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終電繰り上げ 実は夜間工事の時間確保につながらないケースも

JR東日本とJR西日本では、終電(最終列車)の繰り上げを検討中。
終電を繰り上げて夜間の線路工事ができる時間を増やし、工事計画にゆとりを持たせることで、作業効率の向上や作業員の労働環境の改善につなげる狙い。


最近話題の終電繰り上げ。
まあ、JR西日本では昨年(2019年)から終電繰り上げを検討していたようですから、最近と書くのは語弊があるかもしれませんが……。

それはともかくとして、今回の記事では、この終電繰り上げと「線路工事」の関係について書きます。

 

【基本知識】大掛かりな工事は夜中にしか行えない


まず、線路工事に関する基本的な説明から。
線路設備は劣化してくるので、たとえば以下のような工事が欠かせません。

・レール交換
・レール位置のズレを修正
・架線の補修

これらの保守工事は、列車が走っている時間帯では施工できないので、列車のいない夜中に行われるのが一般的です。
「その日の最終列車」が通過してから、「次の日の始発列車」が動くまでの数時間で工事するのですね。

なお、工事は鉄道会社本体の社員だけでなく、関連会社・下請け会社の協力で行うのが一般的です。

「作業員の減少問題」を終電繰り上げで解消!


工事の時間は、たくさん確保できるのであれば、それに越したことはありません。
が、あまり終電を早くしたり、はたまた始発列車が遅かったりすると、お客様にとっては不便なダイヤになってしまう……。
そのあたりのバランスが難しいわけです。

しかし近年、状況が変わってきました。

JR西日本(と関連会社・下請け会社)は、線路工事に従事する作業員の減少に悩んでいるそうです。
コスト削減のために意図的に人員を減らしてきたのか、あるいは採用したくても学生にソッポを向かれていたのか……。

ちなみにウチの会社でも、保線部署の社員が、「若手の定着率が低い」と嘆いていたのを聞いたことがあります。

原因はともかくとして、作業員が減れば、工事をさばくのは大変になります
そういう悩みを解消するための方法が、終電繰り上げです。

仮に、いままで午前1時だった終電を、午前0時に繰り上げる。
すると、工事可能時間が1時間増える。
そうすれば、少ない作業員でも工事をさばける。
また、余裕のある工事計画が立てられれば、作業員の労働環境改善につながり、離職防止や採用の促進につながる。

これが、終電繰り上げの大まかな狙いです。

貨物列車が走る路線では工事時間を増やせない?


ただし、終電を繰り上げても工事時間を増やせないケースがあります。
貨物列車が走る路線です。

たとえば、日本の大動脈である東京~大阪間だと、東海道線を夜中に爆走する貨物列車は、上下それぞれ20本ずつくらいあります。
(途中の中京圏発着の列車を含む)

みなさんが大好きなスーパーレールカーゴ、トヨタロングパスエクスプレス、福山レールエクスプレスなんかも、この中に含まれていますね(^^)

夕通勤ラッシュを終えた20時くらいから、東京と大阪では貨物列車がぼちぼち発車していきます。
大砲の弾を一発ずつ撃つように、間隔を開けながらです。
そして夜中の東海道線を爆走し、陽が昇るくらいの時刻に終着駅にすべり込みます。

サンライズ出雲・瀬戸に乗って、1~4時くらいまで起きていた経験のある人、いますか?
この時間帯、貨物列車とたくさんすれ違ったはずです。
下手すると、それこそ数分おきくらいに。
「貨物大行列」「貨物流星群☆彡」とでも呼ぶべき現象ですね(^^)

工事可能時間の確保を巡るダイヤ改正での攻防


話を夜間工事に戻しましょう。

「工事を始める直前の列車」が旅客列車ならば、終電繰り上げによって工事時間を増やせます。
しかし、「工事を始める直前の列車」が貨物列車だと、旅客列車の終電を繰り上げても工事時間は増えません。

つまり、JR旅客会社からすれば、貨物列車が走るせいで夜間工事の時間をじゅうぶんに確保できない、ということがあるわけです。
いっぽう、着実に業績を向上させてきたJR貨物からすれば、むしろ列車本数を増やしたい。

両社の利害は相反しているわけで、その思惑がぶつかるのがダイヤ改正です。

JR旅客会社
「工事時間確保のために、貨物列車の走る時間帯を縮小させたい」

JR貨物
「いやいや、ウチもこれだけの走行時間帯は確保したい」

両社の間では火花散る熾烈な攻防戦が繰り広げられ……ているかどうかは知りませんが、ダイヤ改正における一つの焦点であることは確かですね。

大規模工事のときは貨物列車を時刻変更することも


大規模な工事をするときは、通常の工事時間では足りないことがあります。
その場合は、工事時間を広げるために、貨物列車を時刻変更する場合があります。

具体的には、工事の前後を走る貨物列車の運転時刻を変えて、工事の時間を大きく取れるようにするのです。

工事計画は、半年や1年という単位で管理されています。
また、貨物列車の時刻を変えるということは荷主さんにも影響が及ぶので、工事の1週間くらい前になって、「この貨物列車の時刻を変えてよ^^」みたいなことはできません。

そのため、工事の数ヶ月前から、JR旅客会社とJR貨物の間でダイヤ調整をするのですね。

夜間工事にかこつけた減便が行われるかも


以上のように、貨物列車のダイヤは、夜間工事と密接に関連しています。
ですので、貨物列車が走る路線では、終電を繰り上げても工事時間が増やせるとは限りません。

もし、「工事を始める直前の列車」が貨物列車という路線で終電繰り上げがされたら、それは夜間工事にかこつけた体のいい減便というわけですね(笑)


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