2019(平成31)年3月13日、JR西日本の近畿エリアで大規模な遅延が発生しました。
JR西日本のホームページでは、「車両トラブル」との表記ですが、正確には「防護無線の誤動作」が原因です。
今日は、この「防護無線」についての雑学を書きますね。
事故が起きたときの最優先事項は「他の列車を近づけないこと」
このブログを見ている人の大部分は、鉄道に詳しいでしょう。
防護無線のことも知っていると思います。
基本的な説明は省略してもよかったのですが、それでは困る読者の人もいるかもしれません。
ということで、まずは「防護無線とは何ぞや?」の説明をしておきます。
「防護無線のことは知っているよ」という人は、読み飛ばしてください。
脱線・衝突などの重大事故から、人身事故や線路設備の故障など、鉄道ではさまざまなトラブルが起こりえます。
こうしたトラブルが発生した時に、いの一番に行うべきことは何でしょう?
それは、他の列車を近づけないことです。
トラブルの現場に他の列車が近づくと、二次災害が発生する可能性があります。
それは絶対に防がなければなりません。
防護無線とは「危ないから近寄るな」という危険信号
トラブルの現場に他の列車を近づけない──そのために使われるのが防護無線です。
たとえば運転中、何かにぶつかったり、線路に異常を発見したりした運転士は、防護無線のスイッチを押します。
すると、周辺に向けて電波が発信されます。
この電波を受信した列車は、問答無用で直ちに停車しなければなりません。
それによって、電波の発信元 = トラブルの現場に他の列車を寄せ付けない。
これが防護無線の仕組みです。
他の列車に対して「危険だから近寄るな」とテレパシーを発するようなもんですね。
防護無線を飛ばせる範囲はどれくらい?
周辺の列車に向けて、危険を知らせる電波を飛ばす。
ここで問題になるのが、「周辺」とはどれくらいの範囲なのか? ということです。
防護無線機が電波を発信できる範囲は、一応、半径1㎞くらいという設定になっています。
なぜ1㎞という設定なのでしょうか?
在来線の鉄道車両は、最大のブレーキを使えば、最高速度で走っていても数百メートルで止まれる性能です。
つまり、半径1㎞の“バリア”を張ってしまえば、他の列車はトラブル現場の手前で止まってくれるだろう、という考え方です。
実際の発信範囲は半径1㎞どころじゃない!
さて、さきほど防護無線の設定距離を「一応、半径1㎞くらい」と書きました。
なぜ、一応なんて書いたのか?
現実には、防護無線が飛ぶ範囲は半径1㎞どころじゃないからです。
もっと遠くまで電波が飛びます。
下手すると、10㎞くらい飛ぶこともあります(笑)
なぜそんなことが起きるのかというと、電波は「水物」だからです。
地形や天気などの諸条件により、予想以上に広範囲に飛ぶことがあります。
たとえば、高架を走る列車は、地上よりも高い位置にいるので防護無線を遠くまで飛ばせます。
また、高架を走る列車は、地上よりも防護無線を受信しやすいです。
私の経験上、「発信元に近い地上」よりも「発信元から遠い高架上」の方が防護無線を拾いやすいですね。
最近は、特に都市圏で「線路の高架化」が進んでいます。
そのため、防護無線を受けて列車が止まってしまうエリアが広くなる傾向があります。
まあ、列車の安全を守るためのシステムなので、そのあたりは大目に見てください。
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