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防護無線とは? 二次災害を防ぐための「近寄るな!」という危険信号

ピピピピピピ……

走行中、運転室から突然ピピピ音が鳴り始めて、列車が急停車した。そして、「危険を知らせる信号を受信したため、緊急停止いたしました」との車内放送が流れた。

そんな経験、ありませんか?

このピピピ音は、「防護無線」というものです。今回の記事では、防護無線の解説や裏話、私の経験談を書きます。

事故が起きたときの最優先事項は「他の列車を近づけないこと」

このブログを訪れる人の大部分は、鉄道に詳しいでしょう。防護無線も知っていると思います。が、中には「防護無線ってなに?」という読者さんがいるかもしれません。

ということで、まずは基礎知識の説明から。「防護無線のことは知っているよ」という人は、読み飛ばしてください。

脱線・衝突などの重大事故から、人身事故や線路設備の故障など、鉄道ではさまざまなトラブルが起こりえます。こうしたトラブルが発生したとき、いの一番に行うべきことは何でしょう?

それは、他の列車を近づけないことです。

トラブルの現場に他の列車が近づくと、二次災害が発生する可能性があります。それは絶対に防がなければなりません。

トラブルの現場に他の列車を近づけない──そのために使われるのが防護無線です。

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写真の赤丸が「防護無線機」

たとえば運転中、何かにぶつかったり、線路に異常を発見したりした運転士は、防護無線機のスイッチを押します。すると、周辺に向けて電波が発信されます。「ここは危険だから近寄るな!」と近くの列車に知らせるのですね。

この電波を受信した列車は、問答無用で直ちに停車しなければなりません。それによって、電波の発信元 = トラブルの現場に他の列車を寄せ付けない。

これが防護無線の仕組みです。

防護無線を飛ばせる範囲はどれくらい?

周辺の列車に向けて、危険を知らせる電波を飛ばす。ここで問題になるのが、「周辺」とはどれくらいの範囲なのか?

防護無線機が電波を発信できる範囲は、一応、半径1㎞くらいという設定になっています。なぜ1㎞という設定なのでしょうか?

在来線の鉄道車両は、最大のブレーキを使えば、最高速度で走っていても数百メートルで止まれる性能です。つまり、防護無線で半径1㎞の“バリア”を張ってしまえば、他の列車はトラブル現場の手前で止まってくれるだろう、という考え方です。

実際の発信範囲は半径1㎞どころじゃない!

さて、さきほど防護無線の設定距離を「一応、半径1㎞くらい」と書きました。

なぜ、一応なんて書いたのか?

現実には、防護無線が飛ぶ範囲は半径1㎞どころではないからです。もっと遠くまで電波が飛びます。下手すると、7~8㎞飛ぶこともあります(笑)

なぜそんなことが起きるのかというと、電波は「水物」だからです。地形や天気などの諸条件により、予想以上に広範囲に飛ぶことがあります。

また、最近は都市圏で「線路の高架化」が進んでいます。高架を走る列車は、地上よりも高い位置にいるので防護無線を遠くまで飛ばせます。受信の場合も同様で、他の列車が発した防護無線を拾いやすいですね。

そのため、防護無線を受けて列車が止まってしまうエリアが広くなる傾向があります。まあ、列車の安全を守るためのシステムなので、そのあたりは大目に見てください。

防護無線のスイッチを押すのは勇気がいる

さて、あとは私の経験談を書きます。

乗務員をしていたとき、この防護無線のスイッチを押したこと、私はあります。

線路内に侵入していた人を発見したとき。
反対線路の架線にビニールが引っ掛かっているのを発見したとき。

いずれも、すぐに他の列車を止めないと危険な状況。躊躇なく防護無線のスイッチを押すべき……なのですが、実際はめちゃくちゃ勇気がいりました。

初めてのときは、「ちょっ、えぇ~何アレ!? ……これ防護無線押さなきゃダメ? マジ勘弁してよ。もう~エイヤッ」みたいな(笑)

先ほど説明したように、防護無線を使うと周辺の列車が全部止まります。ダイヤに少なからず影響を与えるのですね。自らの手でダイヤ乱れを引き起こすわけですから、安全上必要な措置とはわかっていても、気軽にポチッと押せるものではありません。

これは私に限った話ではなく、だいたいの乗務員がそうです。というか実際、押せなかった乗務員もいるんですよ。

背後でピピピ音! 報告の第一声を聞く前に「ヤバい」

もう一つ現場の話。

私は現在、指令員という仕事をしています。飛行機でいうところの管制官だと思ってください。たとえば、列車でトラブルが起きたとき、乗務員は無線や携帯電話で指令に報告してきますが、それに指示を与えるのが仕事の一つです。

人と触車したようなヤバい事態に遭遇すると、乗務員は真っ先に防護無線を発信します。それから指令に連絡を入れるので、防護無線のピピピ音が鳴り響いている状態で通話することになります。

指令「ただいま指令を呼ばれた乗務員、どうぞ」
乗務員「こちら○○列車の運転士です。ただいま……」ピピピピ……

こんな感じです。無線が入った際、背後からピピピ音が聞こえたら、報告の第一声を聞かずとも「あ~ヤバいことが起きたな」と瞬時にわかります。

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本記事の写真提供 tomoさん

本記事内の写真は、はてなブロガー・tomoさんが運営する『乗り物好きによる旅行ブログ』から拝借しました。写真使用の許可をいただき、ありがとうございました(^^)

『乗り物好きによる旅行ブログ』は、鉄道旅だけではなく、飛行機旅も取り上げているのが特徴です。記事のボリュームもちょうどよい感じで、文章もサクサク読めます。個人的には「宿泊記」のジャンルの記事が好きですね。ブックマも複数しています。