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京葉線の通勤快速 鉄道マン目線では「急病人の発生」が怖い列車

2024年3月のダイヤ改正の内容が発表されて、大騒ぎになったのが京葉線です。

千葉県の蘇我駅から東京駅を結ぶ京葉線。現在、普通列車だけでなく通勤快速・快速という種別も運行されています。ところが、ダイヤ改正で快速系を大幅に減らし、朝通勤時間帯は普通列車だけにするとのこと。
(注:特急列車は運行される)

この改正に対し、ネット上では悲鳴が聞かれました。房総半島から都心への通勤者は、「快速系が無くなったら通勤に時間がかかる。早起きしないとアカンやん!」という具合。

通勤快速・快速・普通の3種別、停車駅とおおむねの所要時間は↓図の通りです。

注:列車によって所要時間に差がある。普通列車は52分程度のものもあれば、60分かかるケースも

JR東日本は通勤時の快速系廃止を撤回 快速2本は残る

騒ぎはネット上だけにとどまりません。千葉県知事・千葉市長ともに「容認できない」と猛反発の姿勢で、JR東日本への抗議や千葉支社長との面談を実施。その結果──かどうかは知りませんが──、JR東日本は「快速系廃止」を撤回し、朝通勤時間帯に快速2本は残すことを決定しました。

もっとも、その2本は所要時間が普通列車とあまり変わらない“なんちゃって快速”の可能性もありますけど。

普通列車が走るだけの時間を確保してあれば、そこに快速列車を走らせるのは難しくありません。駅は通過するけどスピードを落としてトロトロ走り、普通列車と同じだけの時間をかけて走破すれば済む話だからです。

まあ「そんなに難しくない」で済むのはダイヤ設定の話。旅客への影響は大きいです。全列車普通化によって通勤時の列車本数が増える予定だったところ、快速2本が甦ったことで「損をした駅」があるからです。撤回・変更を行なったことによるプラス面とマイナス面は、あとでキチンと検証する必要があります。

「名物列車」の通勤快速は廃止が撤回されなかった

しかし、快速2本を復活させても知事や市長は満足しません。「快速2本? それだけでは……。ていうか通勤快速も残してくれ!」とのこと。

朝通勤時間帯に2本設定されている、京葉線の通勤快速。今回の記事では、この通勤快速について、鉄道マン的な視点から一つ書きます。

ご存じの方も多いでしょうが、京葉線の通勤快速は、一種の「名物列車」です。先ほどの図を再度ご覧ください。

通勤快速は、蘇我駅を出ると、次の新木場駅までノンストップで走り続けます。この間、約30分。これだけの時間、駅に停まらず走り続ける列車は珍しい。

いや、30分以上ノンストップで走り続ける列車自体はたくさんあります。ただし、それは新幹線や特急列車、通勤ライナーの類であることが一般的で、いわゆる普通の通勤列車が30分停まらないことは稀です。

30分ノンストップの通勤快速は急病人を発生させやすい列車に見える

これだけ長時間、いわゆる普通の通勤列車がノンストップで走り続ける──

鉄道マンとしての個人的な感覚では、こういう列車は嫌な存在です。自分だったら乗務を担当したくないし、指令員目線でもヒヤヒヤする。

なぜか? 急病人が発生しやすそうだからです。

実際のところは「中の人」に訊いてみないとわかりませんが、この通勤快速、他の列車より急病人発生率が高いのではないでしょうか。

みなさんが通勤列車に乗っているとき、もし気分が悪くなったら、どうします? おそらく次の駅で下車し、ベンチに座って休むなり、トイレに駆け込むなりすると思います。

しかし、30分ノンストップの通勤快速では、それができません。体調が悪くなっても降りられない。駅に停まって乗客が入れ替わり、席が空くことも望めない。トイレにも行けない。

これが特急列車なら、基本的に着席できますし、トイレもあるので駅に降りられなくても対応しやすいのですが。

体調が悪くなったときに、非常通報ボタンを押して列車を停めてもらい、駅で下ろしてもらう手段はあります。が、自分で非常通報を押せる度胸がある人は、なかなかいないでしょう。

結局、対応手段がないために、体調不良を我慢して車内で倒れてしまうケースが多いのではないでしょうか。

こうした理由から、急病人が発生する確率が高そうな列車に見えます。私には。

そもそも体調うんぬんに関係なく、30分ずっとドアが開かずの車内にいること自体が、なかなかシンドイでしょう。着席できず立っていたら、なおさらだと思います。変な言い方ですが、乗車するのにそれなりの覚悟が必要な列車です。

通勤快速廃止には「ダイヤの安定」という目的もある……のかも?

車内で急病人が発生すると、その対応を行うためにダイヤが乱れますが、朝時間帯だとダメージが非常に大きいです。ぶっちゃけて言えば、「勘弁して」が鉄道会社の本音。不可抗力なので仕方ありませんけどね。

通勤快速の廃止には、急病人発生率を下げてダイヤをより安定させる目的もある……と考えるのは穿ちすぎでしょうか(^^;)

ちなみに現状、通勤快速は7割程度の乗車率だそうで、朝通勤時に混まないのでは運行する側からすれば勿体ない。さらに、その影響で前後の普通列車が混雑するようです。

そのため、通勤快速を普通列車に変えれば、利用客が分散して混雑が平準化されるという理屈のようですが……いきなり全廃は、中身どうこう以前に第一印象が悪すぎました。

混雑の平準化を目指すなら、通勤快速を新たに海浜幕張駅や新浦安駅に停める手もあったんじゃないなぁ……という気もします。

もちろん、その程度のことはJR東日本内部でも考えられたはずで、そうしなかったということは、それだけの理由があることは間違いありません。

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