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「リニアができれば新幹線利用者の大部分はシフトする」は本当?

前回の記事は、「リニアの輸送力って足りなくね?」というテーマでした。

  • リニア車両の定員は1,000人
  • ピーク時の列車本数は1時間に8本

1,000人 × 8本 = 8000人。
すなわち、1時間に8,000人が出発できる計算です。そして、「金曜の夕方や帰省ラッシュなどのピーク時だと、1時間8,000人では輸送力が心許ないのでは?」と疑問を呈しました。

東海道新幹線の利用者がリニアにシフトするとは限らない?

さて、その記事に対して読者さんからコメントをいただきましたが、その中で↓のような指摘がありました。

リニアが開業したとき、本当に新幹線利用者の大部分がリニアにシフトするだろうか?

うーむ、言われてみれば確かにそうだ(^^;) 書籍などでも「のぞみ利用者は、すべてリニア利用にシフトすると仮定して試算する」としているものがありますが、そんな極端な仮定をしてよいのか。

リニアが開業しても、東名阪の移動にリニアではなく東海道新幹線を利用するケースは、それなりにあるかもしれません。そうであれば、確かにリニアの輸送力は多少心許なくても大丈夫なわけです。

リニアへのシフト率は運賃・料金や新幹線の運行体系次第

では、どれくらいの人がリニアにシフトし、東海道新幹線にとどまるのか?

これは、現時点では何とも言えません。リニアの運賃・料金が未定だからです。

東海道新幹線とさほど変わらない値段なら、リニアにシフトする人の割合は増えるでしょう。逆に、JR東海側に経営状況の悪化や借金返済計画の狂いなど負の要素があれば、それを埋めるために運賃・料金を高くせざるをえなくなり、リニア離れを招くはずです。

また、リニアの運賃・料金だけでなく、東海道新幹線の運転本数次第のところもあります。東海道新幹線からのぞみが消え、ひかり・こだまだけになると予想されていますが、運転本数がそれなりに多いままなら、リニアへのシフト率は低くなるでしょう。

リニアの弱点 駅数が少なくカバー範囲が狭い

リニアが不利な点としては、駅数の問題があります。

たとえばですが、新横浜から名古屋に向かう場合、わざわざ品川まで行ってリニアに乗るでしょうか?

新横浜~名古屋間は、ひかり(途中3~4駅に停車と仮定)だと1時間40分程度。新横浜~品川~名古屋というリニアルートだと、乗り換えの手間などを考えると1時間10分くらいでしょうか。

これくらいの差なら、ダイレクトに東海道新幹線で名古屋に向かったほうが楽な気がします。

東海道新幹線は、東京・品川・新横浜の3駅があるのでカバー範囲が広く、ようするに“旅客の取りこぼし”が少ない。しかし、リニアは品川1駅のみなので、特に横浜方面からの取りこぼしがありえます。

まあ、品川は横浜方面からのアクセスも悪くないので(=横浜~品川間は東海道本線なら17分程度)、そこまで取りこぼしが大きくなるとは思えませんが……。それでも、多少の取りこぼしは発生するでしょう。

ちなみに、神奈川のリニア駅は相模原市が予定されていますが、横浜方面から在来線で行くにはちょっと遠い。それなら品川まで出たほうが早いです。相模原が、新幹線における新横浜のような役割が果たせるかは疑問です。

ていうか、中間駅は1時間に1本しか列車が止まらないらしいので、どこにあろうが微妙ですけど……。

利用者側のちょっとした都合で選択が変わる可能性も

その他、利用者側の事情で「リニアか東海道新幹線か?」が違ってくる場合もありえます。この選択は、ちょっとした都合やそのときの気分に左右される面が少なくないと思います。

具体例を挙げてみましょう。

たとえば、みなさんは宇都宮在住だとして、名古屋まで行くとします。東京までは東北新幹線を使うとして、そのあと東京から東海道新幹線に乗るか、品川まで行ってリニアに乗るか?

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選択1 あえて東海道新幹線で行く

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選択2 品川で乗り換えてリニアを使う

子連れや荷物が多ければ乗り換えが少ない東海道新幹線が有力

リニアと新幹線、どちらを選ぶかは状況次第でしょう。

たとえば、子どもを連れて名古屋に帰省するシチュエーションだったら、東海道新幹線を使う可能性は高いです。子ども連れ・たくさんの荷物という大変な状況で、東京で乗り換えた後、もう一回品川で乗り換えるのはシンドイ。

「ちょっと時間がかかってもいいから、途中の乗り換え回数を減らしたい」という考えです。

もっとも、名古屋で降りた後のことも考慮する必要があります。名古屋で降りて帰省先にすぐ到着するなら、東海道新幹線でゆっくり行ってもよいでしょう。逆に、名古屋で降りてからまだ先が長い場合は、リニアでさっさと名古屋まで行くのが賢明でしょう。

一人での移動ならスピード重視でリニアが有力

宇都宮から名古屋まで、家族を伴っての帰省ではなく、ビジネスでの日帰り出張なら、これはリニアを選ぶ可能性が高くなります。一人での移動、手荷物も少ないのであれば、品川での乗り換えもさほど苦にならないからです。

リニアを使えば、東海道新幹線よりも往復で2時間ほど節約できそう。日帰りで2時間の節約は大きいです。

「安く移動・ゆっくり移動」という需要もあるはず

「リニアか東海道新幹線か?」を左右する要素は、まだまだあります。

名古屋から東京に出張する際、会社側が「リニアは高くて交通費が出せない。東海道新幹線で行け」と指示するケースもあるでしょう。

逆に、会社がリニア分の交通費を出してくれた場合でも、社員があえて東海道新幹線を選ぶことがあるかもしれません。差額を懐に入れるためです(笑)

東京で仕事を終え、名古屋への帰路に就く。浮いた差額でシウマイ弁当とビールを買い、新幹線の車内でプシュップハーくぅ~と晩酌する。優雅なひとときを味わいながら、ゆっくり名古屋へ戻る……。

他にも、東京~名古屋を移動する際、ちょっと車内で一眠りしたい場合は、東海道新幹線が有力になります。リニアだと40分で着いてしまうので一眠りできませんが、ひかりならば約2時間なので、ちょうど良い感じです。

状況によっては東海道新幹線を選ぶ余地も十分ある

……とまあ長々と書きましたが、結局のところ、私が言いたいのは次の一言です。

状況によっては、リニアではなく東海道新幹線を選ぶ余地も十分ある

特に、東京~名古屋間においては、東海道新幹線のシェアはそこまでリニアに取られないかもしれません。JR東海がそう考えているとしたら、リニアの運転本数にも納得がいきます。

前回の記事では、「リニアの輸送力は少ない気がする。解せん」という雰囲気で〆ましたが、今回の記事のように考察してみると、少し疑問が薄れた気がします。

最後に、東海道新幹線主要駅の一日あたりの乗車人員数を示しておきます。将来、どれだけがリニアにシフトするでしょうか?

東 京 104,000人
品 川  37,000人
新横浜  34,000人
名古屋  74,000人
新大阪  84,000人

JR東海のホームページより

(2020/11/12)

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