線状降水帯、ゲリラ豪雨、台風。
大雨をもたらすこれらの事象は、鉄道運行をモロに阻害します。特に夏になると、大雨により運転見合わせが毎日のように日本のどこかで起きています。
「大雨により運転見合わせ」は頻繁にある事態ですが、その背景や裏側は、意外と知られていないかもしれません。
今回の記事では、大雨に関する話をします。鉄道を利用する側として、知っておけば有利になる情報も書いてみます。
運転見合わせは「1時間あたりの雨量」で決まる
そもそも大雨で運転を見合わせる基準は、どうやって決めているのか?
雨量計の数値です。雨量計は、数駅ごとに設置されています。イメージとしては↓の図です。
そして、1時間あたりの雨量が○ミリに達すると運転見合わせになる仕組み。
(厳密には「1時間あたりの雨量」の他に「連続雨量」という指標もありますが、ここでは割愛)
それぞれの雨量計ごとに、運転見合わせになる区間も定められています。たとえば、B駅の雨量計が基準値に達したら、A駅~C駅間が運転見合わせになる、という具合です。
どれくらいの雨量で見合わせるかは線区によって異なる
では具体的に、1時間あたりにどれくらい雨が降ったら、運転見合わせになってしまうのでしょうか?
これは路線ごとに基準値が異なります。たとえば、線路規格の良い幹線だと、1時間に50~60ミリ前後の雨で運転を見合わせるのが一般的だと思います。
(なお、同じ路線でも、区間によって基準値は違ってきます)
対して、田舎の区間になると線路規格が低いため、もう少し低い数値で運転見合わせになります。40~45ミリ、本っっ当に田舎のローカル線だと、20~30ミリで運転見合わせになる区間もあります。
あ、以上は在来線の話で、新幹線の場合はもっと基準値が高いです。つまり、新幹線は在来線よりも雨に強いというわけ。
もし在来線が大雨で運転見合わせになり、足止めを喰ってしまった場合でも、新幹線は普通に動いているケースはあるので、迂回の手段として知っておきましょう。まあ、ちょうど新幹線の接続駅で足止め、なんて都合のいい話はあまりないと思いますが……。
豪雨でも雨雲がさっさと通過すればセーフ
さて、運転見合わせの基準値は40~60ミリという数字を見て、みなさんはどう感じるでしょうか。「意外と低いな……」と感じる人もいるのではないでしょうか。
1時間に数十ミリの雨が降った、なんて事例はニュースでもよく見ますから、40~60ミリでアウトになるのは、ちょっと心許ないと思うかもしれませんね。
ただ、強い雨が降れば即座に運転見合わせになるかというと、そうでもありません。たとえば、1時間に80~100ミリの雨を降らせる雨雲がやってきても、さっさと通り過ぎればセーフであることが多いです。
運転見合わせになるのは、「それなりの雨量がそれなりに長い時間続いた場合」です。すぐに通り過ぎてしまう雨に対しては、40~60ミリという数字は、それなりに耐久性があるといえます。
線路点検が終わらないと運転再開できない
では、運転見合わせになった場合、どれくらいの時間で運転再開できるのか?
これはケースバイケースとしか言いようがありません。
大雨後に運転再開するためには、「保線係員による線路点検」を行う必要があります。しかしこの点検、雨が小康状態になってから行うもの。雨がザバザバ降り続いている状態では、そもそも点検を行えません。
山岳路線だと、係員が現地に到着するまでに時間がかかります。また、保線係員の数が限られている場合は、主要線区から点検を開始し、その他路線は点検が後回しになることもあります。ようするに、線区ごとの優先順位があると。
運転見合わせになると、駅員の案内や駅の電光掲示板、ホームページの運行情報など、いろいろな媒体から情報発信されますが、
「雨が降り続いているため、点検を行うことができません」
「係員が現地に向かっているところです」
こういう情報の段階では、運転再開はまだまだ先です。少なくとも、1時間以内に運転再開になることはないでしょうね。個人的な意見ですが、もし他の交通機関があるなら、そちらを利用することを考えるべきです。無理に駅で粘っても、状況は好転しないと思います。
点検が始まれば運転再開時刻を予想できる
現地に係員が到着して点検が始まると、「現在、係員による点検を行なっています」という情報が出てきます。ここまでくれば、運転再開の予想時刻も案内できるようになります。
というのは、大雨後の線路点検は過去に何度も実例があるので、「この区間の点検は○分くらいで終わる」という経験則があります。この経験則はそれほど大きく外れないので、点検が実際に始まってしまえば、運転再開時刻の予想ができるわけです。
ですので、「係員による点検中です」という段階の情報になれば、駅で粘って待ってみてもよいと思います。
ただし、線路点検の結果、線路に陥没が見つかった、みたいな事態になれば当然アウトですが……。
まとめ
ちょっと長くなったので、まとめます。
- 一般的には、雨量計が1時間あたり40~60ミリを計測すれば運転見合わせ
- 新幹線は雨に強いので、迂回手段として頭に入れておく
- 大雨の後には線路点検が必要
- 実際に線路点検が始まれば、運転再開の予測は立てられる
お客さん側としては、これくらい知っておけば、うまく立ち回ることができると思います。