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コロナ騒動 指令員が感染したら全線運休になる?

コロナ関連の話題を続けます。前回の記事は、「鉄道会社の社員がコロナウイルスに感染したらどうなる?」というテーマでした。

内容を簡単に振り返ると、

・コロナウイルスに感染した場合、列車の運行に影響が出るのは、乗務員だけではない
→たとえば、車両検査の社員が感染したら、列車の運行が止まってしまう
→なぜなら、車両検査の社員がいなくなったら「車検切れ」の車両が発生して、列車が走れなくなるから

こんな感じでした。
今回の記事では、乗務員や車両検査以外で列車の運行に直接携わる指令員に目を向けてみたいと思います。

一人が感染したら指令は全滅する可能性が高い

まずは前提知識の話から。

指令とは、列車の運行管理を行う部署です。飛行機でいうところの管制官みたいなものだと思ってください。ガン○ムやヱヴァンゲ○ヲンでいえば、作戦指揮官やオペレーターが集っている、あの部屋です。

指令員は、指令室という場所で、泊まり勤務者が一堂に会して仕事をします。

それはつまり、コロナの感染者が出たら、同じ日に泊まり勤務をしていた他の指令員も“道連れ”で自宅待機になる事を意味します。いや、被害はそれだけでは収まりません。数日間さかのぼって、泊まり勤務で一緒になった指令員にも感染させている可能性があるため、彼らも自宅待機です。

指令って、乗務員のように人数がたくさんの部署ではないんですね。過去10日間くらい遡れば、他の指令員ほぼ全員と一回くらいは顔を合わせています。

そのため、一人が感染すると、指令員が“全滅”する可能性が高いです。仮に全滅を免れても、残っているのはごく少人数でしょうから、勤務が回りません。

間引きダイヤでも指令員の人数は減らせない

乗務員の場合は、列車本数を減らせば、それに伴って必要な頭数も減ります。感染者が出ても、残った乗務員の数に応じた間引きダイヤを組むことが可能です。

が、指令はそうはいきません。
列車本数が半分になっても、指令室に詰める指令員を半分にすることはできません。ですので、感染者が出てしまった場合、乗務員よりもダメージが大きいのです。

列車を動かす以上は指令員が必須

そもそもの疑問ですが、指令員がいないと列車は動かないのでしょうか?

「一応は動く」が答えです。

列車の信号制御は、あらかじめ入力されたデータによってコンピューターが自動で行います。あとは現場の乗務員が信号に従って列車を運転させるので、指令員がいなくても列車は動くといえば動きます。

ただ、それはトラブルがまったく起きていない平和なときの話。鉄道では、大なり小なりトラブルが起きます。このトラブルに対応するための指揮官役が指令なのです。

たとえば、事故や自然災害でダイヤが乱れると、指令はダイヤを戻すために運転整理という作業をします。「この列車はここで運転打ち切り」とか「追い越しや行き違い駅を変更しよう」など、いろいろなテクニックを駆使してダイヤを元に戻します。これはまだまだコンピューターには無理な作業で、指令が人力で行わなければなりません。

そういう事情があるので、今現在ダイヤが乱れていなかったとしても、いつ何が起きるかわかりませんから、指令室には指令員を置いておかないとダメです。列車運行には必須の存在なのです。

指令員を“缶詰め”にして外部との接触を断つ

さて、ここからが本題。

列車を運行する以上は、指令員が必要であることがわかりました。では、指令員が感染した場合、なすすべなく「指令員が出勤できないため全線運休」になってしまうのでしょうか?

もし、どうしても運行を継続したい場合、現時点で私の考え付く作戦は一つしかありません。

作戦のポイントは、「健康な人」と「感染の疑いがある人」を接触させないことです。それを頭に入れて読んでください。

まず、指令員の感染が判明したら、その時点で指令室で勤務している指令員全員を、建物内に“缶詰め”にします。そして、缶詰めにされた指令員は、感染している可能性があるので、コロナの潜伏期間である約2週間は建物の外に出られません。ずーーーっと指令業務をやってもらいます。

つまり、「2週間ぶっ通しで建物内に泊まり込んで、指令業務に従事してもらう」というわけです。

え? ちょっとコンビニに行きたいから建物の外に出してくれ? ダメです、建物の外には一切出られません。もし感染していた場合、市中にウイルスをバラ撒いてしまうかもしれないので。

指令は泊まり勤務ですから、建物内に風呂や寝室はあります。食料や着替え等は、外から差し入れてもらえば、なんとか生活できます。差し入れを届けに来た人間との直接接触はNGなので、玄関のフロアにでも置いてもらって、あとで回収します。

そうやって外から援助し、建物内の指令員には2週間頑張ってもらいます。もちろん、交代交代で休憩や仮眠を取りながらです。

一方、建物の外の話。
非番や休日の指令員には、2週間の自宅待機を命じます。

ようするに、建物の「中」の指令員は建物から出さない、建物の「外」の指令員は自宅待機。この方法、先ほど触れた、「健康な人」と「感染の疑いがある人」を接触させないというポイントをちゃんと守れていますよね。

こうして、コロナの潜伏期間である2週間が経過するのを待ちます。建物内の指令員・自宅待機の指令員、いずれも発症者が出なければ、他の感染者はいないと確定できます。それを確認したうえで、指令室を通常体制に戻します。

非常事態を乗り切るには多少強引な手が必要

この缶詰め作戦が、列車運行を止めないために、私の考え付く唯一の方法なのですが、いかがでしょうか? もし社内で提案しようものなら、「2週間ぶっ続けで仕事させるとか無茶だよ」と言われそう(^^;)

非っっっ常にバカげた方法なのは百も承知です。しかし、バカげた方法にでも頼らなければ、人員が足りない非常事態は乗り切れないと思います。「指令員がいないため全線運休」よりはマシでしょう。

ちなみにこの方法、労働基準法上は問題ない……はずです。労働基準法が求めているのは、

  • 8時間を超える勤務の場合は、休憩時間1時間以上を付与
  • 休日は、1週間に1日以上または4週間で4日以上を付与

2週間の連続勤務を禁ずる規定はないんですね。勤務中は適切な休憩時間を与え、2週間の連続勤務の前後に休日をキチンと与えていれば、法律違反にはならないはずです。

(2020/4/13)

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