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時間帯別運賃の課題(3) 相互直通運転の運賃精算が難しい?

コロナ騒動を機に、JR東日本JR西日本が検討している「時間帯別運賃」。これについて考察する第4回です。

今回の記事で検証するのは相互直通運転です。

時間帯別運賃を検討しているJR東日本は、他社(東京メトロ・東武鉄道・相模鉄道など)と相互直通運転を行なっています。この相互直通運転が、時間帯別運賃の運用にどのような影響を与えるか?

簡潔にまとめたかったのですが、結果的に複雑になってしまいました。読者のみなさんに負担をかけるのは心苦しいのですが……。頑張って読んでいただけると助かります。

本題に入る前に 用語や設定の定義

問題を検証する前に、記事内で使用する用語や設定を定義しておきます。

① ラッシュ時間帯・閑散時間帯の設定

本記事では、ラッシュ時間帯閑散時間帯を↓のように区切ります。

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記事内での例え話などは、すべてこの時間帯区分によって進めます。ご了承ください。

②「ラッシュ時間帯に値上げ」の方針で

一口に時間帯別運賃といっても、考え方は二つあります。「ラッシュ時間帯に値上げする」か「閑散時間帯に値下げする」かです。

時間帯別運賃の目的は、値上げして鉄道会社の売上をアップさせることです。そのため本記事では、「ラッシュ時間帯に値上げ」の方向で話を進めます。

同じ時間帯別運賃でも、「閑散時間帯に値下げ」は売上ダウンになるので、ここでは検証しません。また、「閑散時間帯に利用したらポイント付与」というのも、実質的な値下げですので検証しません。

③ 割増運賃と通常運賃

ラッシュ時間帯に通常よりも多くとられる運賃を「割増運賃」、閑散時間帯の運賃を「通常運賃」と呼ぶことにします。

用語や設定の定義は以上です。

具体的なパターンで割増運賃のある・なしを考える

ここからが本題ですが、まずは確認問題を。

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パターンA

このパターンAは割増運賃を取ってOKですね。「ラッシュ時間帯にJR線を利用した」のは間違いないからです。

さて、ここから相互直通運転の話。JR東日本 ⇔ 相模鉄道の相互直通運転を例にして、時間帯別運賃の問題点を考えてみましょう。↓の図を考察に用います。

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時間帯別運賃はJR区間のみ導入と仮定

ラッシュ時間帯にJRを利用していないのが明白なケース

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パターンB

入出場時刻はパターンAと同じですが、舞台は相互直通運転。18:55に相鉄駅で入場し、そこから15分間は相鉄エリアで乗車。JRエリアに突入したのは19:10くらいですから、閑散時間帯です。

この場合、JR駅での出場時に割増運賃を取られたら、

「俺がJR線を利用したのは、明らかに19時以降やぞ。なんで割増運賃を取られるんや」

と苦情を言いたくなりますよね。もっともです。このパターンBで割増運賃を取るのは不適切な感じがします。

ラッシュ時間帯にJRを利用したのが明白なケース

では、もう少し他のパターンも考えてみましょう。

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パターンC

このパターンCは、割増運賃を取るのが自然な感覚です。というのも、JR線に入ったのは18:48くらいなので、明らかに19時より前。つまり、ラッシュ時間帯にJR線を利用しているので、割増運賃を取るわけ。

条件が同じなのに運賃が違ったらおかしい

まとめると↓のようになります。

  • パターンB → 割増運賃を取らない
  • パターンC → 割増運賃を取る

ところが、よく考えるとこれはおかしい。なぜなら、パターンBもCも「条件は同じ」だからです。

パターンB18:55 相鉄駅で入場
19:25 JR駅で出場
パターンC18:33 相鉄駅で入場
19:03 JR駅で出場

よ~く見ると、パターンBもCも

  • ラッシュ時間帯に、相鉄駅で入場
  • 閑散時間帯に、JR駅で出場

条件は同じですよね。
なのに片方は割増運賃を取り、もう片方は通常運賃で済む。これでは不公平です。

ICカードでは「JRに突入したのは何時何分?」が不明

結局、何がいけないかというと、

  • ラッシュ時間帯に、相鉄駅で入場
  • 閑散時間帯に、JR駅で出場

この条件だけでは、JRを利用したのがラッシュ時間帯か、それとも閑散時間帯かがわからない、ということです。

「JR区間に突入したのは何時何分か?」を解明できれば、割増運賃 or 通常運賃の判定ができます。しかし、ICカードでわかるのは、入出場した時刻と駅だけ。つまり、途中の場面である「JRに突入したのは何時何分?」まではICカードで解明できません。

このように、相互直通運転の列車に乗って2以上の鉄道を利用すると、「境界を跨いだタイミングが曖昧」という問題が起きます。降車側の鉄道(=この場合はJR)を利用したのはラッシュ時間帯? 閑散時間帯? という判定が難しいわけです。

割増運賃を取るのは諦めるしかない?

この問題は、どう処理すればよいのでしょうか。

  • ラッシュ時間帯に、相鉄駅で入場
  • 閑散時間帯に、JR駅で出場

ようするに、この条件では、「ラッシュ時間帯にJRを利用した」とは言い切れないのですね。ラッシュ時間帯にJRを利用したと言い切れないのであれば、割増運賃を取るのはマズい。というわけで、パターンB・Cいずれも、割増運賃ではなく通常運賃を適用するしかなさそうです。

JRとしては、なんだか割増運賃を取りっぱぐれた感があります。ラッシュ時間帯にJRを利用したのが明白なパターンCなんかは、特に……。

しかし、「JRに突入したのは何時何分か?」が正確に判定できない以上、やむを得ない気がします。「お客様から運賃を取り損ねた」は許されますが、「運賃を過剰に徴収した」では大問題だからです。

現実的な考え方としては、

  • ラッシュ時間帯に、JR駅で入場
  • ラッシュ時間帯に、JR駅で出場

どちらかの条件に当てはまれば割増運賃、というルールが妥当でしょうか。

発駅と着駅を入れ替えただけで運賃が変わる?

ただ、そのルールにも欠陥はあります。たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。

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パターンC

 

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パターンD

パターンCとDは、いわば表裏の関係。利用区間と利用時間はまったく同じで、発駅と着駅を逆にしただけです。ですから、運賃は同額というのが常識的な感覚です。

ところが、もし割増運賃のルールが↓のようだと、

  • ラッシュ時間帯に、JR駅で入場
  • ラッシュ時間帯に、JR駅で出場

パターンCは、いずれの条件にも当てはまらないので割増運賃なし。パターンDは、「ラッシュ時間帯にJR駅で入場」に該当するので割増運賃あり。

利用区間と利用時間はまったく同じ、いわば表裏が違うだけなのに運賃が異なる。これは不合理ですが、ではどう解決すればいいのか……ちょっとわかりません。

時間帯別運賃で駅システムの仕組みが非常に複雑になる

この記事では、シンプルな2社間の直通運転で説明しましたが、現代では3~4社が絡む直通運転もあります。

また、鉄道会社によって、時間帯別運賃を導入する・しないも違うでしょう。仮に全社が時間帯別運賃を導入したとしても、ラッシュ時間帯・閑散時間帯の設定は異なる──JRの朝ラッシュは7~9時、相鉄の朝ラッシュは8~9時──かもしれません。

こうなると組み合わせ・パターンが多すぎて、ついていけない(^^;)

相互直通運転やICカードの相互利用が進んでいる時代です。駅システムは一つの鉄道会社内で完結するものではなく、他の鉄道会社とリンクしています。時間帯別運賃が導入された際、この「巨大ネットワーク」を破綻なく組み上げ、運用していけるか?

まあ、JRや機器メーカーの頭の良い人が考えるので、大丈夫でしょう(笑)


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