各支社ごとに散らばっていた機能を一ヶ所に集約できれば、人件費や設備を共有化でき、コスト削減につながります。そのための支社再編ですね。
「管理部門の話だから現場は無関係」ではない
今回、再編の対象となるのは管理部門だけとのこと。列車運行に直接携わる部門(=現場機能)は、そのまま支社単位で残すそうです。
これだけ聞くと、「管理部門を集約するだけだから列車運行には関係ない」「効率化のためには当然の措置」という感覚の人がほとんどだと思います。
ただ、事はそれほど単純ではないでしょう。鉄道に限った話ではありませんが、会社の業務とは、「現場は現場・管理部門は管理部門」とキレイに切り分けられるものではないからです。
たとえば人事ならば、労務管理の面で、現場と管理部門の密接な連携が求められます。経理なんかもそうでしょう。工事計画ひとつ立てるにしても、予算が絡んできますから、現場だけで業務を完結させることはできません。
安全運行についても同様です。
鉄道現場の一社員として言わせてもらうと、「現場機能さえしっかりしていれば安全運行を確保できる」というのは間違った考え方です。一例として、現場が「ここは危ないから○○の設備が必要では?」と思ったとします。こうした意見を吸い上げ、必要な検討を行い、手続きを経て実現に至るまでを、現場だけで行うのは不可能でしょう。管理部門との連携が不可欠です。
他にも、管理部門が音頭を取るべき場面は多くあります。
- 安全のために現場社員に関係規則を遵守させる
- 現場で発生したトラブルの対策を立てて広く展開する
- 安全確保のために会社として必要な目標を設定する
- その目標を達成するための計画を作る
そもそも、「現場は現場・管理部門は管理部門」なんて考えをしていたら、それぞれの現場が違う方向に走り出して、会社は収拾がつかなくなるでしょう。
管理部門を集約すると小回りが利かなくなる懸念が
今回の再編ですが、近畿地方では、和歌山・福知山支社の一部機能を既存の近畿統括本部(in大阪)に集約させます。 中国地方では、広島・岡山・米子の三支社の機能を統合した中国統括本部(in広島)を設立するそうです。
これらの統括本部が、広くなった担当区域を今までと同じレベルで細かく見れるか? というと、まあ難しいでしょう。特にローカル線を多く抱えた中国地方を、広島一ヶ所から隅々までケアするのは大変なはず。小回りがちゃんと利くのかな……と。
集約の目的は効率化であり、それに伴って人減らしや異動も発生するはず。新体制に慣れるまでしばらくの間は、現場と管理部門の連携力が落ちると考えるのが妥当です。鉄道の安全を確保するための「会社としての総合力」をちゃんとキープできるか、ですね。
支社の再編・集約となれば他JR会社にも波及?
最後になりますが、JR西日本が支社機能を再編・集約するとなると、他会社もまったくの無関係ではないでしょう。
たとえばJR西日本で、「運転現場の○○の取扱いを変えたい」という話が出たとします。しかしコレ、JR西日本の一存では変えられません。JR西日本の路線にはJR貨物の列車も走っていますから、変更したければJR貨物との協議も必要です。
そういう話は最終的に、西日本と貨物の支社(場合によっては本社)レベルでの話し合い・調整が必要になってきます。支社の機能一部変更となれば、そうした場合の勝手が違ってくるかもしれません。
また、今回再編の対象となる支社ですが、和歌山支社だとJR東海、岡山支社だとJR四国、広島支社だとJR九州のエリアと接しています。境界線付近では、日常的に他社とのやり取りが発生しているわけで、そのあたりにも変化が出るのか。
もっとも、「今回集約するのは管理部門だけで現場機能はそのまま」とのことですから、運転現場レベルでは他社とのやり取りは従来通りかもしれません。ただ、具体的にどの程度の業務まで再編・集約されるかが不明なので、私のような外部の第三者には影響範囲が読めないです。
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