ということでもあります。下がり調子が底を打って波が上向きに転じたとき、そこでチャンスを捉えられる人間と捉えられない人間との差は何か? それを考えさせられる話です。

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