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JR外房線の脱線原因は置き石? それとも……

2020(令和2)年5月8日に発生した、JR外房線の脱線事故に関する記事です。

すでにニュースで報じられていますが、前月の4月に、置き石と思われる事象が二度あったとのこと。そのため、今回の脱線原因は置き石の可能性もあるとして、警察が捜査をしています。

この事故に関する記事は以前にも書いたのですが、今回は補足見解を述べたいと思います。

線路に置き石自体は珍しいことではない

4月に二度も置き石と思われる事象が発生している……。読者のみなさんは、もしかすると、これはかなり特殊と感じるかもしれません。

が、実は置き石自体はまったく珍しいことではありません。毎日のようにある……とまではさすがに言いませんが、よくあることです。カラスのいたずらか人為的なものかはともかく、ウチの鉄道会社だけでも毎年それなりの件数があります。

統計がないので断言はできませんが、全国合計だと、少なくとも年間に数百というレベルで発生しているはず。ニュースバリューがないので、ニュースになっていないだけにすぎません。

置き石が原因で脱線した実例は何件?

実際のところ、置き石が原因で列車が脱線した事例は、いままでどれくらいあるのでしょうか? 調べてみましょう。

脱線などの大事故が起きた場合、原因を調査するのは運輸安全委員会という組織です。運輸安全委員会のホームページでは、調査結果の報告書を閲覧することができます。

『列車脱線事故』で検索すると、記録の残る2001(平成13)年以降、ヒット件数は191です。
(この記事を書いている2020年5月23日現在の検索数)
このうち、置き石が原因と推定されている事故は何件かというと……

 1件

実例① コンクリートブロックで近鉄が脱線

その1件とは、2003(平成15)年6月8日、三重県の近鉄で起きた脱線です。線路上にコンクリートブロックが置かれており、運転士が発見してブレーキを掛けたものの、間に合わずに接触して脱線しました。

コンクリートブロックの大きさは、34cm×13cm×15cmだったそう。みなさんが想像している置き石とは、ちょっとスケールが違うかもしれませんが……。

↓鉄道事故調査委員会(当時)の報告書
https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/rep-acci/2003-6-2.pdf

ちなみにこの事件は、2日後に現行犯で犯人が捕まったそうです。この犯人は、20件近い列車妨害をやったのだとか。↑の報告書にも、『最近、置き石の事件が続いている』という運転士の供述があります。

実例② U字溝のフタで京阪電鉄が脱線

外房線の事故を受け、「置き石で脱線」の例としてネット上で盛んに紹介されているのが、1980(昭和55)年2月20日に起きた京阪電鉄での脱線・横転事故。

この事故は、中学生たちがいたずらで、コンクリート製U字溝のフタを線路上に置いたという極めて悪質なもの。詳細はわかりませんが、障害物の大きさは、おそらく、先ほど紹介した近鉄事件のコンクリートブロックと同程度だと思われます。

また、発生時刻が夜だったことから、運転士も衝突直前まで気付かなかったのでしょう。

列車を脱線に至らせるのは相当大きな障害物

読者のみなさんは、置き石というと、バラストくらいの大きさの石を想像するかと思います。その程度の石を列車が踏み潰した・跳ね飛ばした回数は、調査記録が残る2002年以降だけでも、千や二千どころではないでしょう。京阪電鉄事故の起きた1980年以降でカウントすれば、それこそ数千~万になるかもしれません。

しかし、それだけ石を踏んでおきながら、脱線事故は起きていないのですね。

結局、列車を脱線にまで至らしめるのは、相当大きな障害物です。上で紹介した2つの脱線事例からも、それがわかります。

大きな障害物の場合、運転士から視認でき、事故後もブツが現場に残っている可能性が極めて高いです。

しかし、外房線の事故では、そういう話は今のところ出ていません。脱線列車の運転士も、「突き上げるような音と衝撃を感じて非常停止した」と供述しており、線路上に障害物を見つけてブレーキを掛けたのではない。運転士が見落とした可能性もゼロではないですが、仮にそうだとしても、現場にブツが残っているはず。

それがないということは、置き石があったとしても、さほど大きくなかったということになります。少なくとも、近鉄や京阪電鉄のようなレベルの置き石(というか障害物)があったとは、ちょっと考えにくい。

いくつかの要因が重なって脱線した?

では結局、外房線の脱線原因は何なのかというと、これはもう「単独の要因」ではなく「複合要因」ではないでしょうか。

単独では脱線を引き起こさないレベルの要素でも、それが足し算のように重なると、脱線に至ることがあります。たとえばですが、

  • 車輪の整備状態 基準値内だが、やや悪い
  • レールの整備状態 基準値内だが、やや悪い
  • 路盤がやや緩んでいたが、整備基準内
  • 現場が急カーブやポイント上

一つ一つの要素を見ればセーフでも、このように悪条件が重なると、脱線を引き起こすことがあります。先ほど数字を挙げた191件のうち、約10件は、このような「複合要因」での脱線だと推定されています。

外房線の事故は、現在のところ、決め手レベルの原因が見つかっていません。となると、複合要因を考えてみてもよいのではないでしょうか。

たとえば、車輪やレール、路盤の状態はすべて整備基準値内だったが、やや悪かった。そこに置き石が1個ではなく、3~4個もされた。

こういう場合なら、さほど大きくない置き石でも、脱線が起きうるかもしれません。運輸安全委員会や警察の調査が待たれます。


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