現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報

趣味で鉄道好きな人はもちろん、就職・転職等で鉄道業界に興味がある人もどうぞ! 現役鉄道マンが、鉄道の雑学や裏話を語ります。

定時運行は「安全」に直結する

こんばんは、現役鉄道マンのKYSです。

前回に続いて、「定時運行と安全性」の関係について書きます。
「前回の記事を見ていない」という方は、まずは↓の記事をご覧になることをオススメします。

blog.kys-honpo.com

 

省令の意味


以前、こちらの記事でも少し触れましたが、

鉄道に関する技術上の基準を定める省令

というものが存在します。
この省令に、以下のような条文があります。

(列車の運転時刻)
第九十九条 列車の運転は、必要に応じ、停車場における出発時刻、通過時刻、到着時刻等を定めて行わなければならない。
2 列車の運行が乱れたときは、所定の運行に復するように努めなければならない。


ようするに「列車は決められた時刻通りに運転し、遅れが発生した場合は回復するように努めよ」という意味。

なぜ、わざわざこんなことを条文化しているのでしょうか?
言い換えれば、この条文の趣旨とは?

「だって、列車が遅れたら利用客が困るじゃん。
 利用客に迷惑をかけないように鉄道会社は頑張れー、みたいな。
 そういう感じの意味でしょ?」

そう考えた方、残念ながらそうではありません。

この条文の裏にある思想とは、

「鉄道とは、定時運行している姿が安全なのだ。
 だから、できるだけ遅れは取り除いてくださいよ」

ということです。

鉄道現場の作業は「ダイヤ化」されている


鉄道の現場では、日々さまざまな作業が行われていますが、「ダイヤ化」されている作業も多いです。

たとえば、「〇〇係員は、10時に作業Aを、11時に作業Bをせよ」といった感じです。
運転士や車掌の仕事も、作業が細かく指定されています。

〇時〇分 どこどこの場所に出勤せよ
最初に乗務する列車は列車番号△△
A駅を〇時〇分に発車して、B駅に〇時〇分に到着
〇時〇分から〇時〇分まで休憩

このように、現場の係員一人ひとりの作業内容・作業時刻が「ダイヤ化」されています。
その作業の組み合わせによって、鉄道の現場が動いているわけですね。

ダイヤ乱れは作業の乱れにつながる


ところが、列車遅れ(ダイヤ乱れ)の事象が発生すると、これらの「作業ダイヤ」も狂ってしまいます。
それにともなって、作業手順を変更したり、突発的な作業が必要になったり……

言い換えれば、「イレギュラー」が発生するわけですね。

作業の中に、そうしたイレギュラーが紛れ込むと、ミスを犯す可能性が高くなります。
それは、鉄道の安全を脅かすことを意味します。

裏を返せば、列車の定時運行が保たれていれば、余計なイレギュラーは発生せず、作業ミスの可能性も低いわけです。
「鉄道は、定時運行している姿が安全なのだ」とは、こういう意味なのです。

定時運行していれば衝突・追突事故は発生しない


当たり前の話ですが、列車ダイヤというものは、列車同士が衝突・追突しないことを前提で組まれています。

つまり、すべての列車がダイヤ通りに動いている、すなわち定時運行の状態を保っているならば、衝突・追突事故は絶対に発生しないという理屈になります。
これも「鉄道は、定時運行している姿が安全なのだ」を示しています。

1991(平成3)年に発生した「信楽高原鉄道の衝突事故」。
直接的な事故原因は「信号システムの無断改修」や「閉そく取扱い違反」ですが、列車が遅延していたことも事故の“下地”といえます。

もし……と今さら言っても仕方ないのですが、関係列車が定時運行していれば、この事故は起きなかったかもしれません。

「定時運行 = 安全」の意識が大切


「定時運行を保つことは、鉄道の安全を高める」。
理解していただけたでしょうか?
これがさきほど示した、省令第99条の考え方なのです。

前回の記事でも書きましたが、やはり「程度の問題」です。

定時運行に固執しすぎると、どうしても無理が生じます。
しかし、一方で「遅れを早く回復させて定時運行に戻せれば、それだけ安全向上につながる」ことも意識しておかなければならないでしょう。

福知山線脱線以降、「安全第一」という言葉が声高く叫ばれ、定時運行は守れなくても仕方ない、みたいな雰囲気になりました。

確かに「安全第一」は絶対の義務です。
しかし、定時運行と安全は、「あちらを立てればこちらが立たず」の関係ではなく、表裏一体の関係であることを理解してもらいたいと思います。