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JR北海道の苦境 コロナで過去最大の赤字決算

JR北海道は、コロナウイルスでの売上減が響き、2019年度の連結決算は過去最大の赤字と発表した。(2020年4月28日のニュース)


JR旅客会社の2019年度決算が次々に発表されていますが、今回の記事では、JR北海道の決算を見ていきましょう。
元々の経営状況が思わしくないこともあり、今回のコロナウイルス騒動がどのくらい影響してくるか、みなさんも関心があると思います。

 

純利益はまさかの黒字決算


さて、報道では「JR北海道が過去最大の赤字」という部分だけが大きくクローズアップされていますが、決算の最終成績を示す「純利益」では、まさかの黒字決算!になっています。
(JR北海道単体では7億円の赤字ですが、グループ会社まで含めた連結決算では19億円の黒字)

ただし、これは国・北海道・関係自治体から171億円の支援を受け、それを利益として計上した結果。
したがって、この支援がなかったとしたらバリバリの赤字であり、「やったぁ今年度は黒字だー!」なんて喜ぶ余地は1ミクロンもありません。

実際、会社が通常の事業活動をした結果を示す「経常損益」という段階では、単体で204億円の赤字、連結(グループ)で135億円の赤字になっています。
報道で「過去最大の赤字」と言われているのは、この部分を指しているのですね。

意外や意外! 売上額は昨年とほぼ同じ


今回の報道を受け、世間の雰囲気は、「JR北海道のダメージがヤバい、もう駄目だ」みたいになっています。
が、物事を議論するときは、メディア等が発する雰囲気にのせられるのではなく、数字や理論を根拠にすることが大切です。

実際、JR北海道は、コロナウイルスによる売上減のダメージをどのくらい受けてしまったのでしょうか?

まずは「鉄道運輸収入」の額を数年分見てみます。
ようするに、鉄道による売上額ですね。

鉄道運輸収入の額2016年度 727億円
2017年度 728億円
2018年度 712億円
2019年度 706億円


この数字を見て、みなさんはどのような印象を受けるでしょうか?

「あれ? 売上額は去年とほとんど変わらないじゃん」
「ニュースで過去最大の赤字と言っていたから、もっと酷いと思ったけど……」

そんな感想を抱くかもしれませんね。
ついでに、利益額(といっても万年赤字なので損失額ですが)も見てみましょう。

営業利益(単体)の額2016年度 -498億円
2017年度 -525億円
2018年度 -520億円
2019年度 -521億円


これも、大きく赤字が増えたという感じではないですよね。

北海道は、2月末に鈴木知事が緊急事態宣言を出していました。
つまり、他の都道府県に比べて、コロナウイルスによる売上減少が早く始まったはずです。
その割には、このJR北海道の数字は健闘しているように見えます。

2019年度は売上が大きく伸びる……はずだった


ところが、一見健闘しているように見えるこの数字、実は“大敗”なのです。
というのも、JR北海道は、2019年度の鉄道売上額を750億円ほどと見込んでいたからです。
しかし実際は、706億円で着地してしまいました。

そもそも、2018年度の鉄道売上額712億円というのが、あまり良い数字ではありません。
2018年度は、台風や北海道胆振東部地震など自然災害の影響で、売上が伸びなかった年だからです。

2019年度は、そうした減収からの巻き返しを図った年。
令和の始まりを告げるゴールデンウィーク10連休もありましたから、好調なスタートが切れたはずです。

また、JR北海道は、2019(令和元)年10月1日に運賃を値上げしました。
運賃を値上げしたのですから、売上額も当然増えます。

こういう事情があるので、2019年度の売上額は、2018年度よりも大きく伸びていなければいけません。
ですので、「昨年とほぼ同じならば健闘している」という見方は、まったくの誤りです。

コロナウイルスで売上はおよそ半減する見込み


2020(令和2)年4~6月の3ヶ月間では、83億円の減収を見込んでいるとのことです。
これが通年続くと仮定すると、330億円程度の減収。
割合に直すと、売上目標に対して約45%減という感じでしょうか。
JR東日本やJR東海に比べれば、落ち込みは少ないですが……。

いっぽう、定期列車の運休や社員の一時帰休など、経費削減につながる行動はすでに起こされています。
それでも、次の決算での赤字(営業損失)額は、800億円くらいになるのではないでしょうか。

営業利益(単体)の額2016年度 -498億円
2017年度 -525億円
2018年度 -520億円
2019年度 -521億円
2020年度 -800億円(予想)

 

キャッシュ残高31億円 資金ショートの心配も……


というか、「次の決算では……」なんて将来の心配をしている場合ではないかもしれません。
現実的な危険は、もっと目の前に迫っています。

というのも、JR北海道はキャッシュが、つまり「手持ちのカネ」が非常に心許ないのです。
2020年3月末現在、JR北海道の手持ちのカネは、31億円しかありません。
投資活動で大きな支出があったこともあり、この1年間で急激に目減りしました。

これは、下手すると手持ちのカネが底を尽く、つまり資金ショートの心配もあるのでは……。

いや、過去の決算書を見ると、キャッシュの残高が20億円とか40億円ということも実際ありました。
それでも資金がショートすることなく、大丈夫だったわけです。
ただし、それは売上が正常だったから問題なかったのであって、現在のように売上が激減しているタイミングでは話が全然違います。

日々を凌ぐのでいっぱいか? 新たな設備投資は無理


たとえばですが、決算書を見ると、人件費が年間460億円くらいかかっています。
これを単純に12ヶ月で割るのではなく、ボーナスが年間4ヶ月分だとすれば、16で割る。
すると、だいたい30億円弱。

社員の給料は、「いま会社にカネがないから支払えなくて……」という“待った”が効きません。
それをやったら給料の遅配ですから。

つまり、手持ちのカネが毎月30億円くらいは絶対に流出していくわけです。
(実際は、人件費に含まれる社会保険料や税金は、多少の支払い猶予ができるのでしょうけど)

鉄道を維持するための必要経費は、人件費だけではありません。
列車を動かすための動力費や、設備の修繕費。

そうやって日々流出していくカネを考慮すると、キャッシュの残高31億円はかなり心配な水準では……。
もちろん、売上が正常なときであれば、残高31億円でもひとまずカネは回ると思いますが、売上減により「手元に入ってくるカネ」も激減しています。
現在の売上額では、日々の必要経費を賄うだけでいっぱいいっぱいのはず。

この状況で新たな設備投資の支出をやってしまうと、手持ちのカネが一気に吹っ飛んで資金ショートまっしぐら。
つまり、会社として発展するための投資活動が、まったく行えない状況に陥っているのです。

ですから、いまJR北海道が最優先でやらなければいけないのは、とにかく現金を搔き集めて資金繰りを安定させること。
国からの借金なり支援なりを急いで取りつけ、資金調達しないと、会社として身動きができなくなってしまいます。

JR北海道ではコマーシャルペーパーを発行できない


もっとも、資金調達を最優先にやらなければいけないのは、JR北海道だけではありません。
JR東日本やJR西日本でも、金融機関からの借金や、社債・コマーシャルペーパーの発行などで、せっせと資金調達に励んでいる最中です。

JR北海道は、コマーシャルペーパーを発行して資金調達することはできないのでしょうか?

コマーシャルペーパーとは、社債と同じようなもので、市中の投資家(といっても個人投資家ではなく、銀行や保険会社などの機関投資家)などからカネを調達するために発行するもの。
借用証書みたいなもので、早い話が借金です。

通常の社債との違いは、償還期間つまり借金の「満期」が短いこと。
一般的に、社債とは満期が1年以上のものを指しますが、コマーシャルペーパーの満期は数ヶ月程度であることが多いです。

しかし、残念ながら、JR北海道ではコマーシャルペーパーは(ほぼ間違いなく)発行できません。

というのも、コマーシャルペーパーは返済できなくなった場合の担保がない、つまり無担保の債権。
もっと簡単に言えば、信用だけでカネを貸し借りするわけ。
もし、コマーシャルペーパーを発行した会社が潰れた場合、コマーシャルペーパーはただの紙くずになります。
コマーシャルペーパーならぬトイレットペーパー同然に

担保が存在せず、信用だけでカネを貸し借りする以上、財務的に優良な信用力の高い企業しか発行できません。
いまのJR北海道には無理です。
銀行も、赤字の会社にはそう簡単に融資してくれないでしょうから、当座の資金を集めるだけでも大変なはずです。
大丈夫なんだろうか……。


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