妻「ちょっと! 行き過ぎでしょ!」
私「いいんだよ! これくらいのオーバーランは許容範囲だって!」
妻「本職じゃないの!?」
私「いまは指令員だから!!」
『電車でGO!!』といえば、鉄道にあまり興味がない人でも知っているでしょう。いわゆる「運転シミュレーターゲーム」ですね。
なにこれカッケー! 運転士魂が燃え上がる
先日、ちょっと遠くのショッピングモールに買い物に行ったら、ゲームコーナーで『電車でGO!!』のアーケード版を発見しました。
おおー、映像がキレイやなあ。昔の『電車でGO!!』は、もっとちゃっちい映像だったと思うが、いつの間にこんな本格的になったのか。鉄道会社が教習所等に備えている運転シミュレーターよりすごくね?
……と、目が釘付けになってしまった(笑)
運転士の職から離れて[ピー]年。忘れていた運転士魂が、メラメラと燃え上がってくるのを感じる。
よーし、妻と娘にカッコいいところ見せちゃうぞー
(^^)
どの路線を運転する? JRから私鉄までバリエーション豊か
チャリンチャリンと百円玉を2枚投入。
路線選択画面が出てきた。
山手線 !!
『電車でGO!!』といえば、やっぱ山手線ってイメージだよね。昨年(2020年)開業した高輪ゲートウェイ駅も、ゲーム区間に含まれている模様。
京浜東北線 !!
山手線に並ぶ、日本を代表する路線。この路線がなくっちゃ、『電車でGO!!』とは言えまい。
総武線 !!
山手+京浜東北の両横綱に続いて、首都圏の代表路線・総武線も登場。まさに王道の選択。
中央線(名古屋)!!
おー、JR東海からは中央西線ね。JR東海は『電車でGO!!』のイメージがあまりないが、登場させるなら、中央西線は妥当なところかと。
大阪環状線 !!
JR西日本だと、やはり大阪環状線が『電車でGO!!』にふさわしい。でも欲を言えば、東海道・山陽線を130㎞/hでぶっ飛ばす新快速もやってみたい……って、まあゲームの仕様的に無理か。
(新快速の運転士経験者いわく、「130㎞/hからの駅停車ブレーキはスリル満点で怖い」らしい)
阪神本線 !!
『電車でGO!!』といえばJR線のイメージが強いが、最近は私鉄もあるのか。しかし阪神を取り上げるとは、なかなかオツな感じ。
名鉄名古屋本線 !!
シブいなあ(笑)
てか、中央西線もあるんだし、名古屋から二つもいらない気がするぞ。東京メトロ(地下鉄)とか、もっと他にあるのでは……。
「ジェットカー」の阪神に決定!
さて、どの路線を運転するか。「せっかくだから私鉄っしょ」という特に根拠のない理由で、阪神か名鉄にしようと考えるが、かなり迷う。
ん? ちょっと待って。
この阪神の車両って、ひょっとしてジェットカーじゃね?
阪神のジェットカーとは、通常よりも高加速性能を持たせた車両。ようは、めっちゃ加速力が高いのである。
なぜ、高加速性能のジェットカーというものがあるのか?
阪神本線の特徴として、駅間距離が短いことが挙げられる。つまり、各駅に停車する普通列車は、加速→停車を短い間隔で繰り返す。
もし加速性能が低いと、加速→停車を短い間隔で繰り返す普通列車は、運転で余計な時間を喰う。普通列車は、急行などの速達列車の合間を縫って走るので、チンタラ走ると前後を走る速達列車のスムーズな運転を邪魔してしまう。そのため、速達列車から“逃げ切れる”よう高加速仕様にしてある。
なお、阪神のジェットカーは、運転操作の難しさから見習運転士泣かせの車両として有名。
よーし、これだ(^^)
阪神本線に決定し、続いては運転区間の選択。といっても、よくわからない。「阪神といえば甲子園球場」というイメージがあったので、適当に「武庫川 → 鳴尾 → 甲子園」をチョイス。
本物の運転士でも初見の路線の運転は難しい
それから、操作方法の説明が表示される。「ハンドルを手前に引けば加速できますよ」とか「レバーを奥に倒すとブレーキですよ」とか「ペダルを踏むと警笛が鳴ります」とか。運転士経験者には釈迦に説法なので、[次へ]を押しまくって全部スルー。
最後に、「運転支援システム」をON・OFFのどちらにするかを聞かれた。列車の運転でもっとも難しいのは「駅停車時のブレーキ」だが、運転支援システムをONにすれば、ブレーキ操作その他をサポートしてくれるらしい。
こちとら素人じゃねぇんだよ!
OFFに決まってるだろうが!
……と強気の選択をしたが、実はけっこう危ないかもしれない。
みなさんは、「本物の鉄道マンなんだから『電車でGO!!』も上手に運転できるんでしょ?」と思うかもしれないが、実はそうではない。
上手な運転をするのに必要なのは、何よりも「情報」である。
- 次の駅までの距離は?
- カーブなどの速度制限箇所はある?
- 何㎞/hくらいまで出せば、定時運転できる?
- ブレーキを掛け始める地点は、どのあたりが適切?
こういう情報をあらかじめ知っていて、初めて上手な運転ができる。ようは、これらの情報がまったくない初見では、いかに鉄道マンといえども上手な運転などできない。
だから、運転支援システムをONにした方が無難かもしれないが、それはプロのプライドが許さない。
【1区間目】武庫川 → 鳴尾
さあ、いよいよ運転開始。
さて、この初見の路線、いったい何㎞/hで走ればいいんだ? わからん、わからんぞ!
わからんが、画面に示された情報によると、次駅まで1.2㎞・約100秒。
簡単な目安としては、「60㎞/hで走ると1分で1㎞進む」。よって、次駅まで1.2㎞・約100秒ならば、加減速を考慮して60㎞/hくらいで走れば大外しはしないはず。ブレーキを緩めて、加速を開始。
速度計の針「ギュイーン ↑」
いやいやいやいやいやいや
加速よすぎ!
私も運転士をしていたので、自分の中に「速度計の針はこれくらいの勢いで動く」という感覚があるのだが、それとかけ離れた勢いで速度が上がっていく。ジェットカーこわっ。
約60㎞/hまで加速して、あとは惰行で走る。
駅が見えてきたぞー。車掌による「間もなく鳴尾です」のアナウンスも流れる。本格的だなあ。
駅のホームに突入。お、なんか前方が光ってるぞ、あそこが停止位置か。ぼちぼちブレーキを掛けてみる。
速度計の針「ギュイーン ↓」
ブレーキ効きすぎィ!
このままでは、大きく手前に停まるのが明白。慌ててブレーキを弱め、停止位置までの速度を確保する。そして、停止位置が迫ってきたので再びブレーキを強め……って、あーヤバイヤバイ、今度は停まらん。実際の運転と違い、身体でブレーキを感じることができないので超難しい。
結局、1mほど行き過ぎてしまった。これは恥ずかしい orz
ただし、運転時分は1秒の延着だけで済んだ。速度・時間の計算はほぼ合っていたということ。停車ブレーキは汚くなってしまったが、初見にしては上出来ではないだろうか。
【2区間目】鳴尾 → 甲子園
加速やブレーキの感じは、1区間目でなんとなく把握できた。
勝負の2区間目。画面表示によると、次の甲子園駅までの距離は約900m。1区間目よりも駅間距離が短い。まあ、50㎞/hくらいで走ればいいんじゃね?
……と、ロクに計算もせず走ったため、まだけっこうな秒数があるのに、もう駅ホームに突入する。イカン、このままだと10秒以上早く着いてしまうのでは。
しかしもう、いまさら速度を落として時間調整なんてことをやる場面ではない。時間は気にせず、ブレーキに専念することにした。さっきは1mほどオーバーランしたので、今度は少し前に停める意識でブレーキを掛けてみる。
1m以上も手前に停まる
orz
さっきは1秒延着だったが、今度は7秒早着。ブレーキも含めて、1区間目よりひどい結果で終了した。
現役鉄道マンでも容易ではない『電車でGO!!』
いかがでしょうか?
現役鉄道マンが『電車でGO!!』に挑戦してみましたが、初見の路線とはいえ、微妙な結果になりました(^^;)
くそう、運転士をしていた20代の頃なら、こんな無様なことには……(笑)
やっぱりブレーキが難しいです。ブレーキの強弱を身体で感じることのできない点が、現実との大きな違いですね。それから、三次元ではなく二次元なので、距離感というか奥行きというか、そのあたりの感覚も違います。
悔しかったので、後日ショッピングモールを訪れたときに再度挑戦したのですが、その話は↓関連記事をご覧ください。
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