現役鉄道マンによる鉄道雑学のブログ

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

つくばエクスプレスはなぜ黒字なのか?

こんばんは、現役鉄道マンのKYSです(^^)

前回の記事では、「第三セクター鉄道は、何が原因で赤字になるのか?」を説明しました。

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内容を簡単に振り返ると……赤字の原因を以下の二種類に分けました。

  1. 「田舎型の赤字」= そもそもの売上が絶対的に足りておらず、償却前損益がすでに赤字
  2. 「都市型の赤字」= 売上はそこそこあるが、借金の利子と減価償却費が大きくて赤字


そして、「都市型の赤字」の具体例として、東葉高速鉄道の数字を使って解説しましたね。

 

わずか数年での黒字は通常ありえない


ところで、都市型の三セク鉄道に、つくばエクスプレス(以下、TXと表記)があります。
このTX、決算書を見ると業績が好調です。

前回の記事で説明したように、都市型の三セク鉄道は、借金の利子と減価償却費の負担が大きいです。
そのため、開業からしばらくは赤字続きで、20年くらいは経たないと黒字にならないのが普通です。

そのくらいの期間が経過すれば、借金の元本が減って利子の支払い額も減ります。
また、減価償却費は「開業当初は大きく、だんだん小さく」なっていく特性があるので、20年くらい経てば、減価償却費の額も減るからです。

ところがTXは、開業当初こそ赤字だったものの、わずか数年で黒字に転換しています。
都市型三セク鉄道の常識からいって、ありえない話です。

いったい、なぜでしょうか?

借金の利子を払わなくてよい!


実は、TXの黒字には、決定的な理由があります。

「借金の大部分が無利子だから」です。

TXを建設する際には、1兆円! 近い建設費がかかっています。
このうち、約8200億円が国や地方自治体からの無利子の借金です。

仮にこの借金の利子が年率1%だとすると、それだけで初年度は82億円の利子を払わなければなりません。
(まあ、1%という低金利はありえませんが……)

さて、それではTXは年間でどのくらいの黒字(決算書的には営業利益)を出しているのか?
数年分の数字をさかのぼってみてみると……

2012年度……37億円
2013年度……48億円
2014年度……56億円
2015年度……66億円
2016年度……66億円
2017年度……80億円


(なお、この額はすでに減価償却費を差し引いた後の数字です。TXは、毎年190億円ほどの減価償却費を計上しています)

通常は、この利益から借金の利子を支払うので、もし82億円の利子を払っていたら、TXはバリバリの赤字になります。
他の都市型三セク鉄道と同じように。

しかし実際は、「借金の大部分(約8200億円)は無利子」であるから、利子は払わなくてもよい。
そのため、上で示した利益額の大部分を残せる
というわけです。

なお、TXの借金はすべてが無利子というわけではなく、一部は有利子の借金です。
そのため、いくらかは利子の支払いが発生しますが、決算書を見る限り、18億円くらいで収まっているようです。
このくらいの金額ならば、上で示した黒字額をそこまで揺るがすものではありません。

18億円という利子は、前回の記事で解説した、東葉高速鉄道よりも少ない額です。
鉄道の規模としては、TXの方がはるかに大きいにも関わらず、です。

「無利子でずるい」という考え方もあるが……


さて、ここまで記事を読んできたみなさんの中には、こう思った人がいるかもしれません。

「借金の利子を払わなくていいなら、黒字になるに決まってるじゃん」
「他の都市型三セク鉄道は借金の利子で苦しんでいるのに、TXだけ無利子でずるい」

しかし実は、他の都市型三セク鉄道が借金の利子で苦しんでいるという反省を活かして、TXは借金を無利子にした……という経緯があります。

もし、TXが有利子で借金をし、利子の支払いに苦しんで赤字になっていたら、

「また赤字の三セク鉄道を作ったのか……」
「どうせ税金を投入して救済するんでしょ。税金の無駄遣いだ」

といった批判が出ていたでしょう。
そういう意味では、一定の評価はするべきだと思いますね。