現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

カネの切れ目が安全の切れ目

(長文なので、今回と次回の2回に分けます)

今どきの鉄道会社の採用面接って、何を質問されるんでしょうね?
採用担当でも何でもない現場の一社員である私にはあんまり想像がつきませんが……。

ただ一つ言えるのは、私が入社したときとは社会情勢が大きく違う、ということです。

 

「台風時の計画運休」は世論の影響


昔よりも鉄道会社に向けられる世間の目が厳しくなった……とでもいいましょうか。

やはり、2005(平成17)年の福知山線脱線事故がターニングポイントでした。
この事故を境に、鉄道会社は何よりも安全を最優先すべきとされ、社会の意識もそのようになってきました。

典型的な例が「台風時の計画運休」だと思います。

これ、昔だったら世間から大ブーイングだったはずです。
が、最近では「安全のためなら仕方ない」ということで“市民権”を得た感があります。
これもやはり、「安全最優先」という世間の意識の結果でしょうね。

安全を守るために大切なのは「カネ」


こういう世の中ですから、鉄道会社を受ける学生も、「安全」というキーワードについては押さえておくべきでしょう。
たとえば、

「鉄道の安全を守るためには何が大事か?」

こうした内容が面接で質問されたり、グループディスカッションの討議テーマになったりするかもしれません。

さて、先ほどの「鉄道の安全を守るためには何が大事か?」という問いかけ、今の私ならこう答えます。

「会社として、利益をきちんと出し、カネを確保すること」

おいおい、結局はカネかよっ!? と思った方、その通りです。
カネは大事です。
安全のためには、カネを確保することが絶対必要です。

なぜなら、安全とはタダ(無料)で手に入るものではないからです。

JR北海道の「検査数値改ざん事件」


みなさんは、JR北海道の「検査数値改ざん事件」を覚えているでしょうか?

ご存じない方のために簡単に説明しておくと……
2013年、JR北海道管内で貨物列車が脱線する事故が発生しましたが、この際、JR北海道が事実と異なるデータを国交省等に提出した事件です。

この事故を機に、JR北海道がずさんな線路管理をしていたことが白日の下に晒されました。
「ずさんな線路管理」とは、規定上、整備・補修が必要なレベルの線路のズレを、人手不足などを理由にそのまま放置していたというものです。

脱線後の調査のため、線路の各種データの提出を求められますが、そこで「事実と異なる数値」を国交省等に提出したわけです。
(ここでは「改ざん」ではなく、あえて「事実と異なる」という表現にしています)

「安全への意識が低い」「モラルハザード」など、JR北海道はコテンパンに叩かれました。
これについては、言い訳の余地はないでしょう。
私も、弁護する気はさらさらありません。

しかし、この事件を単なる意識やモラルの問題で片づけてしまい、「ルールはきちんと守りましょう」とだけ言って終わるのは、少し違うのではと思います。
背景まで踏み込まないと、真の原因には至らず、同じ事故が繰り返されるでしょう。

カネもなかったのでは……


線路の補修・整備をしなかったのは「人手不足」が理由だと言われていますが、私は「カネがなかった」も事件の背景だと考えています。
(人手不足も、突き詰めていけば結局はカネの問題になります)

ご存知のように、JR北海道は深刻な経営危機に陥っています。

カネがなかったために、設備の改修や更新が思うように進められなかった。
その結果、列車が脱線するレベルまで線路が傷んでしまった……。

線路設備や車両メンテなどの業務に携わっていると、多かれ少なかれカネの問題に直面するそうです。
私も、そっち系の部署の人から話(半分は愚痴みたいなもんですね)を聞いたことがありますが、

「これを早く更新したいんだけど、予算がなかなかつかない」
「他のところの改修にカネを持っていかれた」

ぶっちゃけ、メーカーからは「早く取り替えた方がいい」と言われている老朽設備を、「予算が……」という理由でだましだまし使っている例はたくさんあります。
(あ、メーカーの推奨期限を過ぎているというだけで、法令や社内規定に違反しているわけではないですよ。念のため)

カネの問題は、死活問題なのです。

カネの切れ目が安全の切れ目


JR北海道は、人が少ない地域に広大な線路を維持し、冬はとも戦わなければなりません。
線路設備の保守は、他の鉄道会社よりも大変です。

そこへきて、赤字続きの深刻な経営危機……。

ここからは私の勝手な想像ですが……

JR北海道も、最初は社内規定にのっとって、きちんと整備をしていたはずです。
しかし、人手不足に加え、経営状況の悪化でカネの都合がつかなくなり、一部の線路の手入れが追い付かなくなった。
やむを得ず放置していたが、とりあえず事故は起きなかった。

そうなると今度は、「なんだ、少しくらい規定を逸脱しても大丈夫じゃないか」となり、モラルハザードが起きる……。

こうした流れだったのでは、というのが私の(勝手な)想像です。
少なくとも、この事件はJR北海道の経営難と無関係ではないと思います。

もし……と言っても仕方ないのですが、JR北海道の経営状況が良好だったならば、この事件は起きなかったのではないでしょうか。

「カネの切れ目が縁の切れ目」ならぬ「カネの切れ目が安全の切れ目」

長くなったので、次回に続きます。