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リニアの運転本数は「1時間に8本」で足りるのか?

前回の記事では、「リニアはどれだけの電力を消費するのか?」を書きました。
JR東海の資料によると、大阪まで開業したとき、以下のようになるとのことです。

・運転本数 ピーク時:8本/時間
・ピーク時の消費電力 約74万kW

これくらいの消費電力なら、原発再稼働ナシでもいけるのでは。
前回の記事ではそう書きました。

ただし、それはJR東海が資料で示している「ピーク時:8本/時間」「約74万kW」という数字が正しければ、の話です。
個人的には、これらの前提条件にいささか疑問を感じる部分があります。

具体的にいうと、「ピーク時:8本/時間」という数字が少ないと思うのです。
8本どころではなく、10本とか12本とかになるのでは?
そうなると、消費電力がもっと増えるのではないか?

そうした懸念があります。
今回の記事は、そのあたりについて書きます。

 

リニアの定員は1,000人 → 1時間に出発できるのは8,000人


「ピーク時:8本/時間」という文言の意味ですが、素直に解釈するなら、1時間あたり列車を8本運転させるということでしょう。
つまり、下りならば品川から1時間に8本、上りならば大阪と名古屋の両駅から合わせて1時間に8本、列車を発車させるわけです。
この条件のときの消費電力(=瞬間最大値)が74万kW。

さて、なぜ私は「ピーク時:8本/時間」という数字を疑っているのか?
それを説明していきます。

リニア車両は定員1,000人だそうです。
いちおう、計算の根拠を示しておくと……

・両数は16両前後の予定
・先頭車の定員24人 × 2両 = 48人
・中間車の定員68人 × 14両 = 952人

(JR東海のホームページより)


先ほど書いたように、ピーク時には1時間に8本の列車を走らせる想定であり、定員1,000人 × 8本 = 8,000人。
品川からなら、1時間に8,000人が出発できるのですね。

ピーク時に東京圏から出発する人は1時間に17,000人以上?


しかし、この「1時間に8,000人」という数字を見て、ちょっと足りないのでは? と思うのは私だけではないはずです。

たとえば、東京・品川・新横浜から名古屋・新大阪へ向かう場面を想像してください。
経験者ならおわかりでしょうが、以下のようなタイミングでは、東海道新幹線はめちゃくちゃ混みます。
(現在はコロナの影響で混雑は緩和されていますが)

・金曜日の夕方~夜
・お盆や年末年始の帰省ラッシュ時

こういうときって、指定席はもちろんグリーン車も満席になったりします。
席に座れない立ち客もいます。

現在、東海道新幹線で走っているN700系は定員1,323人。
ちなみに新幹線のようにすべてクロスシートで構成されている車両は、定員 = 座席数です。

そして、1時間あたりに運転できる最大本数は……

のぞみ 12本
ひかり 2本
こだま 2本


東京から名古屋・新大阪に向かう人は、のぞみかひかりに乗るのが普通です。
こだま2本は除外するとして、のぞみ+ひかりで1時間に14本。

満席1,323人 × 14本 = 18,522人

ひかりに乗車し、静岡や浜松で降りる人を差し引いても、17,000人は下らないのでは……。
つまり、東海道新幹線が一番混む瞬間では、東京方面から名古屋・新大阪へ出発する人が1時間に17,000人はいるわけです。

東名阪の移動手段であるのぞみ・ひかりをリニアが代替するのであれば、1時間に8,000人というリニアの輸送力では、さすがに足りない気がします。

補足 航空機組からのシフトは無視して計算した


ちなみに現在、東京~大阪間の移動手段として、航空機のシェアが10%程度あります。
リニアが開業すれば、航空機組もリニアにシフトする可能性が高い。

話を分かりやすくするために、先ほどの計算では航空機組からのシフトは無視しましたが、本来ならそれも加算する必要があります。

1時間8,000人の輸送力ではピーク時に足りないのでは……


もちろん、リニアが開通しても、東海道新幹線では列車が走ります。
東名阪を移動する全員がリニアに乗るわけではないはずです。
しかし、大部分の人はリニアを利用するでしょう。

「これからは日本で人口が減少していくから、現在の東海道新幹線ほど輸送力はいらないのでは?」という考えもあります。
リニアが大阪まで全線開業する頃、日本の人口は現在より10%以上減っていると思われます。

ただし、人口減少と鉄道の利用者数が必ずしも比例するとは限りません。
現に、日本はすでに人口減少に突入していますが、コロナ前まで東海道新幹線の利用者数は年々増え続けていました。

コロナの影響で日本人の行動様式が変わり、東名阪の移動需要は根本から減少すると見られています。
しかし、それを考慮しても、17,000人という数字が10,000人くらいにまで落ち込むことは、さすがにないでしょう。

やはり、リニアの1時間8,000人という数字は、ピーク時では心許ないと私は考えます。

いや、JR東海が「座れなかった客は立っとけ^^」とか「積み残し上等。次の列車が来るまで待っとけ^^」みたいに開き直るのであれば、輸送力不足の問題は解決ですが……(笑)

運転本数が増えたときの消費電力は不明


話が長くなりましたが、まとめますと、「リニアの運転本数、ピーク時に1時間8本だと足りないのでは?」ということです。
金曜日の夕方や帰省ラッシュ時には、1時間に10本とか12本とか、それくらいの本数を運転するかもしれません。

そうなると、「ピーク時の消費電力 約74万kW」という条件も変わります。
1時間に10本や12本運転したとき、どれくらい電力を消費するかは不明です。

開業が近づき、具体的なダイヤ案が出てきたときに、消費電力の問題が大きく取り沙汰されなければいいのですが……。


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