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貨物列車が線路に入りきらずケツがはみ出した事件を考察

2024(令和6)年6月12日、JR西日本の東海道線で事件がありました。貨物列車が茨木駅の退避線に入ろうとしたところ、線路の長さが足りずに、ケツがはみ出してしまう事象が発生。

イメージ図

貨車を何両つないでいるかは貨物列車によって異なりますが、当該貨物列車は長編成でした。そして、茨木駅の退避線が、この貨物列車を収容するには長さ(専門用語では有効長という)が足りなかった。

つまり、「列車の長さ > 線路の長さ」という図式になってしまったのですね。

ケツがはみ出すことで信号機が赤のまま変わらなくなる理由

列車を当該番線の線路に収容しきれず、ケツがはみ出してしまう。頭隠して尻隠さず。なんともマヌケな図ですが、これは笑い事では済みません。信号機が赤のまま変わらなくなってしまったのです。

まず、貨物列車がはみ出した、後方の信号機が赤のまま固定されてしまいました。

貨物列車のケツがはみ出しているため、この状態で後ろから列車を通したら、衝突してしまいます。後ろから列車を進入させてはマズいので、信号機は赤のまま変わらない仕様なのですね。

貨物列車を前に進めて脱出させることも不可能だった模様

後ろの信号機が赤のまま変わらないのはわかった。だったら貨物列車を前に進ませて、この線路から脱出させれば解決じゃないの?

前進させれば「ケツのはみ出し」は解消する

ところがどっこい、それができまなかった。なぜか? このあたりは発表されていないので、私の推測に過ぎませんが、次のような感じではないでしょうか。

まず、茨木駅の配線は、以下のようになっています。貨物列車の前方にポイントAが存在します。

いわゆる「安全側線」というものが前方に伸びている

このポイントAは、貨物列車が駅に入ってくる際は、直進側を向いています。

列車が駅に進入している最中

そしてここが押さえてほしい点なのですが、当該番線内に列車をすべて収容しないうちは、ポイントAは直進側で固定されたままなのです。たぶん。

今回のようにケツがはみ出した状態では、「まだ列車を番線内に収容し切れていない」と機械が判定します。よって、ポイントAは直進側で固定されたまま、切り替えることができません! というわけで、列車を前に進めて脱出させられないのですね。以上が私の推測です。

つまり、二進も三進もいかない状態になったわけ

これは「鎖錠」と呼ばれる仕組みで、安全のために導入されているのですが、場合によっては今回のように厄介事を引き起こすことも……。私も、この仕組みのせいで信号機が赤のまま変わらなくなり、ダイヤがぐちゃぐちゃになって泣かされた経験があります。

原因は指令員のミス

「長さの足りない線路に貨物列車を入れた」ことによって起きた事件でした。

そもそも論として、なぜ長さの足りない線路に貨物列車が入っていく事態になったのか? JR西日本からも公式発表されましたが、指令員の信号制御ミスだそうです。

本来、この貨物列車は茨木駅の退避線に入る予定はありませんでした。ところが、ダイヤ乱れの影響により、予定を変更して茨木駅の退避線に入ることになった。

ダイヤが乱れると、本来は停車する予定がなかった駅に貨物列車を入れることは、普通にあります。その際に注意しなくてはいけないのが、今回のようにケツがはみ出さないようにすること。

「その貨物列車の長さ」と「収容する線路の長さ」を対照して、入線させても大丈夫かどうかを判断するわけです。

しかし、JR西日本の指令では、この長さチェックを行わないまま(あるいはチェックはしたけど数字を間違えて)、当該貨物列車に対して「茨木駅の退避線へGO!」と信号制御してしまったと。

エラーチェックの仕組みが働かなかった可能性はある

というわけで、指令員の信号制御ミスが原因なわけですが、ネットを眺めた感じでは、次のような疑問を抱いた人が多かったようです。

「列車の長さ」と「線路の長さ」をシステム内にデータとして入れておいて、両者を照合し、列車の長さ > 線路の長さ、つまりケツがはみ出してしまう場合は「入れません」と警報を出す仕組みはないのか?

いやね、私の記憶違いかもしれませんが、ちゃんとあるはずなんですよ。そういう仕組み。しかし、今回はそれが働かなかった。うーむ、なぜだ。

これも公式発表されていないので私の推測でしかないのですが、「指令員が手動介入で信号を引いたから」かもしれません。

信号制御は、自動制御プログラム(PRCなどと呼ぶ)によって行われるのが一般的です。入力されたデータに則って、各列車に対して自動で信号制御が行われます。

まあ、信号を引く作業は膨大な量なので、人力でやるわけないわな(笑)

ただしダイヤが乱れると、列車の発着番線を変更したいこともあります。そのときは指令員が番線データを書き換えます。この際、プログラム内にエラーチェックを組み込んでおけば、おかしな入力に対して「それって大丈夫?」と警報発出されます。イメージとしては↓図の通り。

ただし、信号を変える際は、必ずしも信号制御プログラムを介する必要はありません。指令員が直接コマンド入力をして、信号を変えることも可能です。これが手動介入です。

ダイヤ乱れで忙しいときは、ちまちまデータ変更するよりも、指令員の手動介入で直接信号を引いた方が速い場合があります。ただし、図を見ていただければおわかりですが、手動介入ではエラーチェックを介さないので、「ありえない形」も通ってしまうのです。

JR西日本の信号制御プログラムの仕様が詳しくわからないので、何とも言えないのですが、これが原因の可能性はあります。いや、そんな複雑な話じゃなくて、単に警報を見落とした可能性……は、さすがにないと思います。

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