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なぜ貨物列車が遅延した? KDDIの通信障害

2022(令和4)年7月2日、KDDIで全国規模の通信障害が発生。音声通話やデータ通信が行いにくい状況が24時間以上続いた。

巻き込まれた人も多いのではないでしょうか。私は利用しているのがKDDI系ではないので、ノーダメージでしたが。

今回の通信障害は、鉄道にも影響を及ぼしています。具体的には、JR貨物のシステムが通信障害に巻き込まれ、貨物列車に遅れが発生しました。

通信障害によってコンテナを貨車に載せる作業が遅れた

「通信障害で貨物列車に遅れ」と書きましたが、原因は、コンテナを貨車に載せる作業(=荷役という)が遅延したためです。荷役が遅れれば、貨物列車は定刻に発車できません。

みなさんは荷役作業を見たことがありますか? 黄色のフォークリフトトップリフターがコンテナを持ち上げて運び、貨車に載せたり降ろしたりしているアレです。

フォークリフト

なぜKDDIの通信障害で荷役作業が遅れるの? と思うでしょうが、まずは前提知識から解説します。

フォークリフトでコンテナを貨車に積む──ここで疑問を感じませんか。フォークリフトの運転手は、コンテナを貨車のどこに載せるかを、どうやって判断しているのか?

あれは、貨車が空いている場所をテキトーに選んでコンテナを載せている……のではありません。「このコンテナはどこに載せる」があらかじめ決まっており、それに従って載せています。旅客列車に例えれば、「誰がどこに座る」すなわち指定席が割り当てられているのです。

コンテナを載せる場所は決まっており、フォークリフトの運転手はそれに従ってコンテナを貨車に積む。まあ当然の話ですね。

IDタグでコンテナを読み取り作業指示を出す仕組み

もう少し具体的に言うと、フォークリフトの運転台にはモニターがあります。そこに「いま抱えているコンテナは、貨車のどの場所に載せなさい」という情報が表示されます。運転手は、それを見て作業するのです。

JR貨物の荷役作業は、オンラインシステムで管理されています。以下のような仕組みです。

まず、「どのコンテナを貨車のどこに載せるか?」という情報をフォークリフトに送信します。そして、各コンテナにはIDタグが付いています。

JR西日本の京都鉄道博物館より

たとえばフォークリフトが100番のコンテナを持ち上げると、IDタグを読み取って「こいつは100番」と認識。

フォークリフト側では、コンテナを積載すべき位置のデータを持っていますから、それと照合して、100番コンテナはあそこに載せろ! とモニターに表示する。こういう仕組みが迅速な作業を可能にしています。

通信障害でデータが送れずフォークリフトの作業が遅れた

で、今回の通信障害に話を戻すと……

初めて知りましたが、JR貨物は、コンテナのオンライン管理にKDDI系を使っているようです。通信障害によって、フォークリフトに「どのコンテナをどこに載せるか」の情報を送信できなくなった → 荷役作業の遅れ → 列車の遅れ、という事態になってしまいました。

作業自体が完全に止まったわけではなく、遅れで済んだようです。おそらく、ファックス(固定電話回線)などで情報をやり取りし、作業指示を出したのでしょう。いわゆる昔のやり方ですね。人海戦術になるので、営業担当者などは総動員されたはず。

以上のように、JR貨物の作業は高度にオンライン化されています。ですので、通信障害が起きると列車が遅れてしまうのです。貨物列車の本数や積載量が少ない土曜日だったので、まだ不幸中の幸いでしたが……。

ちなみに、通信障害により荷役作業が滞って貨物列車遅れ、という事態は初めてではなく、実はときどき起きています。今回のような長時間にわたるトラブルは、初めてかもしれませんが。

【余談】コンテナの位置はGPSでわかる

あとは余談。

貨物の現場作業というと、泥臭いイメージがあるかもしれませんが、実はスマートな技術がいろいろ導入されています。一例として、人工衛星でリアルタイムの位置を検出するGNSS(の一種であるGPS)を使っており、「コンテナがどこにあるか」も把握できます。

たとえば、その列車に載るはずのコンテナの位置を調べ、すべてが貨車の上に位置していれば、積み込み作業が完了したとわかりますね。すなわち、もうすぐ出発できると判断できます。

こうした位置管理システムが導入される前は、コンテナの棚卸しをしていたと聞いたことがあります。コンテナが積まれた現場(貨物ターミナル)に直接出向いて、一つ一つコンテナの番号を拾っていくという、なんとも地味な作業。暑い夏なんかは大変だったとか。

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