新型コロナウイルス騒動、まだまだ収まらないですね。
満員電車でのウイルス感染のリスクが報じられていますが、その影響か、「吊り革に触りたくない」という人が増えているとの話を聞きます。
吊り革は不特定多数の人が触っているので、ウイルスが付いているかもしれない。
そんなところに摑まりたくない、というわけです。
吊り革に摑まらないと転倒する危険が
しかし、走行する列車内で吊り革に摑まらずに立っているというのは、安全という観点から言わせてもらうと、あまり良くありません。
具体的には、列車が非常ブレーキなどで急停止した場合に、転倒してケガをする可能性がある、ということです。
運転士は「やべぇっ!」と思ったときには、即座に非常ブレーキを掛けます。
異常時のブレーキ操作は、1~2秒が勝負を分けることもあります。
たらればを言っても仕方ないですが、2019(令和元)年9月に発生した、京急がトラックと衝突して脱線した事故でも、あと1秒ブレーキが早ければ、被害はだいぶ軽減されていたはずです。
(運転士を責めるわけではありませんよ)
そうした“秒勝負”のときに、「いまから非常ブレーキを掛けまーす。摑まってくださーい」なんて予告しているヒマはありません。
乗っているお客様からすれば、いきなりガツンと来るわけです。
踏ん張りきれずに転んでケガをする可能性は低くありません。
また、自身がケガをするだけならまだしも、他の人にぶつかってケガをさせてしまう危険もあります。
その場合、「お前がちゃんと吊り革に摑まっていれば、こんなことにはならなかった!」と責められるかもしれません。
いや、こうした場合の法的責任がどうなのかは、私にはちょっとわからないのですが、面倒なことになるのは確かです。
というわけで、私としては「立っている人はちゃんと吊り革に摑まること」を推奨します。
吊り革のウイルスが心配なら手袋をすればOK
そもそも、ウイルスは手の皮膚から体内に侵入してくるわけではありません。
ですから、ウイルスの付着している箇所に手で触れたからといって、それで感染するわけではありません。
(ケガなどをしていれば話は別ですが)
「それはわかってはいるが、どうしても吊り革には直接触りたくない」という人は、ビニール手袋でもして吊り革に摑まればOKです。
そして、列車を降りたらビニール手袋は捨ててしまう。
その際、手袋の外側にはウイルスが付着しているかもしれませんから、外側には触れないように手袋を外さなければいけませんが。
孫子の教え 智者の慮は必ず利害に雑う
中国の兵法書『孫子』に、次のような言葉があります。
「智者の慮は必ず利害に雑う」
賢い人は物事を考えるにあたって、利=メリットだけ、あるいは害=デメリットだけの片方を考えることはしない。
メリット・デメリットの両方を天秤にかけて、トータルで物事を考えるべし。
なにごとにも、良い面もあれば悪い面もあります。
100%メリットだけ、なんてことはありえません。
一面からしか物事を判断できないようではダメだよ、というわけですね。
今回の例に当てはめれば、
この両面から考え、どちらを重視するかということです。
もちろん、最終的な判断は個々人によりますが、私としては、吊り革に摑まることを過剰に敬遠する必要はないと思います。