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北海道新幹線の「函館駅乗り入れ」を考察 対札幌戦略の面からは疑問

函館市の大泉市長は、北海道新幹線の函館駅乗り入れについて、業者に委託し調査・検証を行うと発表した。(2023年7月のニュース)

現在、北海道新幹線の終着駅である新函館北斗駅。函館の名が入っているものの、実際は北斗市が所在地。函館駅からは十数㎞離れています。函館に向かうには、ここで新幹線から在来線に乗り換えなければいけません。不便です。

函館市としては、在来線部分を新幹線に代え、東京~函館間や、函館~札幌間の区間列車を走らせられればいいなぁと考えているようですね。

札幌延伸は2030年度の予定

新函館北斗駅での乗り換えがなくなるので、函館へのアクセスが向上するわけです。

対函館では新幹線は飛行機の客をたいして奪えなかった

新幹線の函館駅乗り入れ構想。考察するにあたっては、この構想を単独ではなく、「飛行機との旅客争奪競争」や「北海道新幹線の札幌延伸」も絡めて考える必要があります。なぜか? 記事を読み進めてもらえば理解できるかと。

というわけでは、まずは「飛行機との旅客争奪競争」について説明させてください。

新函館北斗駅まで新幹線が開業したときに、vs 飛行機が発生しています。東京圏から函館までの移動需要を、新幹線がどれだけ奪ったか?

実は……たいして客を奪えていません。北海道新幹線が新函館北斗駅まで開通した後も、羽田~函館の飛行機利用者数は数%の減少で済んでいます。『航空輸送統計調査』という資料によると、

  • 2015年 約110万人
    (2016年3月に北海道新幹線開業)
  • 2016年 約106万人
  • 2017年 約100万人
  • 2018年 約99万人
  • 2019年 約108万人

新幹線が飛行機のシェアを切り崩したとは言い難い。これはやはり、新函館北斗駅が函館市街地から離れており、新幹線が函館駅まで直通しない点が大きいのでしょう。新函館北斗駅で新幹線を降りたところから、在来線に乗り換えて函館駅に到着するまで約30分かかります。

まあ飛行機も同様で、函館空港から函館駅まで30分程度を要しますが。

新函館北斗駅も空港も、函館中心から少し離れているので、どっちもどっち。だったら速い飛行機の方がイイっしょ、と考え、新幹線を選ぶ人はそれほど多くないと推測できます。

「遠回り」になるため新幹線の時短効果が薄かった函館

もっと根本的に言えば、新幹線が新函館北斗駅まで開業した際、函館までの時短効果はさほどなかったんですよ。

北海道新幹線の開業前、青森~函館間は在来線特急で直通していました。これが約2時間。

後年、新幹線ができましたが、新函館北斗駅で乗り換えて函館駅に向かう形になります。ようは新函館北斗駅を経由した「遠回り」になってしまった。新幹線が速達で稼いだ時間は、遠回りで食い潰されるため、結果的に40分程度しか時短になりませんでした。

つまり、新幹線の時短効果が不十分だった(+乗り換えの手間がある)ため、飛行機から需要を奪うには力不足なわけです。

対札幌では新幹線が飛行機から需要を奪える要素がある

これが対札幌になると話が違ってきます。札幌の空の玄関口は新千歳空港ですが、札幌から少し離れています。

新千歳空港で降り、そこでレンタカーを借りて旅に出発する人には当てはまりませんが、空港から札幌駅(札幌市街地)まで移動したい人は少なくないはずです。

新千歳空港 → 札幌は、快速エアポートに乗るのが一般的。所要時間は約40分。飛行機との乗換・待ち時間を含めれば、移動に1時間程度は見ておくべきでしょう。新千歳空港で降りた場合、この約1時間──札幌までの移動がやや面倒くさい。それに比べると、北海道新幹線は札幌駅にダイレクトに到着するのが大きい。

  • 函館 → 新幹線も飛行機も、降りた後に函館市街地まで30分程度は要する
  • 札幌 → 飛行機は降りた後に札幌まで1時間ほどかかる。対して新幹線は札幌駅直結

新幹線が函館新北斗駅まで開業した際、飛行機利用者数は数%ほど減っただけ、と先ほど書きました。しかし、新幹線の札幌延伸は「乗り換えなしで市街地へ直結」つまり時短効果が大きいので、もう少し飛行機のシェアを切り崩せるでしょう。

新幹線の札幌延伸後

東京圏と札幌圏の移動は、年間約1,150万人。現在、このほぼ100%が、羽田・成田からの飛行機利用です。

対して、東京圏と函館の移動は、おそらく年間約150万人ほど。対札幌と対函館では、8倍くらい需要に差があります。

経営難のJR北海道としては、東京~札幌間の移動需要という「ボリュームたっぷりの部分」を飛行機から奪いたい。対函館ではなく、対札幌が北海道新幹線のキモ。別の言い方をすると、函館止まりでは効果が薄く、札幌まで延伸してこその北海道新幹線です。

北海道新幹線は東京~札幌間が重視すべきポイント

とまあ長々と書きましたが、結局は次の一文に集約できます。これだけ頭に入れて、残りを読み進めてください。

北海道新幹線(JR北海道)としては、需要数や飛行機との競争という観点から、東京~札幌間を重視すべきということ。

ただし、北海道新幹線が飛行機に対抗し、移動需要を獲得するためには、ある程度の本数と速達性が必要です。

現在、羽田と新千歳を結ぶ飛行機は、1時間に複数本運航されています。そして、JR東日本は、2031年度に羽田空港アクセス線を開業させる予定です。つまり、羽田からの飛行機利用は将来さらに便利になるので、それを上回るだけの魅力がないと、新幹線で札幌に行く手段は選んでもらえないわけ。

東京から札幌まで行く新幹線が、2時間に1本では厳しいと見ます。飛行機に対抗するためにも、やはり毎時1本は札幌行が欲しい。

新幹線が函館駅に乗り入れると対札幌戦略に影響する

ここで、新幹線の函館駅乗り入れ構想の話に戻ります。

函館市としては、函館駅まで新幹線を引き入れて東京~函館間という列車を走らせられれば、と思っているようですが、常識的に考えてこれは悪手。

というのは、新幹線は函館から1時間くらい走れば札幌に着きます。ですから、東京から函館まで運行したのであれば、そこ止まりにせず、もうひと頑張りして札幌まで行く方がどう考えてもコスパが良い。

もし新大阪・名古屋方面からの新幹線が、小田原駅や新横浜駅で終点だったら、「ここまで来たんなら東京まで行ってくれない?」と思うでしょう。それと同じ。

ようするに、東京発函館行のような列車を作っても、中途半端で価値が低い。なるべく多くの東京発札幌行が欲しいので、「貴重な1本」を函館止まりにされてはタマラン。ですので、いくら新幹線が函館駅まで繋がっても、東京からの列車が終着点にするかは怪しいと考えます。

じゃあ函館止まりにせず、いったん函館駅に立ち寄ってから札幌に向かう形にしては?

しかし、それだと今度は速達性が損なわれます。飛行機との対抗上、新幹線は少しでも早く札幌に着きたい。需要の小さい対函館のために、対札幌という大きな部分に影響を及ぼすのは、どう考えても得策ではありません。

【まとめ】個人的には函館駅乗り入れ構想に否定的

まとめます。

  1. 北海道新幹線は、対札幌戦略を重要視すべきで、そのためには本数と速達性が必要
  2. しかし、東京発函館行のような列車を作ってしまうと、札幌行の本数が犠牲になる
  3. 函館駅に立ち寄ってから札幌に向かうと、今度は速達性が犠牲になる

私としては、函館駅乗り入れ構想の意味というか、戦略的価値がよく見えないですね。少なくとも東京圏との関係では。というわけで、おおむね否定的な見解です。

なお、新幹線の札幌延伸というと、東京との関係ばかりがクローズアップされますが、仙台との関係にも注目です。現在、仙台から札幌まで鉄道で移動すると、約6時間かかります。ですので、鉄道を使う人は少数派でしょう。

しかし、新幹線が札幌延伸すれば、3時間半程度で行けるはず。仙台~新千歳の飛行機利用は、2019年で約87万人ありました。札幌延伸後は、この大部分を新幹線が奪うと思われます。

(2023/7/31)

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