前回の記事は、「鉄道マンは遅刻をすると大変なことになる」というものでした。
業界用語では出勤遅延といいますが、これをやらかした鉄道マンは、どんな目に遭うのか?
- 本人に対し、徹底的な事情聴取が行われる
- 注意喚起の文章が掲示され、「あいつ、出勤遅延したってよ」と職場内で晒される
- 人事の記録に「出勤遅延あり」と刻まれ、出世に響く
……というように、なかなか厳しい処置が待っていますよ、という内容の記事でした。「時間を守ること」がいかに重要視されているかがわかりますね。
正直、そこまで厳しくしなくていいんじゃね? と思う人もいるでしょうが、鉄道会社が「時間を守ること」に厳しいのには、それなりの理由があります。
理由① 時間を守ることが安全輸送につながる
鉄道マンが時間厳守すべき理由その1。安全輸送のため。
鉄道会社が社会から強く求められているのは安全輸送です。噛み砕いた言い方をすれば、事故を起こさずに列車を運転することが鉄道会社の使命。その使命を果たすためには、係員の時間厳守が必要なのです!
……と言われても、全然ピンとこないですよね。もう少し具体的に話しましょう。
簡単に言えば、「時間を守ることが安全を守ることにつながる」のです。
たとえば、列車には運転時刻(ダイヤ)が定められていますよね。当たり前ですが、この列車ダイヤは、列車同士が正面衝突や追突をしない前提で設定されています。つまり、すべての列車が時間通りに走っていれば、正面衝突や追突の類の事故は発生せず、それだけ安全度は高いのです。
もし列車ダイヤが乱れると、こうした「時間を守ることによる安全の担保」がなくなってしまい、それだけ安全度が削られます。
また、列車ダイヤが乱れると、駅員・車掌・運転士をはじめとした現場係員はバタバタします。作業がバタバタすれば、それだけミスが発生する可能性も高まります。作業の乱れはミスの温床、すなわち事故の芽を生みます。
「時間を守ることが安全を守ることにつながる」とは、こういう意味です。鉄道マンが時間を守ることの大切な理由の一つが、これなのです。
理由② 時間を守ることで全体が円滑に動く
鉄道マンが時間厳守すべき理由その2。時間を守ることで全体が円滑に動くから。
現場係員には、定例作業の内容と時刻が指定されています。作業ダイヤと呼んだりします。
- 社員Aは10時00分に○○の作業を行い、10時25分に△△の作業を行う
- 社員Bは10時15分に◇◇の作業を行い、10時35分に▽▽の作業を行う
こんな感じですね。
鉄道は、これら全員の作業が歯車のようにかみ合う(連動する)ことにより、一つのシステムとして動いているのです。
乗務員もそうですよね。
乗務員それぞれに、どの列車を担当するか・どこで交代するかが厳密に割り振られていて、その組み合わせで列車が動いているのです。
全体が歯車のようになっていますから、一箇所が狂えば全体に影響します。一人の作業の遅れが、他の作業に影響を及ぼすのです。
ですから、遅刻をして作業に穴をあけるなどは論外なのです。大げさな表現をすれば、「時間が守れない人は鉄道のシステムを乱す迷惑な人」といえます。
理由③ 社会的影響が大きい
鉄道マンが時間厳守すべき理由その3。社会的な信用のため。
ときどき、「駅員が寝坊して駅のシャッターを開けられず、始発列車にお客さんが乗れなかった」みたいなニュースがあります。係員の寝坊がニュースになるだなんて、他の業種ではほとんどないですよね。鉄道は、それだけ社会的影響が大きいのです。
時間を守らないことで、社会的信用が大きく失われることもある以上、時間管理には厳しくならざるを得ない、というわけです。
鉄道会社に時間を守れない人は不要
こうした複数の理由から、鉄道マンは時間を守ることが厳しく求められるのです。
残念ながら、世の中には、そもそも「時間を守る」という概念のない人がいます。
私、婚活経験者ですが、やっぱりそういう人がいるんですよ。お見合いやデートの約束時間に平気で遅れてくる人が……。鉄道会社で働いていると、同僚は「時間を守る人」ばかりですから、「時間を守らない人」の存在に軽くカルチャーショック(?)を受けたものです。
それはともかくとして……遅刻グセのある人は、鉄道会社にまったく向いていません。もし間違って就職してしまったら、本人と会社、お互いが不幸になるだけです。
……と、少し脅すような言い方になってしまいましたが、あまり神経質になる必要もないですね。社会常識の範囲内で考えてもらえれば、それでじゅうぶんです。