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『ゆるキャン△』のなでしこが祖母宅に行ったときの旅程は現実的なのか?

今回の記事で取り上げるのは『ゆるキャン△』。女子高生たちがキャンプするのをメインに描いたマンガです。アニメやドラマ化もされ、けっこう知名度があるマンガなので、ご存知の方も多いかもしれません。

ゆるキャン△ 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

アウトドアとか野外料理とか、ある種パワフルな人がやりそうなことを可愛い女子高生がやるということで、そのへんのギャップがウケている理由でしょうか。私の勝手な解釈ですが。

この作品の特徴として、現実世界の名所や名物、施設を数多く登場させていることが挙げられます。そのため、ファンによるいわゆる聖地巡礼が盛んなようです。なお、舞台は主に山梨県・静岡県です。

作中には鉄道も登場します。一例として、静岡県の天竜浜名湖鉄道。国鉄民営化時に第三セクターに転換された地方ローカル線です。

この『ゆるキャン△』ですが、天竜浜名湖鉄道が登場するシーンを読んでいて、ふと疑問に思ったことがあるので、それを記事にします。

なでしこは朝に山梨を出て11時には浜名湖佐久米に到着していた

舞台は第27話、時季はお正月です。正確に言うと1月2日。

登場人物の一人・各務原なでしこは、静岡県浜名湖の近くに住む祖母のところへ行きます(家族を伴わず一人で)。祖母の家は、天竜浜名湖鉄道・浜名湖佐久米駅の近くにあるそうです。浜名湖の北側ですね。

なでしこは山梨県南部町付近(=富士山の西側。近隣では身延町が一番知名度があるか)に住んでいるようです。ここから浜名湖佐久米駅までどのようなルートで移動したのか? というのが本記事のテーマ。

実はこのとき、なでしこは途中で友人の志摩リンと合流します。リンは静岡県西部方面へソロキャンプをしに来ていましたが、わけあって一緒になでしこの祖母宅へ行くことになったのです。

二人の待ち合わせ時刻と場所ですが、リンは「なでしこと11時に佐久米駅で合流」と言っています。

明日の待ち合わせ時刻を確認する志摩リンちゃん。第27話より抜粋

つまり、なでしこは朝に山梨県南部町を出て、11時には浜名湖佐久米駅にいなければならない。これはけっこうシンドイ行程では?

しかも、なでしこは途中で寄り道をしています。天竜浜名湖鉄道・気賀駅の駅前にある大判焼き屋で、クリーム大判焼き2個を購入(昼食が近いのに……)。その気賀駅から浜名湖佐久米駅まで、天竜浜名湖線に乗って移動している。

この大判焼き屋は実在する。聖地巡礼のスポットとして人気があるようだ。第27話より抜粋

この寄り道を含めたうえで、待ち合わせに間に合う行程は現実的に可能なのか?

と疑問に思ったので、検証してみましょう。第27話、掲載は2017年です。当時のダイヤがわからないので、本記事では2023年1月時点のダイヤで考察します。コロナ禍で運行本数がだいぶ減ったからなぁ、2023年のダイヤで行けるかなぁ。

路線バスを併用すれば11時到着はじゅうぶん可能

なでしこが、どのような交通手段で南部町から浜名湖方面まで移動したかは不明です。普通に考えれば鉄道でしょうが。「行ってくるね」で自宅を出たあと、次に登場するのが気賀駅前で大判焼きを購入しているシーン。

大まかな路線図。正確には、なでしこ家の最寄り駅は「身延線・内船駅」だが、ここでは地域の中核駅である「身延駅」を載せた。身延から南に2駅行くと内船

気賀駅から浜名湖佐久米駅までは、天竜浜名湖線に乗車している描写がキチンとあるので、その部分だけは判明していますが。

天竜浜名湖線は地方ローカル線であり、運行本数は1時間に1~2本程度です。もし大判焼きを買うために気賀駅で途中下車すると、そこで次の列車を1時間ほど待たなければいけません。このロスは痛い。

つまり、掛川駅から天竜浜名湖線に乗って気賀に向かったとは考えにくい。

というわけで、鉄道だけでなく、路線バスも併用した次のようなルートがもっとも現実的だと思うのですが、いかがでしょうか。

  • 内船→富士 JR身延線
  • 富士→新富士 路線バス
  • 新富士→浜松 新幹線
  • 浜松→気賀 路線バス
  • 気賀→浜名湖佐久米 天竜浜名湖線(この部分は確定)

なでしこは緑ルートを通ったのではないだろうか?

具体的な時刻も付与すると、次のような行程になります。

  • 内船616→(身延線)→富士713
  • 富士730→(路線バス)→新富士737
  • 新富士808→(新幹線)→浜松846
  • 浜松920→(路線バス)→気賀1014
  • 気賀1026→(天竜浜名湖線)→浜名湖佐久米1035

なんだ、余裕で行けるじゃないか。浜松から気賀へ路線バスで移動するのがミソですね。これを行わず、たとえば掛川から気賀まで天竜浜名湖線で移動しようとすると、待ち合わせの11時に浜名湖佐久米駅に着くためには、もっと早く家を出発しなければならない。それは苦しそうです。

しかも、上の行程を採用すると、なでしこの動きが説明できます。なでしこは気賀駅前で大判焼きを購入したあと、ギリギリで天竜浜名湖線に駆け込みます。

駆け込み乗車はおやめください。第27話より抜粋

気賀駅で、バス → 天竜浜名湖線への乗換時間が12分。昼食が近いから大判焼きを購入しようか迷う → えーい買っちゃえ、という流れなら、列車に乗るのがギリギリになったのも理解できます。

ということで、なでしこの旅程は現実でも可能との結論に至りました。作者がそこまで考えて(検証して)描いたかは不明ですけど……。現実に“寄せている”マンガでこういう部分が雑だと萎えますが、しっかりした描写がされており好感が持てます。

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